旧世界
太陽が地平線から昇り始めた頃、キャンプは活気づき始めた。ダレクは明らかにひどい二日酔いの男のような顔をして、頭を抱えながら火に向かって歩いていた。シオリは彼と並んで小走りに歩いていた。今や彼女は再び「いい子」の可愛らしさを取り戻し、無垢な瞳と色っぽい笑顔を浮かべていた。
「あら、ダーリン、そんなに飲まなきゃよかったのに…」と彼女は口元を手で覆いながら、軽やかに言った。
「あなた…自分でまた注いでくれたのに…」とダレクはうめいたが、シオリはただ不思議そうに微笑むだけだった。
その時、消えた火のそばで別の光景が繰り広げられていた。テントから出てきたリネアの友人たちは、思いがけない光景に凍りついた。
ヴィタリアは木にもたれて眠り、リネアは彼の肩に寄りかかり、銀髪を広い胸に散らしていた。
*「おおおお~」* エルフたちは互いに視線を交わし、くすくす笑いながら囁いた。一人がそっと近づき、リネアの肩に触れた。
リネアは目をぱっと開き、状況を瞬時に理解した。耳がぴくぴく動き、頬が赤くなった。彼女は飛び起き、まるでヴィタリアを起こしてしまったかのように振る舞った。
*「おい、起きろ!もうすぐ出発するから、準備して!」* 彼女はできるだけ無関心な口調でそう言い、彼を軽く足で押した。
ヴィタリアは片目、そしてもう片目を開け、ゆっくりと状況を確認した。
*「ああ…わかった」* 彼はニヤリと笑ってそう言っただけだった。
リネアが顎を高く上げて誇らしげに立ち去ると、友人たちは笑いをこらえきれなかった。それでも、彼女の耳はまだぴくぴく動き、背筋は不自然にまっすぐだった。
すでに消えた火の周りに一同が集まった時、その雰囲気は…異様だった。
- ダレクはまだ二日酔いに苦しんでおり、時折うめき声を上げていた。
- シオリは無邪気に微笑み、時折彼に「癒しの」エールを注いでいた(しかし、それがかえって状況を悪化させた)。
- リネアはヴィタリーとクスクス笑う友人たちをわざと無視していた。
- ヴィタリー自身もニヤリと笑い、時折エルフの方をちらりと見た。
主催者は大きな角笛を吹き鳴らし、キャラバンは出発した。古代の遺跡、危険、そして…もしかしたら予期せぬ新たな瞬間が、彼らを待ち受けていた。
しかし今のところ、最も興味深い出来事は、一行の中で起こっていた。結局のところ、我々が知っているように、最も困難な冒険は常にモンスターではなく、人間の…それも、それだけではない…心と結びついているのだ。
キャラバンが道中で最初の本当の危険に遭遇したのは、太陽が真上に昇っていた時だった。
最初に茂みから飛び出してきたのはデモウルフたちだった。影のように赤く光る目をしていた。40人のベテラン冒険者にとって、これは真の脅威というよりはウォーミングアップに過ぎなかった。リネアは狙いを定めた弓矢で群れのリーダーを仕留め、他の者たちもとどめを刺した。
するとイシュクリルが現れた。鱗に覆われた皮膚と力強い足を持つ、体長3メートルの怪物だ。戦いは短かったが、壮観だった。最も緊迫した瞬間、ヴィタリーは歯を食いしばり、叫んだ。
「クソッ、クソッ、クソッ!」
彼の拳から火球が放たれ、怪物の胸に直撃した。後方では、パイプをくわえた白髪の魔術師が眉を上げたが、考え事をしながら煙草を吸い続けていた。
危険が去ったかに見えたその時、巨大な翼を持つ巨大な熊、メドヴォクリルが森から飛び出してきた。
「さあ、熊だって飛べるぞ!」傭兵の一人が叫んだ。
激しい戦闘だったが、短かった。ヴィタリは再び「呪文」を使おうとしたが、今度は火の玉が空中で爆発し、全員に火花を散らした。
「おい、ビルダー、どこを狙っていたんだ?」戦士の一人が叫んだ。
「熊だ!」
「ほら、ここだ!」
最後のメドウィングが地面に倒れると、遠征隊の隊長が手を上げた。
「早退だ!傷の手当てとキャンプの準備だ!」
太陽はまだ高かったが、小競り合いの後、皆は休憩を喜んでいた。
リネヤは友人たちがひそひそと話す中、ヴィタリを人知れず見ていた。
白髪の髭を生やした魔術師は脇に立ち、煙の輪を吹き出していた。彼の目は秘めた興味に満ち、ヴィタリに釘付けになっていた。
シオリは再び「いい子」の姿で優しく微笑んだが、その深紅の瞳はダレクに近づく者を注意深く観察していた。
そしてヴィタリア自身も、新しく灯された火のそばに座り、手のひらを見つめていた。何かが変わったと感じた。そして、その変化は始まったばかりだった…
ヴィタリアがベルトを締めるという用事を終えたちょうどその時、背後から落ち着いた嗄れた声が聞こえた。
