第一話 モットーは「最強の力を持って安全圏で平穏に生きる」
異世界に迷い込んで早3年。今では何とか薬草を売る薬草師として生活できるようになった。けれど当時は身寄りもなく職も住む場所もなかったので、正直ここで死ぬのかなと思った。幸い地域の教会のようなところで割とすぐに保護され、雨風をしのいで生きてこれた。しかし無情かな、救済期間というのがあり、それを過ぎるとやんわりと自立を促されるのだ。
「モニカは植物の扱いがうまい。薬草師になるといいかもしれないよ」
教会の神父さんみたいな人たちのすすめで、薬草師になることに決め、冒険者ギルドの戸を叩いたのが半年前。
教会は質素なところだったけれど、規則正しく、慎ましやかで、穏やかで好きなところだった。食べるため、また売り物にするために薬草や植物をよく作っていたのが懐かしい。
そんな安住の地を飛び出してきた先が冒険者ギルドという真逆の場所なのだから笑える。今は慣れたけれど、ギルド受付に集まる粗野な連中の喧騒には辟易してよく鼻にしわが寄ってしまったものだ。祈りの場から争いの場へ。温度差が激しすぎてめまいがした。
ちなみに冒険者というのは、依頼を受けてモンスターを狩ったりしてその素材を採集や報償金で生活する人たちのこと。その中にはモンスターの生息域に生える薬草を採集する依頼もある。そんな場所であるから、もちろんただの薬草採集とはいえ、ある程度モンスターを追い払う力が必要。
「モニカはたぶんいい筋を言ってると思うんだ」
私が進路を決めたとき、心配するシスターに対して若手の神父さんがそう言ってくれた。その神父さんいわく、私は魔力がおそらく多そうだということ。
なんでそんなに曖昧かというと、私はこれまで魔力量を測ったことがないからだ。普通は幼少期に公的機関でしっかり測定する魔力。でも、大人になってからは測定する機会がほとんどないらしい。だから私は魔力量のわからないまま冒険者ギルドに向かうことになった。
でも、実は私には自信があった。教会で魔法を使う用事があるとき、たまに私も駆り出された。社会に出てから困らないように、今のうちに慣れておこう、と。その際に、魔法を褒められた。かなり加減して、最小まで絞った魔力を、「今までに見たことがない魔力量だ」とまで言わせた。
とはいえ教会は戦闘とは無関係な場所。さらに片田舎なので、素朴な人たちが多く、きっと大げさに褒めてくれたのだろうなとも思った。
だから、ギルドにて魔力判定をしたときは、正直ビビった。
「あ〜。モニカちゃんが測定した日、未だに思い出すときあります〜」
そう言っていま目の前でパフェを食べているのは、スイーツ友達のリリィ。ギルドの元職員だ。リリィが私の魔力を測定担当してくれた。
ふわふわのピンクの髪の毛をツインテールにして、ガーリーな格好でパフェを食べる姿はギルドには似つかわしくない。それは当人も感じたようで、1週間もたたずに辞めたそうだ。その短期間を私は引き当てたのだから運がいい。この異邦の地で毎日でも語らえる友を得られたのだから。
「あんな数字、あとにも先にもモニカだけでしたよ〜」
リリィはパフェのうえに乗るバナナをスプーンから落とさないよう慎重に口に運ぶ。彼女にとっては、モニカのレベルよりもよっぽど重大事だ。
こんな調子の下っ端のモニカと、教会出身の身寄りのない冒険者の測定には誰も興味がない。だから、この数字は実は二人だけしか知らない。
私の魔力レベルが、カンストの99だったことを。




