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こんにちは、黒鷺です。
あれー、別の新作書いてた筈なのになー、あれー?
その日の私は異常に眠かった。
それはもう、このまま死ぬんじゃないかってくらい物凄く眠かった。
だから、学校の帰りに乗る電車でついつい寝てしまった訳だ。
まさかその電車が脱線事故を起こすなんて露ほども思っていなくて。
更には異世界に転生してしまうなんて全く考えもしていなかったんだ。
◇◆◇
「まおーさま、まおーさま」
ぱたぱた、という羽音と共に舌っ足らずな声が聞こえた。
しかし、眠い。
物凄く眠い。
睡魔が私に今すぐ寝ろと言っていた。
だから、寝ようと思う。
別に5歳ぐらいのちっちゃい女の子がまるでサキュバスのようなちょっとハードな格好で、やっぱりちっちゃい蝙蝠のような羽を精一杯ぱたぱたさせている様子を見なかった事にしたかったとかではない。
断じてない!
いやしかし、それにしても眠い。
「まおーさま、まおーさま。まおーさまはまおーさまになってくれますか?」
また女の子が何か言っている。……だが、眠い。
「Zzz..」
「あ、まおーさまねないで! おきて!」
頬をぺちぺち叩かないでくれ。折角、気持ち良く寝かけているというのに。
「私は今、猛烈に眠い」
ボソッと、如何にも不機嫌な声が私から漏れた。
ちょっと自分でも驚く程にドスがきいていたいたが、仕方がない。だってすんごい眠いし。つか、ちょっと寝てたし。
「じゃ、じゃあまおーさまがまおーさまになるっていってくだされば、ねてだいじょーぶだから!」
なんか言えば寝ていいらしい。寝れるならもう何だっていい。ああ、もう眠いなあ。
「まおーでも何でもなるから今は寝かせてくれ……」
もう寝ていいかな……、寝ていいよね……?
「ありがとう! やったやった! あ、ねてだいじょーぶです!」
あ、お許しが出た……。じゃあ寝よう。
「そ、うか、おやすみ、なさい……Zzz..」
さあ寝る、今寝る、はい寝ましたー。
私は余りの眠さに承諾した事の重大さに気がついていなかった。
ああ、眠い。