第八話 【緊急クエスト 暴れ雷猪の討伐】
私は今の生活が意外と気に入っている。
人里離れた山の奥、鳥の鳴き声を聞きながら、目当ての草を採集していく。最近では植物に詳しくなり、珍しい草花を見つけた時には宝くじを当てた時のようなドキドキがある。
時折遠くの方で冒険者らしき人たちの声が上がることがある。もしくは軍人かもしれない。モンスターと戦っているのだろうが、私のところまでは影響はない。その、『危険なところだけどここだけは安全地帯』という感覚が、たまらなくいい。
そんな話をレオンにしてみたら、「お前は変人なのかな」と言われた。
とにかく、私は薬草師という仕事が気に入っているのだ。今日もたくさんピコの実を見つけて、背中に担げるだけ採集する。
空はどこまでも晴れ渡っていて、風は穏やかで、収穫も十分。帰り際に豚の形のモンスターを何頭か退治して、帰路についた。
私が薬草の卸先にしている魔女のおばあちゃん。実は町人からは疎まれているということに、あとになって気づいた。リリィですら、「憶測で物を言うべきではないけど、良くない噂をたまに聞くから、ホントに注意してね」と警告してくれた。
私も最初は面倒そうな人だと思ってはいた。
第一印象はあまり良くなく、山からの帰り道、
「あんた、よさそうな物もってるね。こっちへよこし」
そんなまさに魔女のおばあさんのようなセリフを、魔女そのもののしわがれ声で言うものだから、少し警戒した。
でも、私にとっては『魔女』は薬草を扱う人というイメージがあったので、もしかしたら仲良くなったほうがいいのでは? と思った。
どうも、この地域の人にとって『魔女』という概念が浸透していないのも、このおばあさんが疎まれることの原因のようだ。
「あとでね」といってその時はおばあさんが手招きする家には寄らなかった。単純に薬草をギルドに納入する必要があったからだ。
でもいくらか薬草が残り、約束通り魔女のおばあさんの家に行くと、逆に驚かれた。「来ないかと思った」そんなかわいいことを言うものだから、少し笑ってしまう。
その日から多めに採れた草花はなるべくおばあさんの家に先に融通するようにしている。珍しい草花の保存方法や活用方法、似た草花の知識など、私にとって興味深い話をたくさんしてくれるからだ。
魔女のおばあさんも、私が全く恐れる様子もなく熱心に話を聞いているからであろう。最近では美容にいいお茶とやらを入れてまで歓迎してくれている。
話を聞くと、おばあさんも異世界とまではいかないまでも、まったく異なる地域からやってきたのだそうだ。異文化圏の者同士、仲良くなれてよかった。
今日もそのおばあちゃんのために、ピコの実を残していく。ギルドは『緊急クエストに出していたモンスターがいつの間にか退治されている』とにわかに騒然となっていたが、そんなこともあるのだなと思いながらギルドをあとにし、私を待つ偏屈おばあちゃんの家へと向かっていく。
「今日も平和だな」
その声もまた爽やかな風にかき消されていった。




