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戦闘力レベル99の薬草師〜異世界行っても採集クエストしかやりません〜  作者: 成若小意


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第五話 自分の情報は最小限に、相手の情報は最大限に

「冷た〜!」


 私は今、集めてきたピコの実の洗浄をしている。低木になる赤い小さな木の実。この実を洗うときは冷たい湧き水でないと効果が半減してしまうので、便利な魔法洗浄などは使えない。


 つくづく思うのは、日本でも異世界でも、暮らしていくのは大変だということだ。冷たい水でジンジンする手をタオルにくるんで温め、辺りを見回す。水場の周りに積み上げてしまった大量のピコの実の枝の束を。


「さ〜て、これをどこに卸すかな〜」


 独り立ちして半年。薬草師のおじいちゃんたちにいろいろ教えてもらったり、リリィと仲良くなったりして、この世界にも知り合いが少しずつ増えてきていた。採集活動も順調だ。


 おかげで販路も広がり、ギルドだけでなく町中の薬売りや町はずれの魔女、そして軍人のレオンにバランスよく売ることで収入も安定してきた。そうすると、心もなんだか安定してくるのだと実感する。


「ピコの実はまだたくさん採れるんだけどなぁ。かわりに奥地にはいけなくなるし、かといってそんな大量に売りさばける品種でもないし」


 これぞ嬉しい悲鳴というやつだろう。群生地を見つけたのでいくらでもとってこられるため、調子に乗ってしまった。


 まあ、困ったときの大量販売先は決まっている。





「と、いうわけで、今手元には大量のピコの実があるわけですが」


 私が本日の定食を食べながら提案すると、隣に座っていたレオンは額に手を当て、深くため息をつく。


「毎度のことだが、どうやってお前はその希少種を多量に見つけてくるんだ」


 レオンは腕を組み、じっとこちらを見る。


「毎度言いますが、採集ポイントはいくらレオンさんでも公開できません」


 私のおどけた返答に、レオンは軍人らしい無言の圧をかけてくる。


 しばし見つめ合う、もとい睨み合う私たちだが、いつものようにレオンのほうが音を上げて、観念したように肩をすくめた。


 最近は小型のモンスターが出てきても慌てずに対応できるようになり、普通の単独行動の薬草師よりかは広範囲に活動できているのだが、余計なことは言わないことにしている。そしてレオンがしつこくは詮索しない性格だということも把握している。


 それにしても、いつもより元気がないように見えた。


「情報は公開されてたとは思うが。火炎岳に遠征に行った際に竜に襲われて、仲間に負傷者が多数出たんだ」


 気になって何かあったのか問いかけたら、随分と深刻な話だった。でも私は公的機関から情報を得る方法を知らないので、レオンに聞くまで知らなかった。


「え、ピコの実がこんなになってるのに火炎岳に行ったんですか?」


「どういうことだ?」


 レオンの目が少し鋭くなる。


「あの子たち、繁殖期にピコの実を食べに来るじゃないですか。火炎岳にはピコの実がたくさんなってますよね。その手前の若岳にもちょっとだけなってるんですよ。だからそれを目印に私はして行動範囲を変えます。実がたくさんなり始めると火竜の活動が活発になりますからね。むしろその話知らないんですか?」


「知らない」


 レオンの声が低くなる。その反応に、まずいことを切り出してしまったかと焦る。


 レオンとここで話をするのは、なにも素材を売りつけるためだけではない。こうやって情報交換をするのがメインだ。


 でも、最近では私の情報のほうが有益になっている。


 単なる一薬草師と、軍部の人間。なのに私の方が情報が豊富。


 流石にレオンも、先ほどのピコの実の話題のときのようにおどけて詮索をするのではなく、真剣な警戒の色を混ぜていた。


「どこからの情報なんだ」


「……別に信じなくてもいいですけどね。単に私が発見しただけの現象ですから」


 魔力レベルの低い薬草師は、安全地帯で一般的な薬草を採ってくる。レベルがある程度ある場合は、冒険者を雇ったりチームを組んでレアアイテムを狙う。さらにレベルが高ければ、薬草師のような地味な職になど就かず、冒険者になってモンスターを狩るだろう。


 私のように苦手とはいえ単独でモンスターに対処できる薬草師はとても珍しいわけだ。一人なので自由にどこへでも行ける。少しずつ一般的な活動範囲からズレてきているのかもしれない。


「とりあえず貴重な情報であることにかわりはない。調査をしてくる」


 硬い表情でレオンはさっさと行ってしまった。


 別に火竜の情報は渡す必要があったわけではない。なんなら平穏に暮らすためにはこちらからの情報は少ないほうがいいだろう。でも、いつも泰然としているレオンが見るからに落ち込んでいたので、つい話してしまったのだ。


「そろそろ自重しなきゃかな……」


 逃した販路と食事仲間。隣の席の食べかけの食事を眺めながら、反省する私であった。

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