蒼い薔薇
プロローグ
この国は、亡者の発生によって、人口が劇的に減少した。その為、日本政府は都道府県にこれに対抗すべく立ち上がった組織があった。彼らは、特異な力を身に着け亡者に立ち向かった。だが、今ある最大組織は、関東圏、東北圏、大阪圏、四国圏、近畿圏となった。
そして、10年前、私はまだほんの子供だった。
その頃、私の故郷は亡者との争いが絶えなかった。
当時、『蒼い薔薇』の近くに住宅地があり、そこで平凡に暮らしていた。けれど、突然平凡な暮らしは、悲劇へと変わった。
何者かが、家に入り両親を襲ったのだ。
そこで見たのは、私の両親をあの「男」が殺していたところだった。
その時から、私は復讐を心に誓ってその身を戦場へと投げた。
それから、数年後、十六歳になった私は、関東圏に任務で行くことになった。
「では、櫂。よろしくお願いします」
「はい。でも、いいんですか?私なんかで」
私は、恐る恐るシスターに尋ねると、笑顔で「はい」と答えると、「彼に、よろしく伝えてほしい」と言っていたが、その笑顔には寂しさが窺えた。
その時だった、突如、結界が壊され亡者が攻めて来た。
「えっ!亡者が、何故っ!」
「櫂、早く術式を展開なさい!!」
シスターにそう言われるが、出来なかった。
「む、無理です!わ、私も応戦します!」
「―櫂!お前は、早く行けっ!」
私の肩を掴んでそう叫んだ。甲坂さんは「頼む」と言う顔は、まるで今にも泣きそうだった。私は、顔を俯かせるしかできないでいると、いつの間にか術式が発動した。
「―え?」
「スマン・・・っ!お前だけでも、助かってくれ!そして、アイツ等に、このことを伝えてくれ・・・」
「い・・・嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
第二の我が家と出会った教会は、亡者の襲撃により『蒼い薔薇』は崩壊し、消滅した。
1入団
私は、桜を見ていた。
四月、桜の季節だと言うのに、周りは荒れていた。
ここは、ニホン。
私が居るここは、腐海した関東圏の大都市と言われた、トウキョウだった。
もともと、ここには遊びのために来たんじゃない。
「依頼」のことで来た。
私が居た、東北圏の組織が行くように命じられたのが、ことの始まりだった。
(さて、ここに来たのは花見見物じゃあるまいし。行きますか・・・)
私は、儚げに咲く桜の木を、もう一度見上げた。
そして、公園の桜並木を歩いて、瓦礫の町へと足を早めて行った。
しばらくの間、何もない廃墟を飽きるまで、見ながら歩いていく内に、待つように言われた場所に着いた。
どうやら、早く着いたようだ。
(あ~あ。どうしようかな・・・。思ったより早く着いちゃった。どこで、暇つぶしをしようかな)
私が、頭の中で模索してると、どうやら「先客」が居たようで。
「ん?何だい、キミ達。「先客」だったの?」
私が、「先客」達に問いかける。
だけど、「先客」達は答えない。
―いや、答えるには値しないと言ったところかな。
「ハァ・・・。仕方ないな~ぁ。私、手加減・・・出来ないのにな・・・」
私は、そう呟くと「先客」・・・いや、亡者達が地を震わせるくらいの勢いで来た。
(ま。これくらいじゃないと、楽しみというより・・・。オモシロ味がないんだよね・・・)
そう思う私って・・・・と思った。
私の家族は、こんなヤツラのせいで・・・死んだのだから。
私は、日本刀を抜いた。
私の日本刀は、自分の身長より少し小さいが、刀身はかなり長い。
「―さって・・・行きますか」
襲いかかる、亡者達を、私は斬り捨てていた。
切り捨てて行く中、私はやってしまったといった顔をした。
(あ・・・。かなり、湧いて来るな・・・これ。どうしようかな・・・、使うかな、「アレ」)
私は指に口づけをし、刀を剣先から鍔までなぞって、こう唱えた。
『我、これに誓う。悪しき者よ、清き光のもとより―消え去れ』
唱えると、光が見えたのか、後ずさりを始めた。
ああ・・・、怯えてる、怯えてる。それじゃ・・・、これで、終わらすか。