「お若いのですね、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
振り返ると、戦いの間ずっと彼を見ていた、あの灰色の髭を生やしたマジシャンがパイプをくわえて立っていた。
「もちろん」ヴィタリアは頷いたが、内心は警戒していた。
二人は倒木に腰を下ろした。マジシャンは器用にパイプの灰を払い落とし、芳香のあるタバコを詰め直し、火をつけると煙を吐き出した。ヴィタリアも遅れることなく、タバコに火をつけた。
「まあまあ…」老人は咳き込み始めた。「面白い呪文を唱えるんだな、坊や。とても面白いな。」
「本当か?」ヴィタリーは彼らが何を話しているのか理解していないふりをした。
「ピズドボヤツカヤ・ピズドフエヴィナ」マジシャンは完璧なイントネーションでその言葉を再現したが、彼自身も明らかにそのような語彙に慣れていなかった。「私の人生で、こんなにも罵倒して魔術に成功した人は一人しかいない。ちなみに、私の師匠だ。」
ヴィタリーは煙で窒息しそうになった。
「まあ…事故だったんだろう。」
「偶然か?」老人は煙を吹き出しながら目を細めた。「一体、この言葉が何なのか、知っているのか?」
「どんな言葉だ?」
「君が叫ぶ言葉だ。古代の戦闘言語だ。忘れ去られた。君は天才か、それとも…」
「どちらかだ?」
「あるいは誰かが君にその言葉について教えてくれたのか?」魔術師は探るように彼を見た。「誰が君に教えたんだ?」
ヴィタリは考えた。「リナのことを明かすべきか?とんでもない。」
「どういうわけか、そうなったんだ。」
老人はくすくす笑い、ローブの襞からボロボロの書物を取り出して老人に手渡した。
「これを読んでくれるか?」
その本は古く、革の装丁はひび割れ、ページは黄ばんでいた。ヴィタリはそれを開くと、目を見開いた。
「ここに…」
「最古の書物だ。何千年も前のものだ。君が無意識に繰り返しているまさにその書物だ。」 — 魔術師は目を閉じ、パイプを吸い込んだ。 — それで?
ヴィタリーはページに身を乗り出すと、文字が目の前で生き生きと動き出したようだった。彼は文字を認識した。
彼は文字を理解しただけでなく、このフォント、この言葉を知っていた。それは彼の世界の言語だった。
最初は、まるで自分の言葉を確認するかのように、ゆっくりと声に出して読んだ。
— *「…17日目。我々はまだこの呪われた場所にいる。ここの空は灰、大地は炭火だ。水は燃え、空気は肺を焼く…」*
それから声は静まり、彼は熱っぽく行間を走りながら、独り言を続けた。
それは日記だった。
地獄のような場所での、誰かの絶望と苦痛に満ちた物語。
悪魔や大釜が蠢くおとぎ話の冥界ではなく、果てしない荒野が広がっていた。
- 人々や動物はまるで部分的に溶け、皮膚が剥がれ落ち、肉と骨が露わになったかのようだった。
- 鋭い岩の森が地平線まで広がり、その多くはまるで巨大な何かが踏みつけたかのように破壊されていた。
- 空は永遠の炎で真紅に染まり、雨の代わりに灰が降り注いでいた。
- そして最悪なのは、魔法が存在しないことだ。あるのは炎と、苦痛と、絶望だけだった。
ヴィタリアは背筋に寒気が走るのを感じた。
- 若者よ、どう思う? 魔法使いの声が彼を現実に引き戻した。
ヴィタリアは唐突に本から身を離した。彼の顔には困惑が浮かんでいた。
- これは…誰かの日記だ… 真実を明かす勇気もなく、彼は呟いた。
魔術師は笑った。温厚な老人の笑い声だったが、その目は生き生きとした興味に輝いていた。
- ハハハ! 日記だ! - 彼は咳払いをしてパイプを一服した。- 師匠がこの本について何と言ったか知っているか?
ヴィタリーは黙っていた。
- 彼はそれを「最初の嘆き」と呼んでいた。これは私たちの世界が今とは違っていた時代の記憶だと言っていた。
魔術師は煙の輪を吹きながら後ろにもたれかかり、物語を始めた。
- 遠い昔、エルフの森も、オークの草原も、吸血鬼の城さえもなかった頃…世界は空虚だった。しかし、静かな空虚ではなく、燃え盛る空虚だった。
- 今は緑の谷がある場所には、石炭のように黒い石の森があった。川が流れる場所では、大地は渇きでひび割れていた。そして空は…
彼はパイプを上に向けた。
空は傷のように赤く染まっていた。そして、あの世界に生きる者たちは…私たちではなかった。彼らは…焦げ、半死半生で、希望を失っていた。
しかし…
魔術師は目を細めた。
― その時、誰かが*最初の言葉*を見つけた。そしてそれは…光り輝いた。
ヴィタリは心臓が止まるのを感じた。
― どんな言葉だ?
