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『さあさあ、今度こそやって参りました! 司会進行は魔王様の使い魔、ミルカディア・クイックシュタインでお送りいたします!』
「わーわー」『パチパチ』
『口と念話を同時に使った!?』
『なんか』「出来た」
『いやいやいやいや! 普通出来ませんから!』
「そうなん?」『初耳やわー』
ううむ、本当に簡単なんだけどね、これ。
あれか、魔王様補正か。
『だって、初めて言いましたし! ていうか、口調何キャラですか、それ』
「魔王様」『キリッ』
『見事なコンビネーション!? まあ良いです、説明しますよー』
『はいはい』「ほいほい」
『あ、話すならどっちか片方にして下さいね!』
「チッ」
『舌打ち!?』
『んじゃあ念話魔王様はさよならばいばい』「ドヤ」
『もうやだこの人』
この位のボケには付き合ってくれないとこの先苦労するよ。
天の声がお前のせいだとか言った気がするけど、全力スルーだ
『さて、説明説明。どこからが良いかな。うーん、どこからが良いでしょうか? 魔王様』
「それを私に聞くのか?」
『魔王様に聞いちゃ意味ないですよね、魔王様は無知ですから』
今、聞き捨てならぬ事を聞いた気がする。
「まおーさまが、むちなのは、じじつじゃないですかあ」
わざわざ、口で言った上に黒笑した小悪魔ちゃんとか、何それ可愛い。あれ?
『えっと、じゃあ、気を取り直してー、いっちばん始めから話しますかー』
はいはい、そうして下さい。何せ、私は無知らしいからね。
『魔王様は……いや、九九琉木魔夜は人間としての一生を終えて、異世界であるこの世界に魔王として転生したんですね。えっと、死因は事故となってますね。ドラゴンに振り落とされでもしましたかー?』
してないよ! 振り落とされたりなんかしないよ! そもそも、ドラゴンなんか地球には居なかったよ!
ていうか、分かってたけど、やっぱり私死んだのか。全くもって、死んだ時の事なんか覚えてないけどね。事故死なのに! アレかね、死んだ瞬間の記憶だけとんだとかそういう、なんかか。
『それにしても、魔王様のお名前は……なんていうか……』
「私の名前がどうかしたか?」
『あ、そうそう。DQNネームです! 天の声ないすです!』
「ぐはあっ!」
くっ……、何だ、この精神的ダメージは!
『それに、物凄い厨二病臭が漂っていますね!』
「ぐあああっ!」
やめて! 私のライフはもうゼロよ!
『魔王様っ!? どうしたんですか!? 吐血してるじゃないですかっ!』
「小悪魔ちゃんが……」
「ええ!? あたしのせいですかっ!?」
小悪魔ちゃん、動揺して口で言ってるよ……。
うう……早くも生きていく気力が……。
「え……あ、まおーさましなないで! ポーションもってくるからしなないで!」
おろおろとしていた小悪魔ちゃんが、ぱたぱたとポーションを探し始めたのを、私はかすれていく視界の端で見ていた。
「ああ! まだ、此処できたばっかだから、ポーションなんかいっぽんも、ないんだった!」
そんな言葉が聞こえたのは、気のせいだと思いたい。
説明回……、になるはずでした。
いや、うん本当に。
それが……、どうしてこうなった。
勝手に話を脱線させる、二人怖い。