第十一話 たまたま最強
さすがの私も考察をした。私のレベルは規格外すぎると今更ながら実感したから。
とりあえず、この世界に来た経緯を考える。
あれは台風の日だった。日も落ちている時間帯。近くの川が大いに荒れていて命の危険を感たので、川を離れ山沿いの道を歩いた。でもそちらはそちらで木が倒れてきたりして当然危険地帯。とにかく早く家に帰りたかった。
私は何を血迷ったのか、近道をしようと山の麓の小道を駆け抜ける。昔から親に大雨のときは通ってはいけないと言われていた道だが、暗闇の中を荒れ狂う雨風に、どの道も危険だと思ってしまったのだ。それならば、少しでも近道を、と。
そして無我夢中で歩いてたどり着いたのが、ここ。
ふと我に返ったとき、いつの間にか雨と風が止んでいた。そしてガヤガヤと人の話し声が聞こえてきたので、周りに人がいるのだと、ようやく気づく。
日本人ではなさそうなその様子に、はじめは観光客の集団に紛れ込んでしまったのかと思ったが、どうやら様子がおかしい。その人たちも周りをキョロキョロ見回して、自分と同じ状態に見える。
そもそも景色も日本にいるようには思えなかった。赤茶けた土がむき出しの道路。カラフルな看板の出ている見知らぬ言語が書かれた店。すたれた商業施設なのかとも思ったが、それにしては人の営みの形跡が見える。
それから自分が異世界に迷い込んでいると気づくのに数日を要した。その集団ごと保護してくれた教会で、当たり前のように魔法を使っているのを見て、ようやく気づいたのだ。我ながら鈍いとは思うが、実際はそんなものだろう。帰宅途中に異世界転移だなんで誰がすんなり飲み込めようか。
落ち着いてから聞いた話によると、観光客のような人たちもこの地域の人ではないそうで、同じように教会で保護されたり、住んでいた地域まで護送してもらったりしたらしい。
私たちがたどり着いたあの小道は、大雨の日に稀に空間が歪むのか、迷い人が時折発生すると、教会の人が教えてくれた。迷い人はたいていこの世界のどこかの人で、住んでいる場所は遠方だったり近辺だったりはするが、異世界から来た人もいないわけではないそうだ。トラブル防止のために、異世界人の存在は教会に秘匿されているとも聞いた。
「……つまり、私は何かの目的があって呼び出されたわけでもない。たまたまこの地に迷い込んだだけ。私かここにいる意味は……特にない」
召喚されたわけでもないし、神様にお願いされたわけでもない。
ここに来てからのことを振り返り、今目の前にある自室に広がる草花を眺め、慣れた手つきで水をやる。
そこで出た私の結論は、味気ないものだった。
「……月に行くと重力の関係でものすごく高くジャンプできるっていうけど、そんなものかな。私の生まれ育った世界と、この世界。魔法なんかない世界だったけど、みんな気づいてないだけで、魔力が育つ要素が何かしらあったのかもしれない。その環境の差で、得たこの才能。つまり……」
私の上げた水を受け、草花がかすかな光を発しながら鳴動する。普通ならありえない反応。けれど、もう驚きもしない。
「たまたま、最強」