刀を振ると、光が放たれそれが風に変わり、アンデッド達はあっさりと、灰と化した。
「・・・」
(あっけない)
これじゃ、気が済みそうにないな。とはいえ。コイツ等、一番弱いもんね~。
(仕方ないか・・・)
私は、少し残念な気分になった。
家族も奪われ、本来の帰る家も・・・今となっては、何もない。
ナニモ、残ッテナイ。
私は、亡者達の死骸を虚ろな目で見つめて居た。
声を掛けられるまで、ずっと、だった。
「キミが、東北圏の子?」
「・・・、そうですけど?」
私は、そう答えると男は私が着ているコートの肩を見てきた。
ふ~ん。なるほどねと言う顔だった。
私達が着ているのは、全て黒で統一されている。
そして、コートの左右の肩のいずれかに薔薇と十字架が描かれたエンブレムが、それぞれの組織のボスの趣味で(色も)決まる。
ちなみに、私のエンブレムは右の肩で色は青。
「キミ、すごいね。ボク等の仕事のノルマを、こなすなんて」
「・・・このくらい、普通だよね?」
コイツ、普段はどうしてんだ?すごく気になるんだけど。
「オイ、ソラ。何をしている?」
「ん?ああ、誰かと思ったら。エドくん」
どうやら、こんな奴等が私のお迎えの人のようだ。
エドと呼ばれた男が、私に近づいた。
「お前か?血の海にしたのは」
血の海・・・・。確かに、血の海じゃないけど・・・。うん、そうだよね。そうなるよね・・・。
「そうだけど?」
私は、エドを見ると何故か、バインダーを見ながら私をジロジロと見てくる。
「・・・。お前が『蒼い薔薇』櫂・ノヴァだな?」
エドが言った。
そこで、私がそうだと答える前に、彼のエンブレムを見た。
白い薔薇のエンブレム・・・。と言うことは。
「・・・そうだよ。キミ達が『清い薔薇』だね?」
私はそう言うと、彼等は私を凝視した。ソラとか言うヤツは、私に近寄るなり頭に手を乗せた。
「すごいね~。キミって、まだ子供なのにさ~」
「・・・。ねえ、キミさ。何、人の頭をなでてるんだい?」
「ん?いだろう?減るもんじゃないしさ」
なんだろう・・・、完全に子供扱い?そして、なんかむかっつく。
いつまで、なでまわしてるんだ・・・コイツ。
「お前な、今は任務中だ」
エドは、そう言いつつも、容赦の一つもない力で、バインダーの角でソラを叩く。
そして、とっても大きな音でここの辺りを響かせた。
(あ~・・・。とってもいい音を出すな・・・。この人)
けど、よく見ると血が出ていた。・・・ん?血?
「・・・・・。え?」
叩いただけだよね?
ああ、そうだ。と言うような、空気が出来上がってた。
「~っ痛。エドくんさ、少しは優しい愛の鞭にしてよね?」
(・・・え?)
愛の鞭って・・・?え・・・?そうなの?と、先程と同じ空気が出来た。
「・・・・・ゴッホン・・・。さっ、行こう」
あ、無視をした。
ま、でも。この茶番はどちらかと、どうでもいいけどさ。
私は、こんなんで「清い薔薇」と、うまくやって行けるのかな?そう考えていると、「清い薔薇」についた。
ここは、関東圏の中で一番力があったと聞いていたけど。国会に居る政治家達ではもう、権力事態危ぶまれている。
これでは、この国自体が成り立たない。
だから、亡者を駆ることが出来る人間を集め、戦闘員と非戦闘員で形成された独立部隊を作ったと、言われてはいる。
「清い薔薇」と「蒼い薔薇」その他、あるけど興味が無いから知らない。でも、今回のことで何かと調べては見たけど、ほとんど知らない面子ばかりで、詳しく聞いてみたら灰炎さんが引き取って来たらしい。
でも、ここを見ていると何だか・・・「蒼い薔薇」とは違う。何でだろ・・・。
「ここは、生き残った一般人が居る」
エドは、私の疑問に答えるかのようだった。
「ま、外にも意外と生き残っている人多いんだよね~。ウチの戦闘員の任務のほとんどがそう言った人の保護なんだよ~」
ソラも付け加えるかのように言う。
「へぇ・・・。何かと違うんだ・・・、教会によっては」
「ま・・・。そっだね」
ソラは、一つ間をおいてそう言う。そんな時だった。
ダッダダ―
(ん?地走り?)
