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フォール通り露店祭(3)

フォール通り露店祭開催当日。

普段とは段違いの人数がこの通りに集まっていた。


「わぁ、すごい人数ですね」

「エリスさんは露店祭に参加するのは初めてなんですか?」

「えぇ、去年の今頃はまだこの町に来たばかりで、知らない間に終わっちゃってたんですよ」


ミラとエリスは話をしながら、大量に作った炎華をせっせと露店に並べていた。


『当日俺は一応喫茶店の仕事で店番をしないといけないからな。一人だと何をするかわからないしエリスを手伝ってやってくれないか?』

とゾルに頼まれたため、ミラはこの日限定のアルバイトとしてエリスに雇われている。


「これで全部ですね。それにしても随分な数ありますけど、これ全部手作りなんですよね?」

「頑張りましたよ……。枝を掘り過ぎて腱鞘炎になっても、寝不足で火鼠の毛を巻きつけながら寝てしまっても、ゾルさんが休ませてくれずひたすら昨日まで作業してましたから……」


疲れ切ったようにそう呟くエリスの目の下には、よく見ると隈ができていた。


「結構厳しい方なんですねゾルさん」

「最近甘やかしすぎたからとかなんとか……。甘やかされてた覚えはないんですけどね」


真顔でそんなことを言うエリスに、ミラはこないだの二人のやりとりを思い出して苦笑する。


「さて、並び終えたことですしそろそろ呼び込みをはじめましょうか」


そういってエリスは炎華を手に持ち、露店の前で火をつけた。


「お祭りに一本どうでしょう!誰でも簡単に扱える魔道具ですのでお気軽にどうぞ!」


エリスの声につられてノワールの露店に目を向けた人々は、派手な見た目の炎華に思わずおぉ!と声をあげた。


「へぇ、こりゃすごいな。嬢ちゃん、一本くれないか?」

「私にも一つ!」


夜ほどでないとはいえ、露店祭のなかでは一際目立つエリスの店にぞろぞろと人が集まってくる。


「お子さんへのお土産などにも! 子供でも簡単に扱える魔道具ですよ!」


ミラも負けじとエリスに続いて露店の近くを通った人を呼び込んでいく。


「確かに子供への土産にいいかもな、これ安全性には問題ないのかい?」

「はい、この露店祭用に炎の規模を抑えて作ってますので、木の手持ちの部分をちゃんと持っていただければ危険はないはずです」

「ふむふむ、じゃあ二つほどいただこうかな」

「ありがとうございます!」


序盤の呼び込みは上々のようで、エリスの露店の前には小さな人だかりができていた。



「大盛況ですねエリスさん」

「えぇ、予想以上です。買ってすぐ使えて目立つ商品だったのが良かったみたいですね」


だいぶ売れ渡ったため、露店祭の様々なところで炎華を使って遊んでいる人がいる。

それを見た人がお店を訪ねにきて新しく買ってきてくれるので、露店を開いてかなりの時間が経った今でも、最初ほどの勢いはないが客の列は途切れることがなかった。


「どうやら上手くいったようだな」


二人がせっせと炎華を売っていると、客が少なくなったタイミングを見計らってゾルが声をかけにきた。


「あれ、ゾルさんお店はどうしたんですか」

「今日は街の者はほとんど露店祭へ流れているからな。客もきそうにないし店は閉めてきた」


そういってゾルは露店の中へと入り、二人の代わりに客を捌きはじめる。


「というわけで、ここからは俺が店番を代わってやる。せっかくの露店祭だ、まだ終わりまで時間もあるし、二人も楽しんでくるといい」

「本当ですかゾルさん! じゃあミラさんも今日はたくさん手伝ってくれたことですし、お姉さんご馳走しちゃいますね」


ゾルに露店をまかせ、売上の一部を手にエリスはミラの手を引いて露店市へと歩みを進める。


「ミラさんは何か見たい物でも……、すいません、ちょっとあれ買ってきてもいいでしょうか」


ミラの要望をききつつも、露店で売られているレミ肉の切り落としに目を奪われたエリスは吸い寄せられるようにそちらへ向かっていく。


「エリスさん、本当に食べ物に目がないんですね」

「ちょっと普段食欲を抑えつけてる反動がでちゃっただけで、私は別に腹ペコキャラではないですからね!?」


そう抗議しつつも、エリスは買ったばかりのレミ肉を美味しそうに頬張った。


「はいどうぞ、ミラさんの分も買ってきましたよ」

「ありがとうございます! でもいただいちゃっていいんですか?」

「もちろんです。今日はたくさんお手伝いしていただきましたし」


そうにこやかに言われ、ミラは遠慮がちにエリスの持つ肉に手を伸ばす。


「それにしても本当美味しいですね。見た所普通のレミ肉のようですけどなにが違うんでしょうか」


不思議そうに肉を眺めるエリスに、ミラも肉を頬張りながら首をかしげた。


「確かに普段食べている物より美味しい気がします。これがお祭り補正ですかね?」

「お祭り補正……。なるほど、確かにみんなでわいわい食べるとご飯も美味しく感じますもんね」


納得したようにうなずいたエリスは、残った肉を頬張って次はどの店に行こうかと出ている露店を見回す。


「あの、ちょっと行きたい所があるんですけどエリスさん少し付き合っていただいてもいいですか?」


そんなエリスに急いで食べ終わったミラは、少し気恥ずかしそうに声をかけた。


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