第十話 今さらレベルについて知る
「それで? モニカ、お前のレベルはいくつなんだ?」
いきなりレオンに核心を突かれたかと思って一瞬びっくりしたが、ただ普通にレベルを聞いただけだとすぐに理解した。
(早とちりして変なこと口走らなくてよかった)
心のなかで胸をなでおろすが、
「で?」
というレオンのひと睨みで
「ひぃ」と悲鳴がこぼれる。
慌ててギルドカードを内ポケットから取り出して確認をする。身分証かわりに持ち歩いていてよかった。
「え〜……と。レベルは8! ね」
「なんで自分のレベルを言うのにギルドカードをみる必要があるんだ」
先程よりも睨みがきつくなっているが、呆れた様子も混ざるという器用な表情をするレオン。
場所はあいも変わらずいつもの酒場。大人数用の机がたくさん並ぶ中、私たちが座るのはカウンターの端。ここは梁が出ていて隣の席と隔てられているので、別の店のように静かなのだ。
周りが賑やかな分、多少内密の話をしても問題はない。
「モニカの納品したゴールデンナッツに、雷鳥の爪が紛れ込んでいた。おかげでギルドは大騒ぎだ」
「え、それは私に何か疑惑でも……」
「……低級の冒険者が活動する場所に、上級のモンスターが現れたのではないかと思われている。今のところはな」
私としても気をつけていたつもりだが、知らず知らずのうちに随分と深いところまで行ってしまっていたようだ。実際のところは低級の冒険者が上級モンスターの住処に現れたのだ。
「そ、そっかーこわいねー」
「モニカが十分に活動できる薬草師だということは知っている。話に出てくる知識は確かだし、実績も十分だ。ソロだと聞いたときには驚いたが、実力を疑うわけではない」
レオンは私の誇りを傷つけないように、言葉を選んでくれる。
「でも、活動可能領域というのはそれぞれ決まっているんだ。いくら知識があっても、そこから逸脱しているとどうにもならないこともある」
レオンは怒っているのかと思ったが、最近は顰め面の割合が多いこの顔もいくらか読み取れるようになっていた。
(いや、これは心配してるんだ。なんか、申し訳ないな)
「活動領域をみなおせ。それか、そろそろ誰かチームを組め」
正直、活動領域というのは調べたことがなかった。そもそも初めて聞いた言葉だ。知ったかぶってウンウンと話を進めていたが、そもそもなんなんだろう。
そんな事を考えておざなりに返事をしていたせいだろうか。次第にレオンの端正な顔が険しくなる。
「モニカ。理解してないだろう」
バレた。
それから活動領域なるものを小一時間説明してもらい、ちゃんと理解できた。レベルによって活動できる範囲が決まってるのだそうだ。
ギルドに冒険者登録をした際にひと通りの講習を受けることになっており、そこで説明があるらしいが、リリィも忘れていたし、私も聞き流していた。
「そもそも、活動領域は自分のレベルに合わせる。それは自分の生死が関わる問題だ。ギルドに教えられるまでもなく大抵の奴が知っている知識だし、クエストをしているなかで自然と学んでいくものでもある」
そこでレオンは一気に酒をあおる。
「自分のレベルすらあいまいなモニカにはそれ以前の問題だがな。常識をどこにおいてきたんだ」
流石にここまでグチグチと言われてだんだん腹が立ってきた。
「だって、私はここで育ったわけじゃないもの」
レオンが固まる。
「モニカ。お前この酒場の二階に住んでるんだっけか?」
「うん」
「ということは、教会経由か」
教会は多種多様な人々が流れ着くということを、この地域の人達は暗黙のうちに知っているのだ。
「……うん」
「それは悪かった。少し考えれば分かることだった。あまりにも平然と狩場に出ているから、つい」
「いいよ。特別扱いされるのもしゃくだしね。こちらの常識を知らないことも、本当」
「そうか」
「レベルの概念もわからない」
「そんなんでよく生きてこれたな」
これはバカにしているのではなく、本気でそう思っているようだった。レオンが生きてきたこの世界は、魔力や戦闘能力がなければ生きていけないところなのだろう。
「いいか、レベルについての知識は命にかかわる。よく覚えておけ」
レオンによるとこうだ。
一般人のレベルは1から15くらい。
ギルド職員は8から就職可能で25あたりなら別の職を選ぶ。
冒険者は通常20から登録可能。
「薬草師は例外なんだろう」とのこと。
レベル20はCランク。
レベル30はBランク。
レベル40はAランク。
50を超えるとSランク。
「この地域のギルドに所属している冒険者のうち、最高レベルが38。まあまあだろう。そして、今生きている人間の最高レベルは45だ。まあ、登録してる中で、だからな。秘境とかにいけば。その限りではない」
その話を聞いて、私は冷や汗ダラダラだ。
(私のレベル、ヤバくない!?)
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