十話「神樹について」
視点変更。
※一度原案等調整、投稿ストップあり。
大森林アルヴィドを東に抜けた先、深淵なる海に囲まれた島国がある。人間族が棲まうミドガルド島国だ。
島全体は菱形に近い形状をしており、その四つ角からは貿易港の巨大なふ頭が伸びている。
主に近海の海産物を獲り、他種族と交易していて、その新鮮度や豊富な種類から人気も高い。
故に商人や他種族の往来も盛んで、賑わっている。
ただ、人間族はこの世界では“最弱”の種族、他国や他種族の情勢には常に警戒を怠らない。
そんなミドガルドの政治上層部は、頭を抱えていた。
特に、外務卿であるグレイヴ•ランドールは、議会室のテーブルに肘を付き両手を組み、顔面蒼白で座っていた。
「••••••どうしたものか、この状況」
グレイヴが弱々しく口を開くと、他の参加者達は、唸り声を上げて俯いてしまう。その内の一人、メンバーの中では若輩者である工部卿のオックス•バーンズは、苦笑いをしながら挙手をする。
「あ、あの、ランドール卿。今回の件、それほど深刻な事なのでしょうか?」
「••••••うむ。極めて、な」
「ユグドラシア大陸の大森林アルヴィド、その守護者たる神樹の覚醒。時代が大きく変革する兆し、ですか」
議会室に重苦しい空気が流れる。
いくら島国とはいえど、神樹覚醒は、大陸どころか世界を揺るがす大問題。その事をみんな理解していた。
立派な顎髭を蓄えた内務卿フリード•マウベルは、事態の深刻さに溜息を漏らしながら、不安気な表情を浮かべる参加者達の顔を見る。
「いずれにせよ旧時代の御伽話とて侮れん。その覚醒については、我らの国は最も畏れるべき事案と連動しているのだからな。神祇卿、“アレ”の動きから目を離すでないぞ」
長い前髪で両眼を隠した神祇卿のレイヴン•ローダーは「はっ!」と頭を下げつつ、密かに笑みを浮かべていた。
ーーー神愛教。
旧時代を支配していた神々を信仰する宗教組織。
その愛徒の中でも最高権力を持つ『六愛天使』の面々は、月夜の下で茶会を催していた。
「まさか僕が夜宴茶会に呼ばれるとはねぇ、どういう風の吹き回しなぁの?」
まだ口も付けていない紅茶を、スプーンで何回も執拗に掻き回し、ゴールドブロンドの髪をミディアムショートにした青年は、不貞腐れ気味に言う。
面倒な奴を相手にしたくない、その感情を隠し切れない他参加者三名は、あからさまな表情付きで目を背ける。ただ、ミルクティグレージュの長髪を、頬にかぶせて内巻きにワンカールさせた女性ーーーフィリアだけは、彼らを集めた主催者として単純に無視は出来なかった。
「今回は緊急の案件でもあるのでね、皆に招待状を送らせて貰った次第だ。それにしても、“遊戯愛“のルーダス君が参加してくれるとは、嬉しい限りだよ」
「まぁーね!たまたま用事があったもんでさぁ、たまにはみんなの顔見ないと忘れちゃうし、気紛れってやつだよねぇ!」
「は、ははは。ありがとう」
「それよりさぁ、“心友愛“のフィリアちゃーん?君さえ良ければ、僕のハレムに入らないかぁい?是非とも歓迎するよぉ!」
と、ルーダスがフィリアの手を握ろうと近付いた所で、間を裂く様にして短剣が飛んでくる。
投げた張本人は、深色の緑髪を後ろで編み込んだ女性ーーープラグマ。
殺人未遂をした者とは思えない程、スンとした表情で、優雅に紅茶を啜っている。
「何をするのさぁー、“実用愛“のプラグマちゃーん?今のさぁ、僕を殺すつもりだったぁ?」
「••••••おっと。失敬。手が滑った」
「まったくぅー、気を付けてよねぇ?」
ルーダスは、ヘラヘラと笑みを浮かべながらも、諦めたのか元の席に戻り、冷えた紅茶を口に含んだ。
仕切り直しに、ゴホンッ、と咳払いをしたフィリアは、改めて口を開く。
「今回、参加者は私を含めて四名だ。どうせいつも通り三名のみとは思っていたが、たまたまとは言えルーダス君も参加してくれた。そこで、我々としての今後の方針を確認したいのだが••••••」
「あーぁ、神樹の件かなぁ?あれって本当に覚醒したのぉ?」
「••••••ああ。間違いなくな。先日、膨大な魔力が大森林から放たれたと報告を受けたし、何より私自身も感じ取った」
すると、大人しく話を聞いていた、セミロングの白髪少女が、申し訳なさそうに挙手をする。
「え、えっと、ね••••••神樹が覚醒すると、何か困る事、あるのかな?」
「それはもちろん“献身愛”のアガペー君。我ら神愛教の成り立ちには、あの神樹の存在が邪魔だからな。いや、正確には神樹に加護を授けている女神、アレの復活の兆しと同義であるから厄介なのだ」
「それって、旧時代の、愛の女神?」
「ああ、恋愛の女神ヴァナディース。またの名は、憎きエルフ族の崇拝する女神ーーーフレイアだ」
他作品原案調整中、一時投稿ストップするかもしれません。




