第3話:都会の青い瞳 ―凛花、挑戦の旅立ち―
朝日が霧を薄く溶かす頃、廃村の丘に新たな影が差し込む。翼と天音が瓦屋根の点検をしていると、遠くの道に軽やかな足音が聞こえた。
「……誰だろう?」翼は眉を寄せる。
そこに現れたのは、鮮やかな青い瞳の少女。整った都会的な顔立ちに、きちんと手入れされた髪。肩から小さなバックパックをかけ、颯爽と坂道を登ってくる。凛花だ。
「あなたが、翼さん……ですか?」
「そうだ、君は?」
「凛花です。ネットで募集広告を見て……面白そうだと思って来ました」
彼女の声は落ち着いているが、目には挑戦心が宿っている。都会で育った彼女にとって、この廃村の荒廃ぶりは想像以上だった。瓦屋根は崩れ、倒木が道を塞ぎ、道具もほとんど朽ちている。それでも凛花は、眉をひそめつつも興味津々といった表情で周囲を見回す。
「なるほど……計画通りにはいかない、でも面白そう」
天音が微笑む。「あなたも、手伝ってくれるのね?」
「ええ。力になれるなら」
凛花はすぐに手を動かす。瓦の整理、簡易的な資材チェック、書類の整理――都市で培った論理的思考が、廃村の現場でもすぐに活きる。
「やっぱり、現場で見ると全然違いますね」
翼は頷く。「想像よりも現実は厳しい。でも、ここから始めるしかない」
霧の丘に3人の影が揺れる。瓦を抱え、水たまりに映る影が三つ。まだ小さな火花に過ぎないが、確かに何かが動き出した気配があった。
「私も、この廃村を何とかしたい」凛花は小さく呟く。その声は、ただの挑戦心ではなく、未来への決意を孕んでいた。
霧に包まれた丘は静かだが、瓦の軋み、湿った土の匂い、少女たちの足音――それらが廃村の空気を変え始めていた。




