プロローグ 謎の光
金森達が通り過ぎたあとオレは一つ気になったことについて考えた。
それは金森のことだ。
金森はさっき友達と楽しそうに話していた。
だがオレには、その姿が偽っている用に見えたのだ。
ただの仮設だが金森は笑顔を作っていたのではないだろうか。
それか何らかの理由で友達ごっこをして遊んでいたのではないだろうか。
どちらにしても気になる。
「そうだちょっとあいつに聞いてみよう」
そう言い、オレはある人物にメールを送り、会う約束をした。
オレは今屋上にいる。メールではすぐ来れると言っていたのになかなかあいつは来ない。多分、友達と話しているのだろう。たまにあることだ。
仕方ないので暇を潰すため屋上からの景色でも眺める。
「こうやって高いところから人を見ると小さく見えるな」
たまたま通りかかった先生を見ながら呟く。
空にはカラスが飛んでいる。
いつもと同じ風景だ。
「今日も平和だな」
そう言い雲ひとつ無い青空を見る。青く、輝いている空は嫌なことを忘れさせてくれるほど綺麗だった。
あのときの絶望、その後の劣等感。すべてを忘れたような気がした。
そうしていると、屋上の扉が開く。
やっと来たようだ。
「なかなか友達が振り切れなくて遅くなっちゃった。ゴメンね」
いつものようにオレはその生徒に嫌味を言う。
「ああ全くだこれだから友達持ちは嫌なんだ」
その生徒も負けじと言い返す。
「こっちもぼっちなんてはぐれものは、秘密を知られなきゃ関わるつもりはなかった。ましてや嫌われ者の山中。誰があんたに話しかけると思う?そんな物好きは伊田だけで十分よ」
オレに近づきながら文句を言う生徒。この女子生徒の名前は七色彩。クラスでもトップを争うほどの美女だ。
性格は優しく、笑顔が尽きないと言われているが、みんな騙されている。
こいつが優しい訳がない。
「それでわかるのか。金森のこと」
オレがそう話を切り出すと、七色はこちらに近づきながら答える。
「あんたがどれくらいの情報を求めているか知らないけど多少わ、ね」
なら聞かせてもらおう。
オレが知りたい情報を七色が持っているかは別だが情報はあって困ることは無い。役に立たないと思った情報もいつかは役に立つ。
「けどなんでメールや電話じゃなくて直接会いたいって言ったの?」
本題を話す前にそんなことを聞いてくる。
だがその質問には特に答えなどない。
「そういう気分だったっていうだけだ」
「え?」
何故か七色の頬が赤い。
暑いのだろうか。
だが、今はそんなことより金森だ。
「七色、早く金森について話してくれ」
「う、うん」
オレが話すと更に七色の頬が赤くなる。
「どうしたなにか変だぞ熱でもあるのか?」
「な、なんでもない!!」
なんか知らないが怒っている。
オレは金森の情報がほしいだけなのに意味がわからない。
なので落ち着いたであろうタイミングまで待ち、話を聞き出す。
「話してくれるか」
「わかった、わかった。仕方ないから話してあげるわよ」
そう言い下を見ながら七色は金森について話してくれた。
七色から得た情報は三つ。
一つ目は話していると楽しい、と多くの生徒が言っていたこと。
この情報から多くの生徒と話しているのがわかる。すごいのはほとんどの生徒が楽しいと言っていることだ。
金森は人気があったらしい。
二つ目は親友を作らないということ。これは七色と同じだ。あいつも親友を作りたくないと言っていた。だが七色と同じ理由なのかはわからない。
三つ目は笑顔が多くてあまり怒らないこと。さっきの会話でも笑顔が多かった。
多分、友達を大切だと思っているのだろう。
興味深い情報もあったがオレが求めているものはなさそうだ。
ハズレだったか。
オレがそう思った時、七色は何かを待っているように聞いてきた。
「どう?欲しい情報はあった?」
「いや求めているものは無いな」
どうやらこの回答を待っていたらしい。
「そういうと思ったわ。だって、あんたが普通の情報を求めているとは思わないもの」
勝ち誇った様な笑みを見せる七色。
もしかして、その普通じゃない情報を探して遅くなったのか。
ふと余分な思考が巡る。
だがすぐに、無いな、と可能性を切り捨て七色に視線を向ける。
「じゃあもう一つあるんだな」
「ええ、聞きたい?」
ニヤニヤとしながらこちらの反応を伺っている。
なんかすごくうざい。
「ああ」
「じゃあ教えない」
流石にオレもここまで来て、教えてくれんとか言うんだったら怒るしかないだろ。
