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私は恋する樹木精霊(ドライアド)  作者: いとしき
一章「神樹の目覚め」
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十二話「メイドエルフは神」

久々になってしまいました。


「じゃあ、ルーシュは無事なんだねッ!?」

「は、はいッ!先ほど長老様のご自宅に運ばれました」


その言葉にホッと胸を撫で下ろす。

かなり重傷だったはずだけど、無事で何よりだ。

これも聖域の効果の一つなのだろう。

他にも怪我をしたエルフが居たが、みんな完全回復しているみたいで安心した。

知らない内にかなり万能な力を手にしたなぁ。


「そうしたら私はルーシュの様子を見に行って来ようかな!」


「あたしも行くぞ!」

「わたしも行きますわ!」


「いやいや!ここで待ってなさい!」


「な、何でだよォ!お姉様!」

「酷いですわ!姉上様!」


頬を膨らませて近付いて来るソルトとルーナ。

もうちょっと大人しければ可愛い存在なんだけどね。

さっきからエルフ達の表情が青ざめてるのは、二人が相当暴れた過去があるんだろうなーと容易に想像が出来る。ここに置いて行くのはそれはそれで迷惑になりそうだけど、やって貰いたい事もある。


「二人は集落の損傷確認してあげてよ。エルフ達だけじゃ大変だろうから。それに、まだ残党が居るかもしれないから警戒もお願いね」


喋る魔獣はイレギュラーな存在との事だし、いつ何が起こるかまだ分からない。ここはまだ警戒すべきだ。


「わかったぜぇ!お姉様!」

「お任せください!姉上様!」


嬉しそうに返事をする二人。

エルフ達は、冷や汗を垂らし苦笑いしている。

ごめんよ。万が一に何かあれば私が張り倒すから!


さて、長老であるクレアの家は、野外集落から見えている大きな屋敷だ。私はぴゅ〜んと空を飛び、自宅前に着くと、コンコンと軽くノックする。


すると、出迎えてくれたのはクレアではなく、銀髪を頭の上でお団子ヘアにしたエルフの女性。

••••••あれ、クレアじゃない?

って言うか、メイドさんじゃん!!!

黒のワンピースに、クラシカルなロング丈のフリル付き純白エプロンを着こなす姿は、まさにメイドさん。

エルフでメイドとか神かッ!!


エルフは見た目で年齢は判断出来ないけど、人間的目線では二十代くらいの容姿だ。

といっても、長老であるクレアよりも落ち着きがある様だ。表情もあまり変化はなく、その碧眼の瞳で真っ直ぐ私を見据えるだけ。

質素な暮らしをしているエルフ達の集落には、メイドなんて浮いた存在に思うけど、クレアって普段はだらしなくしてそうだし、メイドが必要なのかなぁ。

••••••それにしてもなにこれ!?

何も喋ってくれない!ちょっと怖いんだけど!


「あ、あの、ルーシュさんのお見舞いに来たのですが••••••あ、わたくし神樹のメアと申します」


恐る恐る挨拶してみる。

メイドエルフは表情を変えず、私の全身を見回し、ゆっくりと頭を下げた。


「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

「あ、はい!」


メイドエルフに案内されるがままに進む。

大きな屋敷なのかと思ったけど、そんなに部屋数もないし、無駄なモノがない。いくら長老といっても、質素な暮らしのエルフ達の中で、といった所だ。

と、きょろきょろしながら廊下を進んでいると、奥の部屋の扉が勢い良く開き、中から慌てた様子のクレアが飛び出して来る。


「ちょ、ちょっとぉー、ミューラちゃん!包帯がねッ、包帯が私に絡み付いて来るの!?どうしたらいーい!?」


クレアは全身包帯まみれの妖怪の様だ。

しくしくと涙を流す姿は、とても集落の長老とは思えない。ミューラと呼ばれたメイドエルフは、表情も変えずに、その包帯を解いていく。


「だから余計な真似はするなと忠告したのです。私の仕事を増やさないでくださいませんか」

「ご、ごめんねぇー••••••って、あれ?そこの可憐な精霊さんは••••••まさかッ!!?」


私は手をひらひらと振ってみせる。

涙目のクレアがさらに大粒の涙を瞳から溢す。


「し、神樹様ぁ!!無事で何よりですぅー!!」


飛び付こうとして来たが、ミューラが包帯を引っ張ると、クレアは身動き取れず転倒する。


「神樹様はルーシュの様子を心配しているのです。早く案内いたしますよ」

「••••••は、はーい」


絡まった包帯を解くと、クレアはルーシュが居る奥の部屋に案内してくれた。どうやら怪我は完全に完治した訳ではなく、まだ療養が必要との事で、クレアの自宅に運ばれたらしい。ミューラは治療魔法を得意としているらしく、簡単な治療をしてくれているそうだ。


「••••••まだ起きないんだ」


私は、部屋のベッドで横になっているルーシュの顔を覗き込む。その寝顔は、美しさもあるけど、年相応に幼くも感じる。たしかに怪我は殆ど治っているみたいだが、魔獣に噛まれてしまっていたので、さすがに治癒スピードが遅いらしい。


「それにしても••••••どうしてルーシュは森の中に居たの?危険な魔獣が溢れていた事を知っていたのに」


何やら理由がありそうな雰囲気はあったけど、話は聞けていなかった。魔獣に襲われるリスクを承知で、何をしていたんだろう?

クレアはチラッとミューラの顔を伺い、溜息を漏らしながら口を開く。


「ルーシュは父の遺品を探していたんでしょうね」

「え、お父さんの?」

「ええ。ルーシュの父は集落一の戦士でしたが、ルーシュが物心付く前に、殺されてしまったのです」

「殺されたって••••••誰に?」


表情を曇らせたクレアは口をつむぐ。

すると、その様子を見たミューラが、代わりにスッと前に出て来て、私の方を真っ直ぐに見る。


「ルーシュの父は、ハーフエルフに殺されたのです。彼は、いえ、私たちは特別な血を継いでいますから」

「••••••私たち?」

「申し遅れました。私はミューラ•ガリエル。ルーシュの母であり、殺されたグラント•ガリエルの妻です。そして••••••」


ミューラは胸に手を当て、碧眼の瞳に、輝きを灯す。


「かつて存在したエルフ族の国ーーーアルヴヘイズの王族の末裔たる存在です」



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