私は、音が鳴る方向へ目を向けた時だった。その瞬間、私はその子と激突したのだった。
「あ・・・」
私が目を覚ました時、エドとソラそしてさっきの子が居た。
「大丈夫か?」
「・・・。まあ、ね」
「まさか、真顔で走って来るなんてね~」
「はうぅ・・・」
何故、真顔で走る必要があったのか。私が知りたいんだが?、それを心の中で呟いていたが、奥へと飲み込んだ。
「・・・ゴッホン。それより、そこの子は?」
「あ、私はココナと言います。貴女は?」
「私は、櫂だよ。よろしく」
そして、握手しようとしたその時だった。
―ドッガーン!!
「!!?」
外から、爆発の様な音が出てきた。
「な、なんなんだ!いきなり」
エドは、外へ出て行った、それにつられて、私達も外に出るとそこにはロボットが居た。
「・・・へ?ロボット?」
私は、ロボットが何故ここに居るのかを考えた。
一つは、侵入者と勘違いされたか。
二つは、誤作動か。私的には、後者であってほしい。
「わ―・・・・。先生、何をしていたのかな・・・」
「・・・。あのさ、一つ質問」
「なんだ?」
「私の勘違いなら、いいけどさ。あの頭にあるのって、缶コーヒーだよね?」
私は、近くにいたエドに聞くとエドもそこの方へ視線を向けた時には遅かった。
ソラは、笑顔で「ああ、やっぱり?」といった。
「その反応、気づいてたな?」
「HAHAHAHA!なんなのことかな~?ボク、ワカンナイナ~?」
「可愛い子ぶんな!!なんか!ムカつく!!」
「そ、そのまえに、み、皆さん!ま、前!前!」
ココナが、前と叫んだのはロボットが右腕を振り上げていたところだった。
「え・・・!?」
振り下ろされる前に、私は刀を出していたため、受け止めることは出来た。
「・・・・っ!」
「櫂ちゃん!そのままでいてね?」
「え・・・?なんだって?」
私は、ソラに大声で聞くとソラの片手にはライフルが握られていた。そして、見事にロボットのカメラ的なもの?を命中させた。
「・・・・。す、スゴイ!」
ココナは、感激な声を出していたがエドはソラを睨み付けていた。
「これは、狙撃魔法か?」
「そう!僕とエドはね!ココナは治癒・回復魔法」
「ふ・・・・ん」
そうしている内に、ある人物がやってきた。
「おーーーい、君たち!」
「おや?先生」
「先生」と呼ばれた、その人物を見たが初対面にして、第一印象。「面倒なヤツ、問題児、マッドサイエンティスト」だった。そして、いかにも、やりかねないとも思った。
「先生・・・・?」
「エ、エド?なんか、背後から何か出てるよー?」
「ほう?どんなのですか?」
「うん、真っ黒い、ドスが効いたのが、って・・・・!ちょっと!タンマタンマ!」
(わ・・・・、眉間に銃口を突きつけられていて笑ってるよ・・・)
もう、引くしか出来なかった。
「・・・・。おい、ソラ」
「んー?なに?エド」
「マスターを呼んで来い・・・」
「あ・・・。こりゃ、逆鱗に触れたな・・・。うん、ちょっと待ってて」
ソラは、全てに理解したようで(していたのか?)ここのマスターを呼びに行った。
私達はこの後、鬼の様な形相の二人が戻ってきた。
先生と呼ばれた人は、この世の終わりを見ているのかような顔だった。
執務室―
「先程は、申し訳なかったね。櫂君」
「い、いえ。だ、大丈夫です。その前に、そこでいじけている人は?」
「ん?ああ、近衛かい?ここでは、武器の点検と修理を行っている研究員だ」
「簡単には、博士だよ。櫂ちゃん」
ソラに言われて、少し納得した。
「紹介しよう、彼は風見近衛だ。今回のように騒ぎを起こすことが多々あるから気をつけてくれ」
「よろしくな✩」
「はあ・・・、よろしくお願いします」
