はい、遺跡です...でも絶対にダメです...
夜明けとともに目覚めたダレクとシオリは、友人たちの様子を見に行くことにした。馬車のドアを慎重にノックすると、ぶつぶつ言う声とベッドのきしむ音が聞こえた。
「まあまあ…」ダレクはドアを開け、バタンと閉めた。シオリの目を手で覆った。「あの変態どもを見ないで!」
ドアの向こうから、リネアの憤慨した声が聞こえた。
「私たちはそんなことしてない!」
「ああ、そうだな」ダレクは鼻で笑いながら、既にドアを閉めた。「出発の1時間前だ。ベッドは無事でいいはずだ。」
シオリは彼の手にしがみつきながら、くすくす笑った。
「まあ、少なくとも今日は誰かが楽しんだみたいね~」
ヴィタリーとリネアがようやく野外炊事場に姿を現すと、嘲笑の視線が浴びせられた。
「何だ、ベッドが持ちこたえなかったのか?」ダレクは片眉を上げて、スープを注いだ。
— それは…事故だったのよ、とヴィタリアは呟き、視線を避けた。
— ええ、「事故」よ、とシオリは優しく母音を引いた。— 特にリネアが…
— 黙れ!— エルフは真っ赤なトマトのように両手で顔を覆い、耳は飛び散りそうなほど激しく動いた。
ダレクは突然飛び上がった。
— しまった、シオリへのプレゼントを馬車に忘れてきた!
— プレゼント?— 吸血鬼は満面の笑みを浮かべた。
— ここに座って、退屈しないでね〜
馬車に戻ると、ダレクはまずベッドをチェックした。
— ふぅ、彼らが壊して、私のが壊さなくてよかった…
そして彼の視線は、床に置かれた奇妙な本に落ちた。小さく、すり切れた革装丁で、表紙には色褪せた記号が書かれていた。
- 何だって…
彼はそれを開けて凍りついた。
それは日記だった。とても古い日記で、もはや存在しない世界について書かれていた。
*「もしタル=ガラクの遺跡が目覚めれば、封印は解け、過去の影が解き放たれるだろう…」*
ダレクは時間を忘れて、ページをめくりながら読みふけった。
- どこにいたんだ? - ヴィタリーはようやく戻ってきた彼に眉をひそめた。
- ああ、そうだな…ベッドの修理はよくやったな。 - ダレクは後頭部を掻いた。 - 座ったばかりなのに、すぐに崩れ落ちてしまった。
- 時間も道具もほとんどなかった!
- ああ、ああ、もちろんだ。 - ダレクは手を振り、(実は3日前に買った)包みをシオリに突きつけた。
吸血鬼は嬉しそうに包みを開けた。中にはコウモリの形をした彫刻が施された銀のペンダントが入っていた。
「ここにいる吸血鬼の主が誰なのか、いつも覚えておくようにね」ダレクはニヤリと笑った。
シオリはすぐにそれをかぶり、満足げな表情で彼の首筋に噛みついた。
キャラバンのまとめ役がテーブルに近づいた。
「おい、ヴィタリア。キャラバンの最後尾の警備員が足りないんだ。誰か割り当ててくれないか?」
ヴィタリアは考え込んだが、ダレクはすでに立ち上がっていた。
「私が行くわ。荷車を運転するのはあなた以外にいないし、リネアとシオリは休んでいいわよ。」
「ただ、そこで迷子にならないようにね」ヴィタリアはニヤリと笑った。「さもないと、あなたを行かせたせいでシオリに食べられてしまうわよ。」
「ああ、どうせ食べちゃうわよ」吸血鬼は唇を舐めた。
ダレクはただ笑うと、ポケットに古びた日記を握りしめたまま、キャラバンの最後尾へと向かった。
「タル=ガラ…何を隠しているんだ?」 *
しかし、彼は何もなかったかのように、陽気な口笛を吹いただけだった。
そして、彼を見ていたシオリは目を細めた。
*「ダルス、出発を急ぎすぎたな…」
キャラバンがタルガラの遺跡にほぼ到着したその時、空から鋭い叫び声が聞こえた。鷲の叫び声と馬のいななきを合わせたような音だった。
「上からだ!」騎士の一人が叫んだが、遅すぎた。
