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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

思い出せない人

作者: 竹空

どこかで会っているかもしれないが、思い出せそうで思い出せない眼の前のこの人。仕事帰りにふと知らない雑居ビルの4階、カウンターだけの小さなBarに立ち寄ってみる。最近は付き合ってくれる同僚もなく、知らない店に入っては1人で静かに赤ワイン。カウンターの中では、ウイスキーを片手に楽しそうに料理をするこの人。はじめて会った気がしないこの人、だいぶ前に深くはないが浅くもない関係で知り合いだったような気がしているが、思い出せないでいる。カウンターが高くてこちら側からは料理をする手元が見えないのが残念。女性の記憶は、手の艶と仕草で覚えている。

お酒を出してくれるのは、加藤ミリヤのようなお手伝いの子で、ママの手を見るチャンスはなかなか訪れない。

ならば声だ。声の響きは脳内を巡って記憶を呼び起こしてくれる。眼の前にいるこのママに話しかけて、声を聞こう。ただ、声をかけようとするがこういう時に限って気のきいた言葉は出てこない、、、。


その時、「おつまみ召し上がりますか?」とママの声。


考える。食べたいおつまみではなく、ママがだれなのか、、、、

僕との関係は、、、、、

しばし沈黙が続く、、、、、、



すると、信じられないことに我が口から

「結婚してるんですか?」

(はあ?まずい!わけわからず、注文聞かれてるのに意味不明な質問をしてしまった)


ママは笑顔でさっと左手を上げて指輪を見せてくれた、と、指に光るものはない。

「今は外してますけど結婚はしてますよ。別居中なんですけどね。」


懐かしい指のライン。白くて美しく、指輪の場所にホクロがある。僕はそのホクロを見つめながら、遠い昔を思い出す、、、


その時、さっと、加藤ミリヤちゃんが横から水を出してくれた。ありがとう、、と、コップから離れるその繊細な左手を見ると、薬指にはママと同じ位置にホクロ、、、

そうか、この2人は親子でBar を営んでいるに違いない。

そして、僕を優しく見つめるこの加藤ミリヤは、厚い化粧を落とせば、はじめて付き合ったあの彼女であることは間違いなさそうである、、、という記憶が蘇ってきた、、、

ああ、もう15年ほど前の話だか、、、、、


禿げて老いた自分に気がつかない加藤ミリアを見つめながら、またしても

「リンちゃんのおすすめのおつまみください。」と意味不明な言葉を口走ってしまった。


ママは驚いたように「あれ?お知り合い?」


静寂、、、沈黙、、、、


ママは、「倫子ともこのこと、リンちゃんって呼ぶのは常連さんくらいなのでびっくり」と、、、。


さあ、加藤ミリヤ似のリンちゃんは、変り果てた僕に気がつくだろうか。











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