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『さて、説明の続きですが……』
何事も無かったかのように、話を再開しようとする小悪魔ちゃん。
「私が死にかけたくだりは、無視か。無視なのk『脱線禁止です』
「え……」
『脱線禁止です』
「(´・ω・`)」
『そんな顔しても駄目です。天の声がいい加減話を進めろと五月蝿いんです』
「天の声なんか無視すれば……」
「いいかげんにしろおおお」
「……はい」
今日の小悪魔ちゃん、なんか怖いです。
私が倒れた後、結局小悪魔ちゃんはポーションを持ってこなかった。というより無かった。紅茶と珈琲はあるのに回復薬は無かった。
普通逆だろ!
という訳で、心の傷は痛むものの、無理やり復活。
今に至る。
『魔王様。まず御自分がどういう状況に居るのか把握しておられますか?』
「精神的ダメージで死にかけたが、小悪魔ちゃんの介抱によりどうにか復活」
『って違あああう! 確かに、今の状況だけども!』
「小悪魔ちゃんの介抱は受けてな『ニコ』……ガクブル」
小悪魔ちゃんが怖い。まじで怖い。今までの愛らしさは、一体何処に行ってしまったというの。
『あら、あたしは何時だってラブリーなミルカちゃんですよう? まあ、それは置いといて。今までのメタ話とか色々置いといて』
小悪魔ちゃん、本気で話を進める気だ! 今まで何だかんだいって、小悪魔ちゃん自身もぐだぐだの原因だったのに今回は本気で進める気だ! ならば私はそれを阻止しなくてはならな『脱線禁止です』
ちょ、小悪魔ちゃん酷くない!? 地の文まで、邪魔してくるとか酷くない!?
『そうやって、話を先送りしようとしたって無駄ですよ。今回は意地でも進めますからね』
という、今までの間に実に七百文字も消費されていることを、小悪魔ちゃんはまだ知らない。後、もう少し頑張れば、天の声も疲れて、次回に話を回すだろう。くっくっくっ
『そんなしょぼい所で魔王様アピールしないで下さい。それと、今回は少なくとも2000文字は頑張るそうですよ、天の声』
「な……んだと……」
衝撃の真実。今までで一番驚いた。嘘だろ……。
「ほんとうだってえ。まおーさま、ぷっざまあ」
イラッ。
小悪魔ちゃんが嫌いになりそうな今日この頃。
ああ、もういいよ。説明だろうが何だろうが聞いてやるよ。現実から目を逸らしていた事を認めてやんよ。
『魔王様、よっうっやっくっちゃんと聞く気になりましたね。始めからこうだったら良かったのに!』
「いいから、話を進めろよ」
『はいはーい。さっき、人間だった魔夜ちゃんは魔王様に転生したっていう所だけは説明しましたよね?』
明らかに小悪魔ちゃん、今までろくに聞かなかった事を根に持ってるぞ。魔夜ちゃんとか恥ずかしい。魔王様の方が恥ずかしいだろって? いやなんか、しっくりくるんだよこれ。それはともかく、
「ああ、聞いた」
『魔王様、前世と今世で、身体的な変化は感じられますか? 生憎、あたしは前世の魔王様は知らないので』
く……っ、早々に一番目を逸らしたかった所を突いてきやがった。
『御自身じゃ分からない所もあると思うので、鏡も用意しましたよ』
準備が良いな! それにしても一体何処にこんな大鏡あったんだろう……。
『普通に壁に立てかけてありましたけど?』
ええ……、私、そんな事まで知らなかったのかよ……。
『……、魔王様。そんなに嫌ですか。その御姿。』
いや、いや……そんな事は無い……と思うよ……。
だからね! ジト目はやめようか小悪魔ちゃん。
『…………』
「ああ、もう!」
現実を見れば良いんだろ! 現実を見れば!
嫌々ながらも、鏡の前に立った私。分かってた、分かってたけど、これは……なあ……
……なんかクルッとした角生えてるね……。
……目、真っ赤だね。血より紅い紅の瞳って奴だね……。
……何故か衣装が全体的に黒い上にもこもこだね。小悪魔ちゃんより露出激しいよ、誰の趣味だよこれ。ぷらす、マント邪魔だよ、長いよ、歩きにくいよ。
素材が前世と全く同じだけにこれは……
「痛い。物凄く痛々しい」
だから、見たくなかったんだよ……。数話前の時点で既に気付いてたけど見てみぬふりしてたんだよ……。
ホント誰の趣味だよこれ。厨二病引きずり過ぎだろ。
『とりあえず女魔王的セクシーさが、もこもこのせいで壊滅してる事だけは分かります』
「それは言っちゃ駄目だ」
『何でですかー?』
「地味に傷付く。」
私と天の声が。
『魔王様って、メンタル弱いですよね』
いつから毒舌キャラになったの小悪魔ちゃん……。
「それはいいから(良くないけど)、今回は説明回にするんだろ? 小悪魔ちゃんが脱線しちゃ元も子もないだろうが」
『そうでしたー。でも天の声が疲れだして、説明どころじゃ無くなりだしてるんですよう』
「え、マジか。次回に持ち越し? 持ち越しだよn『休憩挟むだけです』……え」
◇◆◇
『さて、休憩も十分取りましたし、話を進めましょうかって、寝てるし!』
「むにゃむにゃ……あくまちゃんが……ひとりふたりさんにん……いっぱいいるう……」
『いったいどんな夢見てるんですか!? ああもう、全然眠そうにしてなかったのに……!』
「という、夢を見た」
『起きた!?』
「さあ、早く続きを」
『あたしの方が流された!?』
「…………」
『話します話しますから、睨まないで下さい!』「……なんかくやしい」
ぼそっと小悪魔ちゃんが呟いたのが、聞こえた。
なんだ……、この優越感。なんか、凄く気分が良いぞ。
『……魔王様、ステータスというものを御存知ですか?』
おお、説明始まってた。ちゃんと聞いとかなきゃね。
「体力とかが数字などで分かるあれ?」
『知っているんですか。なら話は早いですね。もしかして、前世にもありましたか?』
無かったよ、二次元の中にしか無かったよ!
小悪魔ちゃんはいったいどんなファンタジー世界をイメージしているんだろうか……。
『取り敢えず、分かりやすくするためにもこれを見て下さい』
小悪魔ちゃんが「すてーたすおーぷん」と呟くと、小悪魔ちゃんの前に黒い文字が浮かび上がるという不思議現象が起こった。
なんか、想像してたのと違う!
『これがステータスです。普通は自分にしか見えません。任意で他の人にも見えるようにすることも出来ます。が、本当に信頼出来る人ぐらいにしか見せません』
「え、じゃあ」
小悪魔ちゃんは私の事信頼して……!?
『あたしの場合は特殊ですが。あたしは魔王様の使い魔なので、要は配下です。 魔王様は御自身の配下のステータスなら、この様にあたしがわざわざステータスを出さなくても、見ることが出来ます』
うっわ、魔王様チートだ。
まあ、確かに配下の情報は必要だろうけどさ。
『さて、次はステータスの表示内容について説明していきますか。魔王様も御自身のステータスを見ていきましょう。「ステータスオープン」で出てくる筈です』
じゃあ、遠慮なく……
「ステータス、開け胡麻!」
『そこでボケますか、普通!?』
あ、普通に出て来たわ。
『ええ!?』
ちょっと長いし、説明回っぽいのに、ぐだぐだ。
話がそろそろ進展しないかなあ。