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盆の中からアレやコレ(短編集)

当たりのゴブリン

作者: 八刀皿 日音


「魔王様魔王様~!――って、なにやってるんですか?」


「ああん?

 見たら分かるやろ、昼飯にミミック冷麺食うとんねん」


「いやだから、本質ミミックなんで、それを言うなら冷麺ミミックですってば……。

 え、でも……冷麺?」


「知らんのかいな、最近ネットで話題の食い方やんけ。

 お湯で戻ったミミックに氷結魔法ブッ放したら、本体の抵抗力で程よく冷えて美味! 暑い夏にオススメ! これで砂漠地帯でもおいしくミミックいただけます最高!……みたいな」


「…………。

 なんかもう、ミミック=ラーメン、なんですか……? 世間的に」


「まあええやん、どーせ宝箱に擬態しとっても、レアアイテムやらレア素材やら高経験値やらのために、嬉々としてボコられるだけやったわけやし。ラーメンの方がこっちも儲かるからアリやろ。

 ――それはともかく、なんやワシに報告あったんちゃうんか?」


「ああ、そうですそうです!

 実はこのたび、新たなゴブリンの発明に成功しまして! 何と――」


「いや、ちょい待て。

 ……ゴブリンて発明するモンか? てか、アレ、ワシらの管轄なん? 自然発生的なモンちゃうの? 今の今まで部下っちゅー自覚なかったンやけど」


「ええ、もちろんちゃんと我らの下っ端として登録されてますよ? 給料も出てます。

 その数の多さと、比例して膨大な殉職者遺族への見舞金が、代々、我が魔王軍の財政を圧迫してきた原因の一つだってご存じなかったんですか?」


「……何やと!? ンなモン、全員まとめてクビじゃクビー!!

 侵略の役に立たんどころか、低レベル冒険者の肥やしにしかならん連中に払う給料なんざあるかボケー!!」


「どうどう、魔王様。そんなことしたらゴブリン労働組合がうるさいですよ? なんせ数だけはいるんですから。

 ……それに、下っ端切りとか、このご時世世間体悪いですよー? 評判下がりますよー?」


「ぬうう……! こうして、改革っちゅーのは潰されていくんやな……。

 ――ああもう、ムカつくけどまあええわ、しゃあない!

 とりあえず、その問題は後回しにして……お前の言う、新ゴブリンとやらの話を聞こか」


「はい! 弱い、頭悪い、醜いと三拍子揃ったゴブリンの特徴の一つを、超・劇的に進化させました!

 ――この画像をご覧下さい!

 どうです? 見事なイケメンゴブリンでしょう!」


「……なんでよりによって、イジるんそこやねん……。

 てか、何の役に立つっちゅーねん……」


「よくぞ聞いて下さいました!

 ……いいですか魔王様、人間の女というのはとかく美形が好きです。となれば、いくら悪事をしているからと言って、こんな美形を倒すことなど到底出来ないでしょう!

 もちろん、男どもはむしろ嫉妬にかられて襲ってくるかも知れませんが、女がそれすら邪魔するはずです!

 ――結果として、低レベル冒険者どもが経験値を稼いで強くなる機会を奪い、さらには人間どもの間に不和の種を蒔くことにもなるのです!

 どうです? まさに一石二鳥ではありませんか!」


「うっわ、目ェキラキラさせてまあ……。

 相っ変わらず、うらやましいぐらいの希望的観測脳やな、自分。

 ……まあええわ、作ってもうたモンはしゃあない、取り敢えずやるだけやってみ。

 ――あ、諸々の費用は、ゼッッッタイ経費では落とさせんから」


「う、ぐ……だ、大丈夫ですとも! どうか、吉報をお待ち下さい!」




「……とか何とか、大ミエ切って出ていったんが二月ふたつきほど前やったか……。

 ほんで結局どうなったんや? 新型イケメンゴブリン作戦は」


「……あ、はあ、それが、そのー……。

 大失敗と言いますか……むしろ大評判、でして」


「……またか! なんやねん、今度は」


「それが……ですね。

 まあ何せあれだけのイケメンですから、外見もそれに合わせなければと、気合いを入れすぎた結果、デザイナーがその、すっごい豪華な装いにしてしまいまして……。

 あの、まずこれ、衣装代の請求書です……」


「ワシが勇者戦用に仕立てた、とっておきの衣装の3倍かかっとるやんけ! アホか!」


「……それで、ですね。

 何せ、そんなすっごい格好の、すっごいイケメンが、すっごい悪カッコ良く登場したものですから……。

 その~……人間どもに、『あれこそ魔王に違いない!』と、カン違いされてしまいまして……」


「え」


「ほら、魔王様引きこもりだから、人間どもはお姿を拝見したことないでしょう?

 なんで、魔王ともあろう者がみすぼらしいカッコのわけがない、って信じ込んでまして……」


「――さりげなく今ディスりよったなワレ」


「ともかくそんなわけで、魔王様とカン違いされたんですが……。

 何せ見た目以外はしょせんゴブリンですから、戦って勝てるはずもなく……」


「おい。……ちゅーことは、アレか?

 まさか今人間ども、魔王倒して祝賀モード真っ最中なわけか?

 ネジゆるみまくってるっちゅーことか?」


「いえ、もうさすがに落ち着いてます。

 ――何です魔王様、祝賀セール利用して欲しかった物でも買おうと思ってたんですか?」


「買うよりむしろ売っ飛ばしたいけどな、お前を!!

 ――アホかぁ~、なんでその人間どもが油断してるタイミングで攻勢かけへんねんー、失敗どころか大成功やったんやんけ~……」


「あ、でも、大評判なのは事実ですよ!

 当のイケメンゴブリン、今アイドルデビューして、俳優だのバラエティーだのと、人間どもの世界で大人気ですから」


「――こっちも事務所作れ! 引き抜け!

 育てたンこっちやのに経済効果だけかっさらわれてたまるか!

 せめて儲けにゃ気がすまんわ~!!」




申し訳ありません、この作品が初めての方もいらっしゃるでしょうに、続き物のように構成してしまいました。

もし興味を持っていただけたなら、合わせて前作にあたる「当たりのミミック」もご覧下さい……。

お手間を取らせて本当にすいません。


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― 新着の感想 ―
[一言] 魔王様と部下さん、ヒットメーカーとしては超一流なんじゃ疑惑が発生しました。 あれっすよ。 正攻法の暴力で勝とうとしないで経済戦争しかければ、数年で人間を支配下におけるというか、精神的に優位…
[良い点] おもしろかったです (∩´∀`)∩~♪ [一言] >とっておきの衣装の三倍かかっとるやんけ! 経費で落としてもらえますかね? (;'∀') (´・ω・)っ旦 ほうじ茶でござる~♪ どじ…
[一言] あ、これ大好きなやつだ。 ミミックも読みましたよ!
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