遺跡とその秘密
古びた鎖帷子をまとった厳格な男、キャラバンのリーダーが、中央の火の周りに皆を集めた。彼の声は群衆の喧騒をかき消すように響いた。
「よく聞け!タル=ガラクの遺跡は、決して居心地の悪い遺跡ではない。一歩踏み出すたびに命が危険にさらされる。我々の任務はこうだ。」
1. 魔術師 — 常に結界を維持し、4時間ごとに交代する。
2. 騎士 — キャンプと遺跡の入口を24時間体制で警備する。
3. 冒険者 — 各部隊には探検家が割り当てられる。あなたの任務は、探検家を作業現場まで護衛し、安全を確保することだ。時間は限られている — 許可なく遅刻してはならない!
4. 探検家 — スケジュールを厳守する。「あの塔も見てみよう」などとは言わない — 計画された地点のみを巡回する。
— 「ダレクのグループは5番目です。出発は16時頃です。それまでは自由ですが、準備をしてください。」
群衆がざわめき始め、人々は散り始めた。
リネア、ヴィタリア、そしてシオリは焚き火のそばに腰を下ろした。ダレクはいつものように、言い訳を見つけて姿を消した。今回は「機材の点検」という口実だ。
シオリは高価なグラス(どこで買ったのかは誰も聞いていない)から、物憂げにワインを一口飲んだ。
— 「一体どんな結界なんだろう…もし落ちたら、私たちみんな地元の悪霊のデザートになっちゃうわよ~」
ヴィタリアは不機嫌そうに剣の呪文を確認した。
— 「重要なのは、この『研究者』たちが石のひび割れをいちいち見たりしないってこと。私たちは乳母じゃないんだから。」
リネアは考え込むように炎を見つめた。
—「ここは嫌だ。空気さえ…死んでいる。」
その時、リネアは小川で体を洗おうと立ち上がったが、荷車の後ろを振り返ると、ダレクの姿に気づいた。
二人は崩れかけたアーチの影に立っていた。ダレクはデニサルにあの古びた本を渡していた。二人の会話は静かだったが、二人の表情は、これがただの雑談ではないことをはっきりと示していた。
—「本当に?」デニサルは本をマントに隠しながら尋ねた。
—「いや。でも他に選択肢はないんだ。」ダレクは答えた。
二人は握手を交わし、デニサルとアイコは影の中へと消えていった。ダレクは拳を握りしめたまま、立ったままだった。
リネアは、自分の正体を明かすことなく、火のそばに戻った…しかし、一言も発しなかった。ダレクはすでにそこに座って、無造作にリンゴの皮をむいていた。
—「何だ、僕が逃げたんじゃないかと心配していたのか?」彼はニヤリと笑った。
シオリは目を細めた。
「もしそんなことをしようとしたら、とっくの昔に木から逆さまにぶら下がっていただろうに」
ヴィタリアは鼻を鳴らしたが、彼の視線は警戒に満ちていた。
リネアは黙っていた。彼女はダレクのあの表情を見た――彼女が本を渡した時の。彼が姿を消す前にしていたのと同じ表情だ。
しかし今、彼が笑いながらシオリをからかっている時…
*「ダレク、君は一体誰なんだ?」*
一方、遺跡は静まり返っていた。
しかし、それも長くは続かなかった。
時間はゆっくりと流れていた。一行が遺跡へ向かうまではまだ数時間残っていた。ヴィタリアはその隙を狙って、カートの中を覗き込んだ――装備を確認するためだ。
中に入ると、彼の視線はすぐにベッドに注がれた――まさに朝、ダレクが「修理」したはずのベッドだった。
「変だな…」と彼は呟きながら、木の板を見つめた。
修理の跡はどこにも見当たらなかった。打ちたての釘も、樹脂の垂れも、削りかすさえも。まるで誰も触っていないかのようだった。
「まあ、仕方ないな…」ヴィタリーはベッドの端にどっしりと腰を下ろした。
ガリッ。
木が割れ、彼は割れた板の間に落ちた。
「ちくしょう!」
扉の向こうから、シオリの静かな笑い声が聞こえた。中を覗くと、ベッドの残骸に腰まで浸かっているヴィタリーの姿が見え、思わず微笑んでしまった。
「まあ、勇者様、そういうことか」
しかし、シオリの視線は修理の跡がないことに向けられ、笑いは消えた。
「でも、彼は直したって言ってたよ…」
木の罠から抜け出したヴィタリーは、後頭部を掻いただけだった。
「おいおい…きっと秘密を装っていただけだろう。今朝は急いでいたんだ。」
しかし、彼の声には自信が感じられなかった。
詩織は黙っていた。
「彼を信じますか?」ヴィタリが彼の武器を確認しに行った後、詩織はリネアに尋ねた。
