第2話:金色の瞳が見つめる未来 ―天才少女、廃村へ―
翌朝、霧はまだ丘を覆っていた。瓦屋根の上には夜露がきらめき、湿った草が足元を滑る。翼が昨日確認した古屋の装置の前に立つと、遠くの道に小さな人影が見えた。
「……あの子は……?」
金色の瞳を持つ少女、天音がそこに立っていた。彼女の髪は風になびき、薄紫色のコートが霧に溶け込む。手には古びたノートと小さな工具箱。まるで、この廃村を初めから知っていたかのように、自然な足取りで古屋に近づいてくる。
翼は思わず息を飲む。
「君は……どうしてここに?」
天音は微笑みながら、慎重にノートを開く。そこには古代装置の設計図や水源の配置、瓦屋根の修復計画がびっしりと描かれていた。
「ネットで見ました。募集広告をね。面白そうだと思って」
翼は頷く。なるほど、彼女もまたこの挑戦に心を動かされたのだ。
「一緒にやるか?」
「ええ。ここで何ができるか、確かめたいんです」
天音は装置に手をかざし、微かに振動する金属の感触を指先で確かめる。
「この装置、まだ動くかどうかはわからない。でも……試す価値はある」
瓦屋根を見上げる翼と天音の視線が交わる。廃村は静かだが、二人の間に小さな火花のような予感が生まれた。
「ここから、変わるんだな……」翼が呟く。
そして二人は、瓦屋根の修復、水源の確認、古屋の調査を手分けして始める。霧の丘に、小さな活気が芽生えた。
足元の泥、水たまりに映る霧、微かに揺れる古屋の影……それらが、これから始まる廃村国家の物語を静かに、しかし確実に照らしていた。




