第六話 スマホのない世界での情報収集方法
「おいし~い!」
山盛りのホイップクリーム。その下から顔をのぞかせるパンケーキ。おしゃれに散らばされた、ちょっと酸味を加えてくれる色とりどりの木の実。
そのお皿を前に置いてどや顔をしているのは、お馴染み、リリィだ。彼女は今無事転職活動を終え、まさに天職であるカフェで働いている。甘いもの大好きな彼女の考案するレシピは、このお店の主戦力になっているらしい。
「こんな殺伐とした、冒険者野郎ばかりの町にスイーツがあるだけで信じられないのに、ここまで完ぺきとは……」
「ここはいろいろな地域から人が集まってきているからね~。味の好みも地域ごとに違うから、ニッチな需要があったってことよ! それにモニカが糖の花を定期的に供給してくれるから、お店としても安定してメニュー展開できるようになって大助かりよ!」
需要と供給の完璧なる一致に感謝しながら、ホイップにスプーンを入れる。
「ところで、レオンさんとはどうなったのよ」
可愛い女の子が好きなこと。それは、甘いお菓子と可愛いもの、そして恋バナ。ホイップを口に入れたタイミングだったので唐突な話に思わずむせてしまった。
「どうにもなってないわよ。前にも言ったでしょう。レオンとはただの情報交換仲間だって」
「ふ~ん。でもモニカってあんまり情報収集とか一生懸命するタイプに見えないわ」
「なんでよ。薬草師のおじいさんたちに話聞きに行ったり、薬売りさんに最近の動向を聞きに行ったりこまめにしてるんだから」
あまり信じていなさそうなリリィに必死に説明すればするほど、さらにリリィの目は半眼となる。
「こうやってリリィと会いに来てるのだって、私にとって大切な情報収集の一環よ」
少し腹が立って、意地悪を言ってみる。
「なんの情報収集よ」
「もちろん、スイーツよ。私の大切な活力だからね」
「ふふ。それもそうね。モニカにとっては人との交流が情報源ってことね」
「う~ん。そうね。私が前に住んでいたところとは勝手が違いすぎて、それしか方法がわからないっていうのもあるけど。普通はどうしてるの?」
「え、モニカ、本当に知らなかったのね」
リリィの反応からして、何か方法があるらしい。
「みんな集会に行くのよ」
文字の読めないものも多いこの地域での主な情報共有方法は、口頭伝達と公的機関や各種団体が開く集会によるものなのだそうだ。
「集会ねえ。まあ確かに古代ローマとかで街頭演説をしたりして教えを広めたっていうし、単純にして効果的な方法なんだろうなあ」
リリィから聞いた集会というのは、町の中央にある演説場のようなところで行われるそうで、入場は自由で、主催は登録制なのだそうだ。定期的に行われており、そこに行くのを趣味や仕事にしている人もいるとのこと。
私も実際に行ってみると、大勢の人たちでごった返していた。冒険者が主かと思っていたのだが、鎧姿の冒険者、帳簿を抱えた商人、道具袋を下げた職人。思っていた以上にいろんな人が集まっていた。各種職種の人が集まっているようで、この町にいる人々の構成がここに来ればわかるような風景だった。
「~~ということで、現在ピコの実が大量発生している若岳は魔素濃度が非常に濃くなっているため厳重警戒態勢で赴くこと。また、一部の地域から不自然に低級モンスターが出なくなっている現象については現在当局でも捜査中なため、何か進展があったら次回の集会にて伝える予定です。各自新たな情報があったら最寄りの支部へ報告をお願いします」
舞台上で簡易メガホンのようなものを構えて話をしている人がいたので内容を聞いてみたが、思わず背中に冷たい汗が流れる。
(……定期的に集会によって、私の常識とのすり合わせをしよう)