雲の向こうから、クルヴィアニ族が急降下してきた。鷲と馬の怪物のような混血種で、二本の筋肉質な腕には爪が生えていた。くちばしは磨かれた鋼鉄のように輝き、荷車のように広い翼は砂塵の旋風を巻き起こした。
怪物の一匹が車列に激突し、補給車を倒した。騎士たちは突撃して戦場に飛び込んだが、クルーヴィアンは巧みに身をかわし、爪の生えた前足で騎士の一人を襲った。
「クソったれのチンピラめ!」ヴィタリーの声が轟いた。
空から稲妻が落ちた。まばゆいばかりの白い稲妻は、まるでトールの怒りそのもののようだった。クルーヴィアンは吠え、羽根から煙を噴き出したが、怪物は倒れることはなく、むしろ激怒を増すばかりだった。
ヴィタリーは勢いを失わず、片手に剣を持ち、もう片方の手には既に新たな印を描きながら突進した。
「クソったれ!」
地面から石壁が突き上がり、無防備な商人に剣を振りかざしていたもう一人のクルーヴィアンの行く手を阻んだ。怪物は壁に激突したが、すぐに爪で激しく突き始めた。
「クソったれのチンコめ!」ヴィタリーは鋭く手を振り回した。
空中に氷の刃が出現し、三体目の怪物の側面を貫いた。怪物は咆哮を上げたものの、青い血を流しながらも諦めなかった。
騎士たちは混乱に乗じて、傷ついた怪物たちを取り囲んだ。雷に焼かれたクリュヴィアンの一人は逃げようとしたが、ヴィタリーは彼に隙を与えなかった。
- クソッ、クソッ!- もう一発の雷撃、今度は頭に。
怪物は断末魔の苦しみに痙攣しながら崩れ落ちた。
石壁を突き破った二体目のクリュヴィアンがヴィタリーに襲いかかったが、ヴィタリーは巧みに身をかわし、背後から騎士が剣を背中に突き刺した。
氷の刃で血を流した三体目の怪物は隠れようとしたが、それまで戦いを見守っていたシオリが突然姿を消し、怪物の背中に現れた。
「飛んでいけ~」彼女は囁き、彼の首筋に牙を突き立てた。
クルヴィアンはゼーゼーと息を切らし、倒れて死んだ。
「どんな呪文を…」「リネア、何が起こっているのか見ていたヴィタリアは、手のひらで顔を覆った。
「でも、効くわ!」ヴィタリアは戦場を見渡し、身を震わせた。
後方を守っていたダレクが、ポケットから飛び出した日記をちらりと見て、一行に近づいた。
「遺跡には他にどんな怪物が待ち構えているんだろう…」
シオリは血まみれの唇を舐めながら、ニヤリと笑った。
「美味しいといいんだけど…」
キャラバンはクルヴィアンの死体を後に残し、前進した。しかし、皆が理解していた。これはまだ始まりに過ぎなかった。
キャラバンは既に地平線にタル=ガラクの遺跡が見えていたが、目的地との間には、巨大なグリズリーと巨大なクモのハイブリッドであるスパイダーベアが群がる野原が広がっていた。毛むくじゃらの8本の脚は恐ろしい速さで動き、牙からは毒がにじみ出ていた。
最初の3体のモンスターが襲い掛かると、騎士たちは盾を固めた。
- 「盾を合わせろ!突破させるな!」衛兵隊長は叫んだが、熊の一頭が前足を振り上げ、3人の騎士はまるでぬいぐるみのように吹き飛ばされた。
リネアは即座に反応した。
- 「氷で凍らせろ!」
彼女の魔法は一番近くのモンスターの前脚に命中し、カリカリの皮で覆われた。モンスターは咆哮を上げ、バランスを崩した。
ヴィタリアは間髪入れずに突進した。
- 「このクソ野郎!」
地面から石壁が立ち上がり、熊一頭が群れから切り離された。
両手斧を持ったオークの傭兵が別のモンスターの側面に激突したが、モンスターは向きを変えて牙を彼の肩に突き刺した。血が噴水のように噴き出した。
- 「忌々しい生き物!」ドワーフの魔術師は唸り声を上げ、獣の顔に火の玉を叩きつけた。毛皮は燃え上がったが、熊はますます激しく吠えるだけだった。
シオリは影に溶け込み、傷ついた怪物の背中に現れた。
「寝なさい、可愛い子ちゃん」と彼女は囁き、牙を熊の首筋に突き立てた。
吸血鬼の毒はほぼ瞬時に効き始め、熊はゼイゼイと息を切らして倒れた。
