第七話 噂の真相
「クエスト受注、承りました。安全な狩りをお祈りしています。……モニカさんの採集した薬草、品質がいいので凄く助かってるんですよ」
窓口のお姉さんが、受付ついでに軽く身を乗り出して耳打ちをしてくれた。毎日来ているので、最近はこうして話しかけてきてくれるので、うれしい。
「そうですか? ありがとうございます! 今日も頑張って採ってきますね」
「あ、でも安全をお祈りしているのは本当ですよ。最近低ランクのモンスター出現率が不自然に減っているんです。たぶんモニカさんが採集クエストをやっているあたりもそうですよ」
「そ、そうですか」
「噂なんですけど、単純に冒険者が増えてるから弱いモンスターが狩り尽くされてるっていう説と、もう一つ。高濃度魔素をまとったヤバいモンスターがうろついているから、モンスターが逃げ出しているっていう説があるんです。」
「高濃度……魔素、ですか」
「そ。モニカちゃんも気をつけてくださいね」
集会で聞いた話は当然冒険者ギルドでもすでに浸透しているようだった。
(う〜ん。単純に私が追い払いすぎたたけな気もするけど……)
低級モンスターなら手をかざしただけで、文字通り瞬殺できる。上級もいけるのだろうが、気は進まないので相変わらず「低級エリアで長居して大量収穫作戦」を続行中だ。
「ありがとうございます。危ないところは行かないようにしますね」
冒険者たちでごった返すギルド施設を出て、私は早速クエストへ繰り出す。
別に冒険者ギルド経由でなくても、採集した薬草を売る場所はあるのだが、私は毎日ギルドに顔を出すことにしている。
それは、情報収集ももちろんだが、ギルド公認の薬草師という肩書を維持するためでもある。
多種多様な地域から人々が集まるこの町では、ギルドに所属しているということが市民権に相当するのだ。そしてギルドに所属し続けるためには定期的にクエストをクリアするか、寄付をするなどして繋がりを維持しなくてはならない。
私の場合は納品するのが薬草類なのでどうしてもモンスターの素材よりは貢献度が下がる、気がする。なので、冒険者ギルド、薬草師部門に所属し続けるために日参しているわけだ。
(縁もゆかりも無いこの地で、少しでもいいから繋がりを求めたいっていうのもあるけどね)
空を見上げてぼんやりとそう願ってから、いざ出発。
今日も今日とてせっせと薬草を採集し、ギルドに納品。道すがら魔女のおばあさん宅にもお裾分け。
リリィのお店は定休日なので、明日の朝のパンをパン屋で買ってから、酒場へ向かう。
ここ数日姿を見なかったレオンがいつものカウンター席にいたので、少し小走りになって私もいつもの席を目指す。酒場はハント帰りの冒険者が酒盛りをしていて非常ににぎやかだ。
そのなかで一角だけ静かな空間にレオンはいた。
「久しぶりね。パン持ってく?」
「いらん」
レオンは一瞥して、自分のグラスに視線を戻してしまう。
「そう? おいしいのに」
「そんなことより、この前の火竜の話、助かった。あれから調査を進めたことで、だいぶ生態がつかめた」
「あ、そうなの? よかったわ」
「また頼む」
気安く頼まれてしまい、少し反応したくなった。
「ちょっと。私はべつに便利な情報屋さんってわけじゃないからね。そっちもいい情報よこしなさいよ」
「俺も別に情報屋のつもりはないし、モニカを情報屋だとも思ってない」
そう言いながら、珍しくレオンが笑っている。
「じゃあ何でいつも私と話すのよ」
「なんでだろうな。話が合うからじゃないか?」
縁もゆかりも無いこの地で、ひとつ、またひとつと縁がで来ていく気がして、少し嬉しい一日だった。




