四話「ようこそ私の極上楽園(エルフの集落)」
年末、仕事納めでした。
皆さんはどうでしょうか?
年末年始、ゆっくり過ごしたいものですが、さて、お客さんに急遽呼ばれなければいいけど。。。
『••••••で、でっか』
まるでジャックと豆の木。
天空を目指し一直線に伸びた巨大樹。
それは、私である。
今は妖魔樹の中に入り、自分自身を見上げている。客観的に見て実感した。これは神と崇められる神樹様ですわ。圧倒的な存在感と、滲み出る覇王感。この森の守護神たる堂々とした姿だ。
『すごいんだな、私』
(それはもう神樹様ですから!)
美青年エルフの少年の様な笑顔!
やばい、鼻血出る。
この身体で出るのか知らないけど。
『ところで、私は集落に行けば良いのかな?』
(あ、はい!ご案内致しますので、私に付いて来てくださいませ!)
ルーシュの後ろに付いて歩き出す。
どうやら集落までは三十分程らしい。
ツタで周辺探索した範囲には、ひと気など無かったが、意外と近くにあるんだな。樹の頂(頭)からも周りに何か無いか調べたが、遥か高みからでは、緑に覆われた森が見えるだけだった。
それにしてもエルフ族の集落かぁ、正気を保ってられるかなぁー。女の子のエルフも居るかなぁ?楽しみだなぁー!
『そういえば魔獣ってのは、この前、君が襲われていたアレだよね?』
(ええ、中級魔獣イビルガムです)
『うえぇー?あれの親玉が居るの!?』
以前は何とか追い払えたけど、あんな化け物がまた来たら、勝てる気がしない。
だって、私ってば“樹”なんだよ?
それにこの妖魔樹の姿だと、私本体より圧倒的に小さいから、簡単に襲われそうだよ。
せめて魔法とかあったら良いんだけど。
『ねぇねぇ、この世界って魔法あるの?』
(••••••え、この世界?)
『あ、いやぁー、ほら私はまだ目覚めたばかりだから、なーんにも分からないわけよ!』
咄嗟にはぐらかしてしまった。
別に問題は無いんだろうけど、元の世界で一度死んで、転生したら“樹”になってましたとか、ややこしくて説明が大変だからね。今は伏せておこう。
(魔法ありますよ。我らエルフ族でも、使える者は多いです。日常に必要な生活魔法と戦闘に必要な攻撃魔法など、分類や種類も多く存在しています)
『やっぱりあるんだね!すごいや!』
異世界って感じがして良いなぁ!
私も魔法とか使えたりするのかな?
樹木精霊は最上位の精霊なんて言ってたし、森の守護神たる存在なら、最強だったりする!?
『って、あれ?••••••魔法使えるんだったら、魔獣を自分たちで追い払ったり出来ないの?』
(そこが問題でして••••••。件の魔獣は、本来であれば中級魔獣ですので、大人であれば容易に対処出来るレベルなのですが••••••)
『ですが?』
(ここ一月の間に、急に凶暴化しまして、魔力も大幅に上昇し、さらには群れの親玉は上級魔獣の分類になり、対処困難になったのです。その影響で大人すらロクに狩りや山菜採りにも行けず、食糧が尽き欠けているのです)
えー、なにそれ怖い。
危険過ぎるんじゃないかなぁ。
魔法使えたとしても勝てる気しないよ。
『というか、そんな危険な状況なのに、ルーシュは良く森の中で単独行動してたね?』
(••••••ええ、まぁ、事情もありまして)
ルーシュは、シュンとして俯いてしまう。
何やら複雑な事情とか、人に言えない話が、あるみたい。人生って色々あるもんね。私もOLしてた頃、それは大変だったもん。女だからって、まともに仕事出来ないだろーとか差別されたり、昇進したのは上司に色気仕掛けしたからだろーと難癖付けられたり、思い出すだけで腹が立ってくる!仕事での苛立ちが増える度、エルフが出てくるラノベやらアニメやらを観て、そのストレスから解放されていた。
やっぱりエルフは私にとっての神!
最高の推しなんだよなぁ!
だから、エルフであるルーシュが何かを抱えているなら聞いてあげたいけど、無理に聞き出すのも、それはそれで良くない。
『まぁ、深くは詮索しないけど、何かあれば聞くからね!なにせ私は神樹様なんだから!』
(あ、ありがとうございます!嬉しいです!)
満面の笑み、眼福ゥー!!
カメラがあったら写真を撮って、我が家の家宝としたいくらいよ!
(あ、集落に着きました)
『••••••え!』
森を抜けて、開けた場所にやって来た。
ここが、あの••••••!
エルフの集落!
視界に飛び込んで来たのは、エルフとエルフ。
あっちもエルフで、こっちにもエルフ。
エルフ、エルフ、エルフ、エルフ、エルフェ••••••!
『ようこそォ!!!!!わッたしのォ、極上楽園ウウゥゥ!!!!!』
◇◇◇
という事で、私の極上楽園こと、エルフの集落に到着したのだけれど、
「••••••神樹様?この妖魔樹が?」
当然だが怪しまれてしまう。
数人のエルフに囲まれてしまった。
その内の一人、肩まで髪を伸ばしたエルフの青年が、背中に背負った矢を入れた筒に、手を伸ばしながら言う。手に持った弓を、私に向ける準備だろう。
「ルーシュ!今がどの様な現状か理解しているのか!?悪戯に皆の心を掻き乱す行為をするなッ!」
「その様なつもりはありません!話を聞いてください、ステンリー!」
ステンリーと呼ばれたエルフの青年。
これまた眩い程の美形だ。というか、エルフはみんな惚れ惚れするくらいの美しさ、男女問わず妖艶さも兼ね備えている。見た所、男性の割合は多いみたいだけど、集落内の小屋からチラチラとこちらの様子を窺っているのは、女性のエルフ達っぽい。ああ、近くで見たいなぁ。きっと可愛いんだろーなー!
「問答無用だッ!大人しくして貰おう!」
エルフたちが一斉に弓矢を構える。
おっと、これはさすがにまずい状況かも。
エルフ同士で争う姿なんて見たくないし、怪我なんてして欲しくない。何より私のせいでルーシュが危険な目に遭うのはゴメンだ。
どうしようかと考えを巡らせていると、正面に見える一際大きな建物の中から、女性エルフがゆっくりと姿を現した。
うっひゃあぁぁァァァァ!!
キタキタキター!!銀髪美女エルフ!
「まったく騒がしいけど、どうしたの?」
ふわぁー、と欠伸をしながら、近寄って来る銀髪エルフ。腰下まで伸ばした髪は、寝癖なのか、ちょっとボサボサしている。歩き方もまた気怠そうで、何ならちょっと猫背。それに反して、格好は純白のドレス、レースのロングカーディガンを羽織っており、上品な印象を受ける。
はあぁぁぁー!何て可愛いんだろう。
そりゃあイケメンのエルフも最高なんだけど、なんて言ったって、エルフは女の子だって眼福モノ。
こんなに綺麗で美しい存在、現実に居るなんて!
「お騒がせしております、長老」
え。
ルーシュを含めた集落のエルフ全員が、彼女を前に頭を下げている。長老だったの、あの銀髪エルフちゃん。やっぱりエルフは見た目に反して、長い時間を生きているみたいだ。みんな同い年くらいに見えるんだけど、何かしら違いがあるのかな?
と、ボーっと彼女を見つめていると、向こうもこちらに気付いた様で目線が合い、
「ーーーし、神樹様ァ!?」
あ、銀髪エルフちゃんは気付くんだ。