蜘蛛熊のうち、一番大きな一頭が列を突き破り、荷車に向かって突進した。
「クソッタレ!クソッタレ!」ヴィタリアは咆哮した。
雷が怪物の頭部を直撃し、視力を奪った。
リネアはその隙を突いた。
「氷の刃――心臓に突き刺さる!」
彼女の魔法は獣の胸を貫き、獣は崩れ落ち、地面を青い炎で覆い尽くした。
合同部隊は残りのモンスターを素早く処理した。
- エルフの弓兵がモンスターの目を射抜いた。
- ドワーフが炎と鋼鉄でとどめを刺した。
- 騎士がまだ抵抗する者を攻撃した。
最後の熊が倒れると、隊商は安堵のため息をついた。
ヴィタリアは額の汗を拭いながら、野原を見渡した。
- 「まあ、少なくともクルヴィアニじゃないし…こいつらは飛ばないから。」
シオリは血まみれの指を舐めながら、くすくす笑った。
- 「空飛ぶやつも試してみたいわ~。」
リネアは首を横に振ったが、口角に微笑みが浮かんだ。
後方を監視していたダレクが一行に近づいた。彼の目にはかすかな不安が浮かんでいた。
「遺跡は近い…あそこならもっと楽しめると思うよ。」
キャラバンは前進した。しかし、皆、本当の戦いはまだこれからだと理解していた。
キャラバンが古代のルーン文字で壁が覆われた狭い峡谷に入ると、影は濃くなった。低い唸り声が空気を満たし、次の瞬間、岩陰からウルフハウンドの群れが飛び出した。背中に蛇の頭を突き出した巨大な狼たちが、獲物を仕留めるのを待ち構え、シューシューと音を立て、身もだえしていた。
しかし、彼らはただの動物ではなかった。
群れのリーダーが前に出た。馬ほどの大きさの、熟練した怪物で、2匹ではなく4匹の蛇を連れ、その目は毒々しい緑色の光を放っていた。彼は口をむき出しにして、無言の命令を発した。「引き裂け!」
そして群れは突撃した。
騎士たちは盾を閉じたが、最初のウルフハウンドが戦列を突破し、鎧に牙を突き立てた。背中の蛇の一匹が、すぐ近くにいた衛兵の顔に毒を注入した。衛兵は悲鳴を上げて口から泡を吹いて倒れた。
リネアは両手を振り回した。
-「氷の牙――引き裂け!」
何百もの氷の針が近くの怪物を貫いたが、リーダーは毛皮を揺らして凍りを払うだけで済んだ。
ヴィタリーは剣を閃かせながら飛び出した。
-「クソッタレのフクリル――氷の槍だ!」
地面から巨大な氷の棘が立ち上がり、ウルフハウンド一匹を貫いた。しかし、背中の蛇たちは死んでもシューシューと音を立て続けた。
シオリは影に溶け込み、リーダーの背中に姿を現した。
-「もっと仲良くなろうね~」
彼女の牙は怪物の首に食い込んだが、蛇たちはすぐに反撃してきた。彼女はかろうじて避けたが、それでも一匹が彼女の腕に噛みついた。
- 「ああ、哀れな毒蛇め!」吸血鬼は息を切らしながら、蛇の頭を根こそぎ引き裂いた。
リーダーは苦痛に咆哮を上げ、リネアに襲いかかった。彼女はかろうじて氷の障壁を召喚したが、怪物はそれを一撃で粉砕した。
ヴィタリーは助けに駆け寄った。
- 「このクソ女め!雷の刃だ!」
彼の剣は稲妻に照らされ、リーダーの蛇の一匹を真っ二つに切り裂いた。怪物は後ずさりしたが、諦めなかった。残りの蛇たちは酸を吐き出した。
リネアは転がって逃げたが、その飛沫は彼女のマントを焼き尽くした。
- 「ちくしょう! それも酸だって!?」
既に噛み傷を治していたシオリは、爪でリーダーの目を突き刺した。
- 「盲目の王は死んだ王だ!」
怪物は吠え、視界を奪い、苦痛に身をよじり始めた。
味方は残りのウルフハウンドに対処した。
- ドワーフは火炎手榴弾を投げ、怪物を内側から爆発させた。
- オークは斧で蛇の頭を切り落とし、地面に毒を撒き散らした。
- エルフの弓兵はウルフハウンドの口を射抜いた。
噛みつかせないように。
リーダーが倒れて死ぬと、他の動物たちは逃げ出した。
