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別世界のゴプニク(Быдло в другом мире)  作者: 1922in1922
英雄たちの冒険が始まる
15/26

森はより深くなり、遺跡が近づいてきました。

いつものように、リネアが先に目を覚ました。太陽の光が馬車の厚いカーテンをかすかに差し込み、あたり一面を柔らかな金色の光で照らしていた。彼女はそっと体を起こし、眠っているヴィタリーを見つめた。彼は仰向けに寝ていて、片手はまだ彼女の腰に置かれていた。まるで眠っている間も、離れようとしないようだった。


「なんて重いの…」――彼女は思ったが、苛立ちはなかった。


そっと体から体を離すと、リネアはブーツを履き、ドレスをまっすぐにし、一瞬ためらった後、ヴィタリーの脇腹を軽く突いた。


――起きろ。もう太陽は高い。


彼はうめき声をあげ、手で目を覆ったが、すぐに目を開けずにニヤリと笑った。


――もし私が病気で起き上がれないと言ったら?


――もしそうしたら、バケツ一杯の川水をぶっかけてやるわ。


――残酷ね。


彼は起き上がり、関節がポキポキ鳴るほどに体を伸ばし、突然彼女に手を伸ばして腰を抱きしめた。


「もし私がこうしたらどうなるの?」


リネアは鼻を鳴らしたが、彼を押しのけなかった。


「子供時代。そろそろ身支度をしよう。」


二人はダレクとシオリを寝かせたまま、カートから降りた。朝の空気は新鮮で、ハーブの香りが漂っていた。水辺のすぐそばで、リネアはブーツを脱ぎ、冷たい水に足を浸し、目を閉じた。


「美しいわ」とヴィタリは彼女の隣に座った。


「ええ…」


彼女は彼が何について話しているのか、はっきりとは言わなかった。風景のことなのか、朝のことなのか、それとも彼女自身のことなのか。しかし、彼の指が彼女の指に絡みつくと、リネアは反対しなかった。


二人が戻ってくる頃には、キャンプはすでに活気に満ちていた。ダレクとシオリはようやく荷馬車から這い出た。ダレクの髪は乱れ、首には痣があり、シオリは満足げな猫のような笑みを浮かべていた。


「すごくいい感じね」とヴィタリアが言った。


「黙れ」とダレクは呟いたが、悪意はなかった。


朝食はシンプルだがボリュームたっぷりだった。チーズを挟んだ揚げパン、燻製肉、甘いベリー。二人が食事をしていると、キャラバンのまとめ役が近づいてきた。鎖かたびらを身につけ、厳しい表情をしたずんぐりとした男だった。


「今日から、管理体制が強化されました」と彼は告げた。「各荷馬車に警備が敷かれています。護衛なしでは一歩も横に寄ることはできません。」


「何かあったのですか?」ヴィタリアは眉をひそめた。


「遺跡に近づくほど、襲撃の頻度が増すんです。昨夜は隣のキャラバンが襲撃され、3人が惨殺されました。」


シオリはふざけて唇を噛んだ。


「ああ、なんてこったい」


ダレクはため息をついた。


- これが何を意味するのか、分かっているのか?


- これからもっと流血沙汰になるのか?


- …忘れろ。


キャラバンは出発した。今では本当に警備員が増えていた。鎧をまとった騎士たちが荷車の横を歩き、周囲の丘や森を絶えず見渡していた。


- 正直に言うと、ストレスが溜まるほどだ。 - ダレクは座席に深く腰掛けながら呟いた。 - まるで既に檻の中にいるみたいだ。


- 途中で食べられたいのか? - リネアが尋ねた。


- まあ、可愛い怪物なら…


シオリの目が捕食者のように光った。


- 腹が立つ。


- あなたは怪物なんかじゃない、あなたは…


- 私は?


- …危険で美しい女性?


