十一話「叫び声に萌える」
寒い日が続きますね。
体調管理には十分にお気をつけて!
夜空に星々が煌めく。
宝石のように散りばめられている。
この星空と神々しい月を、独り占めにしている、そんな気分で宙を舞う。
「••••••最高だわ、これ」
メアリスを目指し空を飛ぶ私は、透明な羽を存分に羽ばたかせる。この感覚にも慣れて来た。本来であれば、背中に羽が生えている訳なんてないのだから、飛行なんて簡単に出来るはずも無い。その指導については、後ろを付いて来る美少女眷属の二人が、ばっちりとこなしてくれた。
「さすがお姉様だなぁ!水平に蛇行、飛び方はもうマスターしたみたいだなぁ!」
「夜空も舞う姉上様のお姿!美しいですの!」
ソルトとルーナも当たり前という顔で空を飛んでいるが、私と違って自前の羽がある訳ではない。二人は、背中から自在に羽を生やす事が出来るらしい。
どうやら魔力制御によって、依代を自在に作り替えている様だ。何でもアリなんだよなぁ。
「それにしてもメアリスなんて久し振りだなぁ。百五十年くらいは呼ばれてないもん。魔獣騒ぎで困ってたなら、いくらでも助けたのにぃ!絶対にルーナより役立つん、だ•け•ど、なぁ!」
「まったく水臭い連中だこと。わたしに相談していれば、何処ぞの羽虫が手こずる数を、一瞬にして殲滅してあげたのに。見る目の無いド底辺だわね。大好き」
「••••••あんたらがすぐ喧嘩するからでしょーが」
彼女達と出会って間も無い私ですら感じる。
この圧倒的な面倒臭さ。
そりゃあ集落に呼ばれなくもなる。
呆れて溜息を吐いていると、後ろに付いていた二人が、それぞれ私の左右に並んで飛び始めた。
「そう言えばぁー、さっきの“聖域”の展開!素晴らしかったぞぉ、お姉様!!」
「本当ですわ。さすがは姉上様ですの!」
「••••••聖域、って何のこと?」
思わず首を傾げる。
はて?知らないワードが出た。
私が知らないという事を不思議に思ってか、ソルトとルーナも顔を見合せ、やや怪訝な顔をする。
「えっ?あんな大魔法を自覚なしに使ったのかぁ?かなり魔力消費もあったと思うけどぉ••••••」
「そもそも大森林を覆う“聖域”を展開する事自体、神樹である姉上様にしか出来ない芸当、つまりは固有魔法であるはずですわ」
そんな事を言われても、何も分からないのだが。
でも、膨大な魔力を使った大魔法なのだとしたら、その影響で神樹本体に戻されたのかも。
それに固有魔法って言うのは、自分だけしか使えないオリジナル魔法、っていう認識だったよね。
「私の固有魔法って言うのは、どんな魔法だったのかな。その、聖域、とか言うのに関係あるの?」
「ーーー大破邪魔聖域。神樹であるお姉様を中心にして、この大森林全体に“根”を張るんだっ!で、その聖域内はお姉様の庇護下に入るって訳だなぁ!」
「わたし達も守護している森の範囲内に、小さな聖域を展開していますが、大森林全体を覆う事までは出来ませんわ」
「その聖域ってのは、どんな効果があるの?」
ぺらぺらと二人の説明が長かったけど。
つまりは••••••
大破邪魔聖域の効果。
侵入者感知・侵入者弱体化・侵入者自動撃退。
聖域保護対象の魔力強化・自動治癒。
聖域展開主の魔力強化・自動治癒•地点縮地可•千里眼可•植物等の召命可。
ーーーがあるらしい。
ちょっと意味が分からない。
けど、かなり優れたチカラらしく、外部からの干渉をほとんど無効化出来るとか。
そんな魔法をいつ使ったのやら。
「あ!集落が見えた!」
話をしていると、いつの間にか集落に着いた。
上空から見下ろすが、魔獣の姿は見当たらない。
殲滅に成功したのだろう。
さっき聞いた聖域展開のチカラを考えると、おそらく魔獣はただでは済まないはずだ。
ゆっくり下降して集落に近付くと、エルフ達が野外集会所に集まり、固まって動く気配が無い。
何かを取り囲んでいるみたいだ。
えッ!もしや怪我人が居るのかな!?