ヴィタリアは息を切らしながら戦場を見回した。
-「まあ…少なくともドラゴンじゃないし。」
リネヤはアドレナリンでまだ体が震えながら、焦げた外套を直した。
-「蛇は大嫌い。狼も。特に蛇狼は。」
シオリは爪についた血を舐め、顔をしかめた。
-「腐った狐の味がする。でも、少しスパイスが効いてるわね~。」
どこか後方で、ダレクがそれを見ていた。彼の指は思わず古代の日記を握りしめていた。
-「遺跡は近い…そして、あの生き物たちはただの番人だ。」
キャラバンは進んだ。
しかし、誰もが最悪の事態はまだこれからだと知っていた。
キャラバンは古代遺跡の影の中へと入った。ひび割れたフレスコ画で覆われた巨大な柱が、忘れ去られた神の骨のように空へとそびえ立った。魔術師たちは即座に防護の円を描き始め、大結界――闇を内部に封じ込める唯一のもの――の準備を始めた。
しかし、闇は待つことを拒んだ。
石の亀裂から、過去の影が這い出てきた――朽ちかけた鎧をまとい、青い炎で燃える目をした、半ば朽ちかけた戦士たち。何世紀もかけて錆びついた彼らの刃は、今もなお血に飢えていた。
「盾を前へ!魔術師たちを守れ!」
騎士たちは隊列を固めたが、死者たちは鋼鉄を恐れなかった。彼らは攻撃をくぐり抜け、骨は再び繋がり、眼窩の中の青い光はより激しく燃え上がった。
リネアは両手を上げた。
「氷よ、彼らの骨を繋ぎ止めろ!」
彼女の魔法は前方のアンデッドを拘束したが、彼らは氷を内側から砕き、速度を緩めるだけだった。
ヴィタリアは剣を片手に持ち、もう片方の手で既に空中に合図を描いていた。
- 「クソ野郎! 石の牙だ!」
鋭い鍾乳石が地面から噴き出し、アンデッドを貫いたが、彼らは石に突き刺さっていても這い続けた。
シオリは影の間を駆け抜け、爪で腐った兜を引き裂いたが、仕留めるたびに、亀裂から新たなアンデッドが二つ這い出てきた。
- 「無限だ!」錆びた刃の一撃から飛び退きながら、彼女は叫んだ。
それまで後方を守っていたダレクは、本能的にギターを取り出した ― 理由は分からなかったが。
しかし、弦が勝手に振動した。
- 「何だって…?」
ギターが眩しい光を放ち、彼の手には剣が現れた。長く、弦のような刃と、様式化された首の形をした鍔がついていた。
「あんた…いつもそんなことできるの!?」ヴィタリアは叫びながら、また一人の死体を切りつけた。
「もうヤバイ!」ダレクが剣を振り下ろし、その剣は一度に三体の骸骨を貫き、粉々に砕け散った。
リネアは息を呑んだ。
「遺物だ!古代の!」
シオリはただ貪欲な笑みを浮かべた。
「結局、頭に穴が空いただけの愚か者じゃないんだな~」
死体たちは輪を縮めていたが、魔術師たちは既に儀式を終えようとしていた。
「もう少しだけ!」上級魔術師は緊張で震える手で叫んだ。
ヴィタリアは雷撃で二体の骸骨を倒した。
「クソったれ!雷鳴だ!」
リネアは死者の足元の地面を凍らせ、シオリはその隙を突いて竜巻のように彼らの間をすり抜けていった。
ダレクは新しい剣を手に、その渦中に飛び込んだ。
-「さあ、拳を振り上げろ!別れの歌を歌おうじゃないか!」
彼の剣は一撃ごとに和音のように響き、一振りごとに影は塵と化した。
遺跡に光が走った。魔術師たちが入り口を封印したのだ。
死者たちは凍りつき、青い光は消え、糸を切られた人形のように崩れ落ちた。
静寂。
ダレクは剣を見つめた。すると、それは再びギターになった。
-「なんてことだ」ヴィタリアは絞り出した。
リネアは近づき、慎重に楽器に触れた。
-「これ…吟遊詩人の剣!伝説の遺物だ!」
シオリは目を細めた。
-「いつから、気づかないうちに持ち歩いていたんだ?」
ダレクはニヤリと笑った。
-「ルナ、それが本当の魔法だよ。不良でさえ選ばれし者になれるってことだよ。」
彼らの前には廃墟が広がっていた。そして、彼らが抱えてきた秘密もあった。