― そして、息子よ、それが最大の秘密なのだ。
老人はニヤリと笑ったが、突然真剣な表情になった。
― 私の師は、あの地獄を生き延びた者たちが…ここに*火*を持ち込んだと信じていた。炎だけでなく、*魔法*を。そして、今でも*本当の*言葉を覚えている者たちがいるのだ。
彼はヴィタリをじっと見つめた。
― 教えてくれ、坊や…あなたは*火*の夢を見たことがあるか?
ヴィタリは答えなかった。
なぜなら、確かに。
何度も。
キャンプのどこかで、リネアは奇妙な寒気を感じた。まるで何かが*変わった*かのようだった。
そして老魔術師は、種を蒔いたことを悟り、ただニヤリと笑った…
そして今、あとは芽が出るのを待つだけだった。
ヴィタリアは本を返そうと手を伸ばしたが、老人は優しくその手を払いのけた。
「息子よ、それはお前のものだ…」彼はパイプを一服し、煙を吐き出した。「私に残された時間は多くない。私は一生をかけて、ふさわしい後継者を探してきた…」
ヴィタリアの目が輝いた。彼は思わず背筋を伸ばし、興奮で震える声で言った。
「まさか…僕だと思うのか?」
彼の口調には、まるで偉大な英雄になると約束されたかのような、子供のような希望が込められていた。
魔術師は、くだらない冗談を聞いたかのように鼻を鳴らした。
「まさか。」
ヴィタリアの顔が曇った。
「正直に言うと、僕自身もこの文章の意味が分からなかったんだ」老人はパイプを指で軽く叩きながら続けた。「日記だって言われるまでは、何かの規則かガイドラインだと思っていたんだ…」
老人はくすくす笑い、丸太から立ち上がった。歳月で骨が軋む音を立てていた。
「でも、もし君がそれを読めるなら…それは正しい者の手に渡ったんだ」
老人はゆっくりと立ち去ったが、最後の言葉で振り返った。
「若者よ、幸運を祈る。素晴らしいことが待っていることを祈る。」
そう言って老人は木々の間へと姿を消し、ヴィタリアを古びた本と無数の疑問だけ残した。
ヴィタリアは、まだあの奇妙な本のことで頭がいっぱいだったが、騒がしい人混みをかき分け、まさにあのテーブルを見つけた。
ダレクはゴブリン商人の向かいに座っていた。怒りで顔面蒼白になり、拳を強く握りしめ、骨が砕けた。彼らの前のテーブルの上には地図が置かれており、その隣にはゴブリンの所有物となったダレクのギターが置かれていた。
「お前のギターは俺のものだ…」ゴブリンは甘くゆっくりとした口調で、この瞬間を楽しんだ。
ダレクは歯を食いしばりながらギターを彼に渡した。彼はすでにブーツもシャツも脱いでいた。失えるものはすべて失ってしまったかのようだった。
「遊ぼうか?」ゴブリンはふざけてデッキを投げ捨てた。
「ああ。」ダレクの声は嗄れていたが、目には炎が宿っていた。
「何を賭けるんだ?」
群衆は凍りついた。
「お前の自由だ。」
皆が息を呑んだ。
ゴブリンは喜びの涙を拭いながら笑った。
「お前の魂はブーツと同じ価値がある。つまり…銅貨3枚だ。」
ダレクは身震いし、指をテーブルに突き刺した。
「わかった…お前のカートと勝ち取ったものすべてを賭ける。そして俺は…」彼は言葉を止め、目を輝かせた。 —「母さんの魂を賭ける。クソッ…クソッ、ジョジョ…部隊の自由を賭ける。」
群衆は沸き立った。
—恐怖に息を呑む者もいた。
—歓喜の叫びを上げる者もいた。
—そして、既に結果を予想している者もいた。
ゴブリンは凍りつき、黄色い目を細めた。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
—「承知しました。」
彼は群衆の中にいた通行人にカードを渡した。
—「シャッフルして配ろう。」
その時:
- シオリがテーブルに近づき、赤い目を輝かせた。明らかに興味を持っていた。
- ヴィタリは群衆をかき分け、ダレクにそんな賭けをしたら殴り倒してやるぞと構えた。
- リネアは前に出ようとしたが、友人たちがそれを阻止し、ささやいた。「ダレクが自分で望んだことだ!」
そしてダレクは…
彼は深呼吸をし、顔色が変わった。怒りは消え去り、冷めた自信だけが残った。
- 「さあ、遊ぼう、商人。」
彼の指はテーブルをゆっくりと叩いた。
ゲームが始まった。