もしかしてルーシュだったりする!?
みんなシクシクと涙を流し、暗い雰囲気だ。
慌ててエルフ達の輪を掻き分け、中を覗いてみると、
「こ、これはッ!!!」
そこにはピクリとも動かない••••••私の仮依代、つまり妖魔樹が転がっていた。
「って、妖魔樹かいッ!」
どうやら私の意識が抜けた事で、睡眠状態に陥ってしまった様だ。これも聖域展開の影響なのか、妖魔樹の状態がすぐ理解出来た。
一応、死んでは居ないみたいで安心。
しばらく身体を貸して貰った恩もあるし、回復魔法をかけてあげよう。私は、倒れている妖魔樹に手をかざし、回復魔法をイメージする。
「ーーー愛強回復」
あ、ネーミングしちゃった。
ダメだよね、これ。
魔法名はよろしくないかもしれないけど、魔法自体は成功した様で、妖魔樹は光に包まれ、次の瞬間にはピョン!と跳び上がった。
それから私にお辞儀をすると、颯爽と森の中へ走り去っていく。
「ありがとねー!!」
手を振っていると、後ろから視線を感じ、ハッとして振り返る。
「ーーーうわッ!?」
エルフ達が私を取り囲む。
この身体だと、みんな大きく見えるから、ちょっと吃驚するんだよな。ところで、みんなはどうして涙を流しているんだ??せっかくの美しい顔が勿体無い。
「し、神樹様ァ!!神樹様なのですよねッ!?」
「安心しましたぞ!!良かった!良かった!」
「神樹様が帰って来たァ!!」
「うえぇ!?ちょっ、みんな!?」
飛び付いて来るエルフ達。
その中でもルーシュの幼馴染だというエルフの女の子ララーシャは、私に頬をすり寄せ泣き喚く。
はわわわわわわわ!!
可愛い女の子エルフの、もっちもちお肌があぁぁ!
下手すれば私がこすれて蕩けるぅ。
「むむむぅ!あたしのお姉様なのにぃー、あ、なんだこれ、何故か腹が立って来たなぁ!魔法をぶっ放したくなってきたぞぉー!」
「姉上様の可愛いらしさを堪能するなんて許せませんわ。地を這う蟻の気分を存分に味合わせてあげますわぁ〜、うふふふふふ!大好き」
後で不穏な空気を纏う奴らが居る。
危険なのでエルフ達を落ち着かせなければ。
私はララーシャの頬ずりを抜け出し、宙に浮かびながらフライング土下座をかます。
「ご、ごめんねッ!心配したよね?」
「はい!心配しました!神樹様、魔獣を退けた後、急にまったく動かなくなってしまって!」
やはり聖域とやらの魔法を使った事で、意識が妖魔樹の中から弾き飛ばされたのか。
エルフのみんなには心配をかけてしまった。
「ところで神樹様はどうしてそのお姿に?」
「あ、それはソルトとルーナに依代を作って貰ってね••••••」
「「ーーー陽光樹様と月冥樹様にッ!!?」」
その場に居たエルフ達の顔が引き攣る。
え、どしたの?やっぱヤバいの彼女らは。
いま後ろに居るんだよ?振り返ったら気絶しない?
「おやおやぁ?あたしらが何か?」
「あらあらぁ?わたし達が何か?」
私は、凛として勇ましく、それでいて神秘的な美しさを兼ね備えたエルフ達の姿が大好き。
でも、たまには良いかもしれない。
「ぎゃぴいぃぃぃ〜!!??」と聞いた事もない叫び声をあげるエルフ達も。
うん!それはそれで萌える!!