リネアは唇を噛み締めた。
「彼には嘘をつく理由があると思う。でも、それは…」
彼女は言い終えなかった。
一方、ダレクは2本のワインを手に暖炉のそばに戻ってきた。
「誰か生ビールを注文した?」
彼の笑顔は相変わらず屈託のないものだった。
しかし、今は誰も笑っていなかった。
ベッドは壊れた。そして、嘘も崩れた。
詩織は、ダレクが荷馬車の屋根に横たわり、古い本に夢中になっていることに気づいた。普段は屈託のない彼の顔は、少し眉をひそめ、黄ばんだページを丁寧にめくっていた。
彼女は静かに忍び寄り、突然彼の胸に倒れ込み、腕を彼の首に絡ませた。
「ここで、どんなつまらない文字を勉強しているのかしら?」彼女はページに鼻を突っ込みながら囁いた。
ダレクはひるまなかった。吸血鬼の沈黙がなくても、彼女が近づいてくるのを感じ取ったようだった。
「ほら、見て」彼は優しく、ほとんど優しいように線に沿って指を動かした。「全部そこに書いてあるよ。」
シオリは目を細めた。
「その文字、知らないわ。」
「おバカさん」彼はニヤリと笑い、手を伸ばして彼女の頭を撫でた。「読んであげようか?」
「うん…」
彼女はより心地よく身を寄せ、彼に寄り添った。ダレクは「読み始めた」。というか、優しい魔法使いと魔法の森、魔法の宝物についての童話を即興で創作し始めたのだ。
しかし、彼の目は別の線を滑らせ、唇は全く違う言葉を囁いた。
言葉は実際に書かれていた。
*「*文字が判読不能*となり、影が輪に収まった時、三つの物体を集めなければならない…そうして初めて、*判読不能*となった言葉が完成する…」*
ページはダレクの指の下でわずかに震えた。まるで本自体が秘密を明かすことを恐れているかのように。
シオリはダレクの架空の物語に耳を傾け、彼の襟首を軽く噛みながら、今まさに全てを変える可能性のある古代の儀式について読んでいることにすら気づいていなかった。
「…そして、賢い魔術師は誰にも見つからないように秘密を隠した」ダレクはそう言って、本をバタンと閉じた。
「私たち以外?」シオリは冗談めかして尋ね、彼の頬にキスをした。
彼は笑ったが、その目に喜びはなかった。ただ、言葉にできない何かの影がかすかに浮かんでいた。
—「よし、準備の時間だ。もうすぐ出発する。」
彼は荷馬車から飛び降り、本をリュックサックに詰め込んだ。詩織は座ったまま、彼が去っていくのを見守っていた。
*「なんて甘い嘘をつくんだ…でも、どうして?」*
そして遺跡の奥深くで、何かが動き出した。
まるで儀式がすでに始まっていることを察したかのようだった。
部隊はゆっくりと古代都市の奥深くへと進み、ひび割れた舗道には埃と靴跡だけが残った。太陽は真上にあったが、その光は、忘れ去られた時代の霞のように遺跡を覆う厚い霧のベールをほとんど突き抜けていなかった。
リネアは前を歩き、エルフの耳を時折ぴくぴくさせ、あらゆる物音を捉えていた。しかし、辺りは静かだった。静かすぎるほどに。風さえもこの場所の平和を乱すのを恐れているようで、時折、ぼろぼろになったぼろぼろの旗を揺らすだけだった。
ヴィタリアは研究者の隣を歩いていた。みすぼらしい外套を羽織った老人で、時折立ち止まってはぼろぼろの日記帳に何かを書き込んでいた。
-「ここに下層への入り口があるはずだ…」科学者は地図に指を走らせながら呟いた。
-「あそこはただの石積みよ」ヴィタリアは瓦礫を指差しながら冷淡に言った。
-「ええ、でも記録によるとここに通路があったはずよ!あるはずよ!」
ヴィタリアはため息をつき、ダレクをちらりと見ながら歩き続けた。
彼は少し距離を置き、壁やアーチ、崩れかけた彫像を視線でなぞった。まるで何かを探しているか、あるいは思い出しているかのように。
-「おい、ダー、そこで何を見ているんだ?」
ダレクは深い考えから引き戻されたかのように身震いし、すぐにいつもの笑みを浮かべた。
—「ああ、本当に美しい。この遺跡はどれくらい古いんだろう?」
—「たぶん5000年くらい」とヴィタリアは呟いた。
—「まさにそれについて話していたのよ。ここにどれだけの物が転がっているか、想像できる?」
ヴィタリアはくすくす笑ったが、彼の頭の中ではすでに考えが巡っていた。「まるで以前ここに来たことがあるみたいね…」
でも、声に出して言う?