次の瞬間、オレは叫び、七色は顔を青ざめた。
「みなさ~ん七色さんは友達のことをーー」
すぐに手と口が出る。
「やめて!!」
オレが大声で七色の事を叫ぶと、七色は慌ててオレの口を塞いだ。
そしてしばらく沈黙が続く。
だがそれは二三分で終わることになる。
「教えるか、ら。だからあのことを言うのはやめて」
そう言い手を離す七色。なんとなくだが泣いているように見えた。
「で、もう一つの情報は?」
そんな七色を見ながら容赦ない一言が放たれる。
オレはそんなことなど気にしず、ただ情報を求めた。
少しの間があったが七色はいつもの調子を取り戻しながら答える。
「・・・・・・これは一部の生徒が言っていたことなんだけど金森は金という言葉にやたらと反応するんだって」
そしてその言葉を聞いた瞬間オレの中でピースがはまる音がした。
なるほど、これで大体はわかった。
オレの推測が正しければ金森は結構辛い人生を送っていることになる。
「そのスッキリした顔は金森のことがわかったっていうことでいいのよね」
七色の顔を見るともう笑顔が戻っていた。
「ああ、なんとなくだがな」
オレはそう微かに笑う。
「わかったら私にも教えなさいよ」
七色が聞いてくるが教えようとは思わない。
何故ならまだ推測に過ぎないからだ。
「じゃあ教えなーい」
そう言いオレは扉へと早歩きをする。
「こら、待ちなさーい」
七色も追ってこようとしたが諦めたのかすぐ追うのをやめた。
追わないならこちらのもの。
オレはそのまま扉を開けて屋上から姿を消した。
「全くあんたはすごいよ山中。だって私があなたといるときだけ、本物を取り戻せるのだから」
七色はそう呟き、扉をゆっくりと開けた。そして、七色も屋上から姿を消したのであった。
その姿はすごく嬉しそうだった。
七色から逃げたあとオレは急いで教室に向かっていた。
何故なら時間がやばいからだ。もうすぐラストの授業が始まる。
オレは早歩きで廊下を歩く。
こんな時間に廊下をうろつく生徒はいないだろう。
そんな考えが原因だったかも知れない。
その時だ。
急いでいたからだろう。前方の生徒に気づかなっかった。
そして盛大にぶつかり、尻餅をつく。
「痛っ、あ、ごめん」
「ああ」
ぶつかった生徒は一言で怖いとしか言えない生徒だった。名前は熊里仁。ヤンキーだと言われている奴で基本は無口。ただオレとはある事件を通して関わったことがある。
「大丈夫かぁ、俺はこの体だから平気だが」
そう熊里は自分のでかい手をオレに貸してくれた。見かけによらずいいやつだ。
「大丈夫だ。ありがとう」
顔には出てないが熊里は安心した様だった。まぁ本当は急いでただけあって尻がすごく痛いが、ここは時間がないので痛いのを隠す。
「山中。お前には感謝している。弟のことはありがとな」
「ああ、あの時は良かったな。でも、その話は時間がないから、今度またゆっくり話そう」
そう言いオレが歩こうとすると、
「山中。急いでるんだろ」
熊里がオレを呼び止める。
「まぁそうだな」
なんか嫌な感じがする。
それがフラグになったかも知れない。
「なら俺が連れてってやる」
やっぱり当たっていた。
「え?」
熊里は何を思ったのかオレを片手で持ち、走り出した。恩を返したいのはわかるが色々とやることが間違っている気がする。
しかも馬鹿なのか同じ道を行ったり来たりしている。
もう七色の方が先についたのではないだろうか。
完全に時間をロスしてしまった。
なんか七色に負けると腹立つな。
そう思っていると教室が見えてくる。
ラッキー、まだ先生はいないようだ。
「てかお前、他のクラスだろ?大丈夫なのか!?」
「大丈夫も何も俺は元々サボるつもりだったからな」
なるほど、だから屋上の帰り道にあったのか。
ていうかサボるならあんな堂々と歩くか。普通。
あともうちょっとで着くと思った時、熊里がバカなことを言う。
「もう時間がないから突っ込むぞ」
「え?ちょっと待ーー」
ちょっと待て、という前に熊里とは全速力で突っ込んでいった。そして一部の生徒がケラケラと笑い出す。
何故ならこのまま行くと机に突っ込むからだ。
そのまま教室の机に熊里が突っ込むと誰もが思った時、急に床が光だし、教室にいた全員を魔法陣?が飲み込んだ。みんなは突然の出来事に、先程までオレを見て笑っていた奴らもそうでない奴らも驚いていた。
だがその驚いた一瞬で全員が叫ぶ間もなくどこかへ消えてしまった。