- わかった、許してやる。


ヴィタリは首を横に振ったが、微笑んだ。


それは夕方近くになって起こった。


最初はキャラバンの先頭から悲鳴が聞こえただけだったが、それから金属音がした。


「右だ!」騎士の一人が叫んだ。


茂みから影が飛び出した。背が低く、乾いた血のような肌をしたゴブリンだ。


「少なくともオークではない」ダレクはため息をつき、短剣を掴んだ。


シオリはすでに姿を消していた。荷馬車の間を、真紅のドレスだけがちらりと光っていた。


リネアは氷を投げつけ、最初の襲撃者三人の足を縛った。ヴィタリが前に進み出て、剣を振りかざすと、ゴブリン一体が首を切られて倒れた。


戦闘は短かった。キャラバンの衛兵は素早く対処したが、全てが終わると、隊長は陰鬱な声で言った。


「偵察だった。主力部隊はどこか近くにいる。」 「それなら楽しい夜になりそうだな」とダレクは呟いた。


リネアはヴィタリを一瞥した。彼は剣の柄を握りしめ、冷たく集中した目でそこに立っていた。


「準備はいい?」と彼女は尋ねた。


「いつでも。」

二人の指は再び絡み合った。今度は危険を前にして。


そしてどこか先、丘の向こうに、古代遺跡が暗闇に包まれ、秘密と脅威に満ちていた。


夜は静かで、ほとんど平和だった。火がパチパチと音を立て、集まった人々の顔に影を落としていた。ヴィタリ、リネア、エルフの友人たち、そして思いがけず加わったシオリ。普段はリネアの友人たちは、ヴィタリとの関係をからかう機会を逃さないのだが、今日は冗談が弱々しく聞こえた。誰もが空気の緊張を感じていたのだ。


普段は陽気で気楽なシオリだが、今日は様子がおかしかった。彼女の赤い瞳は、何かを探しているかのように、落ち着きなく暗闇の中を動いていた。


「ダレクはどこ?」と彼女は誰かの話を遮って突然尋ねた。


「また逃げたの?」エルフの少女の一人がニヤリと笑った。


「いいえ、今回は逃げてはいません…でも、近くにはいません。」


ヴィタリアは眉をひそめた。


「私たちはあちらを見て、あなたはそちら?」


シオリは頷き、ダレクを探すために火から離れた。


ダレクは古い樫の木の陰に座っていた。いつもは大きな声だったが、今は静かで…真剣な声だった。彼の隣には、あのデニサル・セニロフ、背が高く冷たい目をしたエルフがいた。そしてデニサルの隣には、アイコという奇妙な生き物がいた。男の子か女の子かはわからないが、アイコは影のようにエルフにしがみついていた。


シオリは唇に指を当て、そっと近づいた。聞こえてきた言葉に血が凍りついた。


「…もし捕まったら、俺がお前を突き出す。さもなくば背後から刺す」ダレクは言った。その声には冗談もいつもの自慢話もなかった。


「心配するな、ダー。俺も同じだ」デニサルは冷たく答えた。


シオリは後ずさりした。彼女は近寄らず、ヴィタリアとリネアの元へ素早く退いた。


「どうしたんだ、シオリ?そんなに心配そうに…」リネアは眉をひそめた。


「とにかく、ダレクが…と彼の『友達』が…デニサルが…何か変なことをしているのが聞こえたんだ。怖い。」


「どういう意味?」ヴィタリアは腕を組んだ。


「全部は聞こえなかったけど…」シオリが断片的に繰り返した。ヴィタリアはふと思い出した。


「しまった…ダレクが消える前から、あのデニサルと囁き合っていたのが見えた。近づくと、すぐに二人は黙ってしまった。」


「覚えてるわ」とリネアが付け加えた。「ダレクが川辺の黒衣の男に何かを手渡したの…消える前に。」


「それから、馬車が修理されていた時、デニサルとダレク、あと数人がいたの…でも、私たちが会ったのはダレクとデニサルだけで、アイコは後から現れたのよ」とヴィタリアは呟いた。