「なんて言えばいいんだ?『おい、お前は頭がおかしいんじゃないか?何を隠しているんだ?』って。馬鹿野郎」
だから彼は黙っていた。
シオリは皆の後ろを歩き、赤い目でダレクの一挙手一投足を注意深く見守っていた。彼の奇妙な行動にも気づいていたが、まだ表には出さなかった。
彼らはゆっくりと歩いた。とてもゆっくりと。
一歩ごとに機材のきしむ音が聞こえ、時折会話が交わされ、研究者が柱の断片をスケッチしたり、通路の幅を測ったりする間、彼らは何度も立ち止まった。
リーニャは移動中に居眠りをしないよう、すでに壁のひび割れを数え始めていた。
ヴィタリアは自分のブーツに目をやった。縫い目にどれだけの埃が入り込んでいるのだろう?
ダレクは遺跡を観察し続け、指を時折壁に沿ってなぞり、まるで他の人たちが見ていない何かを読み取ろうとしているかのようだった。
シオリはそれに気づいたが、何も言わなかった。
半分崩れかけたアーチを通り過ぎたとき、ダレクは突然立ち止まった。
-「ここは左に曲がらないといけない。」
-「地図によると、まっすぐな道だ」と研究者は反論した。
-「あそこに通行止めがある。そしてここは…」ダレクは壁の間の狭い通路を指差した。-「要するに。」
ヴィタリアは眉をひそめた。
-「どうしてわかるの?」
-「論理だよ。ほら、崩れ落ちているところがあって、ここに通路がある。そうだろ?」
そして確かに、ダレクが指差した場所には、はっきりとした道があった。
でも、どうして彼はそれを知ったのだろう?
ヴィタリアは黙っていた。
シオリは唇を噛んだ。
リネアは二人と視線を交わしただけだった。
そして二人は歩き続けた。
何も起こらなかった。
全く何も。
罠も、怪物も、奇妙な音さえも。
ただ埃と静寂、そしてダレクが自分の道を知っている以上に詳しいという予感だけが残った。
しかし、誰もそのことを口にしようとはしなかった。
もしこれが単なる偶然だったら?
それとも違うのだろうか?
そして遺跡は静まり返り、秘密を守った。
今のところは。
キャラバンはゆっくりとキャンプへと戻っていった。遺跡は彼らを手放そうとしないかのように残していった。空気は何世紀にもわたる埃で重く、足元には古代の舗装の破片が軋む音を立てていた。
リネアは荷物の重みで少し猫背になりながら歩いた。普段はどんな音にも敏感な彼女の耳も、今はただ鈍くぴくぴくと動いているだけだった。この終わりのない沈黙に、耳さえも疲れ果てていた。
ヴィタリは研究者の隣を歩いた。彼はようやく好奇心を満たしたようで、今はただ火と温かい食事の元へ戻ることを急いでいるだけだった。研究者は時折よろめいたが、ヴィタリは支えることさえしなかった。彼はただ歩き続け、ダレクの背中を見つめていた。不思議なことに、ダレクは…普通に振舞っていた。
あまりにも普通に。
やがて…に近づいていく、あの奇妙な意識の片鱗も…
遺跡へ向かう途中で感じたあの奇妙な意識は、微塵も感じられなかった。
壁をちらりと見ることも、何かを思い出したかのように歩みを緩めることもなかった。
*「もしかしたら、気のせい?」*
しかし、ヴィタリアは分かっていた。彼の気のせいではないと。
シオリは最後尾を歩き、赤い瞳を時折ダレクの背中に走らせた。ヴィタリアと同じものに気づいたが、彼と同じように沈黙していた。
一歩。
もう一歩。
ベルトのきしみ音。
石の上で外套が擦れる音。
静寂。
笑い声も、おしゃべりもなかった。ただ疲労感と埃が肺に詰まるだけだった。
リネアはため息をつき、リュックサックの背もたれを直し、壁のひび割れを数えながら歩き続けた。今度は逆順に。
ヴィタリアは自分のブーツに目をやった。この埃はあとどれくらいだろう?