私は、一応挨拶はした。礼儀としてだが・・・。
「博士、あまりああいう類は作らないでいただきたい」
「えー?なんで?いいじゃん!いいじゃん!」
博士は、悪気はないんだろうがエドの背中をバシバシ叩いた。
それに対して、エドはため息を吐くと博士を見て「・・・博士?」と、虚ろな目になりながら言うと博士は、隠れた。
(わ・・・。なんだろう、この人・・・)
私は、エド越しから見ていたので結構、引いた。
「あっ!ちょっ!?何で、引いてんのさぁ!?」
・・・そして、バレた。
「あはは、博士。普通、あんなの見たら誰でも引くよ~」
ソラは、お腹を押さえながら言った。
しかも、エドの肩を掴んで。さすがに、エドはイラついていたけど。
私は、この場で置いてかれている。ココナの方を見てみると、何だか・・・・震えていた。
「なんで君が震えてるんだい?」
「えっ!?」
「あっははは。ココナ、別にキミについて怒っているんじゃないよ?」
この兄は・・・。笑いながら、妹にフォロー入れるか普通。
「この二人、大丈夫なのか?」
「なにも言うな・・・。マスター、博士に処罰を。これ以上、意味を持たない物を作っては皆を巻き込んでケガを負わすようなことも少なからずあるわけですし」
「そうだな。それでは、しばらくの間機械系は作らないでもらう、いいな?」
「えぇ・・・・。いいじゃん、べっつに?」
「・・・博士・・・?」
「ウグ・・・・」
灰炎さんは、黒い笑顔で博士に向けていた。
何だか、懐かしい風景だなと思えた。昔も、こんな感じでとてもアットホームで優しい空間が心地良かった。
優しい、シスターが居てとても頼れる仲間も居て・・・。
(・・・そういえば、あの人達は無事なのだろうか・・・)
蒼の薔薇の最強で最恐と詠われた、あの人とその隊の皆。
無事であって欲しいとただ、願うことしかできない自分が非力でこんなにも、悔しいなんて思ってもみなかった。
「・・・櫂」
「―え?ああ・・・。すみません、少し考え事をしてました」
灰炎さんは心配そうな顔で見てきたことに驚いていた、「そろそろ、会場に行こうか」と言われて、何のことだろうと思った。
しばらく歩いていると、賑やかな声が聞こえて来た。何だろうと思っているとその場所に着いた。
「―さって、櫂。改めて、ようこそ。我が清い薔薇へ!君を歓迎しよう!」
灰炎さんは、両手を広げて笑顔で言ってくれた。同時に、クラッカーを鳴らす団員達。
それが、なんだか嬉しくって、いつの間にか自然と涙が流れた。
ココナは、オロオロし始めた。
「?」
「あ、あの・・・・、櫂さん。どうしましたか・・・?」
「・・・何でもない」
「あっれ~ぇ?櫂ちゃん、泣いてるの~?」
「・・・・別に」
「いやいや~、泣いてるでしょ?」
ソラを無視すると、「あ~、なんで無視するの」がこれまた、無視。
でも、ココナには頭を撫でてあげた。本人は頭の上に?マークを浮かべていたが。
(今、君が言うと君のお兄さんが余計なことしか言わない)
なんだか、この三兄妹誰かさん達に似てると思ったら、あの人達に似ってるんだ!
道理で、見てて懐かしいさがあるのはそういうことか。
怖いな、近親感って。私は、ココナを撫でながら不意に思ってしまった。
「あ、あの・・・っ!か、櫂さん?」
「あ・・・、ゴメン。つい」
そして、その夜は賑やかに騒いで過ごした。
この時は知らなかった。あの〝男〟が近くにいること、そして、大切な人達がこの地に居ることも。
皆さん!初めまして、星香です。
『蒼い薔薇』をお読みくださりありがとうございます。
今回が初投稿になりますが、続きはいつになるかはわかりませんが出したいなと個人的に思っております。
星香