第4話:黒髪の冒険者 ―拓海、風と共に現る―
午後の霧が少しずつ晴れ始める丘の上。瓦屋根に日差しが反射し、湿った草の匂いが鼻をくすぐる中、翼、天音、凛花の3人は古屋の周囲で作業をしていた。
突然、遠くの林から風を切るような足音が聞こえた。枯れ葉を踏む音、枝の揺れる音――まるで風そのものが歩いてくるかのようだ。
「今の音、誰か…?」翼が耳を澄ます。
黒髪の青年が林から飛び出してきた。軽やかで無駄のない動き。体を覆うジャケットは泥で少し汚れているが、鋭い瞳が印象的だ。拓海だ。
「ここが廃村か……面白そうだな」
その声は低く、でも確かな自信に満ちていた。
翼が慎重に一歩前に出る。「君は……?」
「拓海。外を歩いてたら、募集広告を見かけたんだ。面白そうだから来てみた」
天音が興味深そうに装置を指さす。「君も手伝える?」
「もちろん。俺にできることはやる」
拓海は即座に周囲の地形を確認する。倒木、瓦、湿った土……すべてを一瞥で把握し、作業効率を計算するかのように動き始める。
「こっちの瓦、少し危ないな。俺が固定する」
「ありがとう、助かる」凛花は頷く。
瓦を支える拓海の手はしっかりとしていて、彼の存在感がチームに安心感を与える。
霧の丘に四人の影が揃い、小さな火花のような絆が芽生えた瞬間だった。
「これで本格的に始められそうだな」翼が微かに笑う。
「ええ、でもまだまだ課題は山積みです」天音が頷く。
凛花も笑顔で「力を合わせれば、きっと何とかなる」
拓海は林に向かって一瞥し、風を感じるように立つ。「さて……俺たちの廃村国家、始めるか」
瓦の軋み、風に揺れる木々、四人の足音――すべてが静かに、しかし確実に、この小さな廃村に物語の息吹を吹き込んでいた。