ダレクは小声で下品な歌を口ずさみながら前を歩いていたが、その歌さえも生気がなく、まるで見せかけのように聞こえた。
シオリは唇を噛んだが、何も言わなかった。
キャンプから少し離れたところで、ダレクは突然立ち止まった。
「何かあったの?」ヴィタリは剣の柄を警戒しながら尋ねた。
「いや、ただ…ブーツに石が入ってしまったんだ」ダレクはかがみ込み、靴を直すふりをして、すぐに体を起こした。「わかった、行こう」
しかし、石は入っていなかった。
ヴィタリとシオリは顔を見合わせたが、何も言わなかった。
リネアはため息をついて歩き続けた。
ようやくキャンプに着いたが、誰も安堵のため息をつかなかった。
彼らはただ散り散りになった。ある者は火のそばへ、ある者は荷車へと。
ダレクはまるで彼らの視線に不快感を覚えたかのように、すぐにどこかへ姿を消した。
ヴィタリアは火のそばに座り、炎を見つめていた。
シオリは彼女の隣に腰を下ろしたが、何も言わなかった。
リネアは目を閉じ、何かがおかしいということを考えないようにした。
そして、彼らの背後の廃墟は静まり返っていた。
しかし、それも長くは続かなかった。
ダレクは背中から小さなベルベットの箱をゆっくりと取り出した。中には指輪が入っていた。濃いサファイアを星のような小さなダイヤモンドが取り囲んだ、上品な指輪だった。
-「彼女にプロポーズしたい。本当に。」
ヴィタリアは凍りついた。
-「でも…もう…」
-「いいえ。」ダレクは箱を閉じた。「前に言ったのは嘘よ。私たちは旅の初日に出会ったのよ。私が酒場で数時間『姿を消した』のを覚えてる?」
-「トランプをしていたって言ったでしょ!」
-「ああ、『トランプ』よ。」口角が少し上がった。「ただ…彼女は男爵で、僕は取るに足らない人間だ。彼女の家族に知られないように、負けて『奴隷』になったという馬鹿げた話をでっち上げたんだ。もし彼女が僕みたいな人間と関わっていたと知ったら…」彼は言い終えなかったが、ヴィタリアは理解した。
—「そして、ずっと…」
—「そうだ。この『失踪』の全て、僕は彼女と一緒だった。そして、これのために貯金を始めたんだ」彼は箱を振った。「デセニは盗賊団から略奪品を売るのを手伝ったんだ。そうだ、僕たちはただ彼らを奪っただけじゃない。倉庫まで奪ったんだ。金はそこから来たんだ」
ヴィタリアは黙っていた。それから彼は絞り出した。
—「どうして教えてくれなかったんだ?」
ダレクは彼の目をまっすぐに見つめた。
—「君はまるで信号弾みたいだ。リネアに話したら、シオリに丸呑みされる。だから、僕は全てをきちんとやりたかったんだ。」
沈黙。遠くでフクロウが鳴いていた。
ヴィタリアは深呼吸をした。
—「君は完全に馬鹿だ。」
—「分かってる。」
—「でも、あんな演技をして結婚しないなら、自分で絞めてやる。」
ダレクは静かに、しかし心から笑った。指輪の入った箱は彼のコートの内ポケットに消えた。
—「よく聞いて、ヴィタリア。ショーはもうすぐ始まる。」
彼らはキャンプの方を向いた。遠くの火のそばで、シオリがリネアに何か話していた。その笑い声が夜空に響いていた。ダレクは微笑んだ。ヴィタリアが長年見てきた、滅多にない、本物の笑顔だった。
そしてその瞬間、すべてが明らかになった。あらゆる秘密にもかかわらず、愚かな冒険にもかかわらず、差し迫った危険にもかかわらず…
それは正しかった。