「それに、彼の『盗賊』の話は…あまりにも巧妙だったわ」シオリが呟いた。


「沈黙。」


「もし彼に質問を始めたら、彼は千通りもの説明をしてくるわ」とヴィタリアはため息をついた。


「そして、どれも真実ではないわ」とリネアが付け加えた。


「でも、無視するわけにはいかないわ」とシオリは拳を握りしめた。


「無視はしない。見守るわ」


ヴィタリアはダレクが座っている木の方を見た。


「彼は私にとって兄弟みたいなものよ。でも、もし彼が何か危険なことに巻き込まれたら…知らせないといけないの」


リネアはうなずいた。


「もしキャラバンを裏切ったら?」


「そうなったら…」とヴィタリアは歯を食いしばった。「そうなったら、彼を止めなければならないわ」


シオリは突然、緊張した、ほとんどヒステリックな笑みを浮かべた。


「もし逃げようとしたら、私が見つけ出すって分かってるかしら?どこにでもいるわ」


彼女の目に何か捕食的な光が走った。


彼らが戻ってくると、ダレクはすでに火のそばに座って、誰かとおしゃべりしながら笑っていた。いつものように、大声で、気楽に。


「おい、どこに行ってたんだ?」と、二人に気づいて彼は叫んだ。


「歩いてるのよ」とシオリは冷淡に答え、彼の隣に座り、すぐに猫のように彼に寄り添った。


「ああ、「歩いてる」」ヴィターレにウィンクした。


彼はただくすくすと笑って答えた。


しかし今、ダレクを見ると、三人とも彼をただの陽気な冒険者ではなく、監視が必要な男だと見ていた。


もし本当に何かを企んでいるなら…


…全てを失うことになるかもしれない。


一方、リネアはエルフの敏捷性を活かしてデニサルを監視していた。彼は影に隠れ、アイコ――この奇妙で性別のない美男(あるいは美女?)――は文字通り蛇のように彼に巻き付いていた。


「デス~どうしてそんなに冷たいの?」アイコは物憂げに彼の胸に指を這わせた。


「出て行け」。


「でも、私たちはパートナーなのよ~」


「仕事中よ。もうね」。


アイコは口を尖らせたが、立ち去らなかった。彼(彼女?)の手がデニサルのベルトへと滑り落ち、リネアは耳先まで赤らみ、慌てて後ずさりした。


*「ちくしょう、あれは…やりすぎだった。」*


一方、ヴィタリアはかつて路上で顔を合わせた老傭兵の一人に近づいた。


「おい、おじいさん。『もし捕まったら、お前を突き出すか、背中にナイフを突き刺す』ってどういう意味だ?」


傭兵は嗄れた声で笑った。


「それは古い決まり文句だ。危険が極めて危険な任務を遂行する前には必ずこう言うんだ。例えば、どちらかが死んだり捕まったりしても、もう一方はどんな犠牲を払ってでも最後までやり遂げる。たとえ裏切らざるを得なくても、目的が達成されるならね。」


「…わかった。」


*「ダレクとデニサルは、何か重大なことを準備しているのだな。」でも、何が?」*


シオリは、ダレクが正確にナイフを標的に投げつけ、笑いながら相手をからかうのを横で見ていた。外見上は穏やかそうに見えた。かすかな微笑み、リラックスした姿勢、指先で彼の髪のリボンを優しく撫でていた。しかし、内心は不安で胸が締め付けられていた。


シオリはダレクのことを、彼自身以上によく知っていた。彼がつく嘘、作り笑い、その全てを彼女は感じ取っていた。そして今、外見上は明るく見えても、彼は*緊張*していた。


*「お酒も飲まないし、いつもより騒がしくないね。」そして、誰かに聞かれるのを恐れているかのように、あのデニサルに囁くのね…」*


彼女の爪が彼の肩に軽く食い込んだ。


「ああ、ごめん、ダリウス」彼女は恥ずかしそうに言ったが、彼を放さなかった。


「大丈夫よ、もっと強く噛んで」彼は頭を向け、ウインクしたが、その目にはいつものいたずらっぽさはなかった。


彼女は何か冗談めかして囁くかのように彼の耳元に寄りかかったが、実際はただ彼の匂いを吸い込んでいた――煙、革、何か不穏で異質な匂い。


*「危険な匂いがするわ」それが怖いんです。」


ダレクがまた賭けに夢中になっていると、シオリは静かにカートへと移動した。そこには既にヴィタリアとリネアが待っていた。


3人がカートの後ろに集まったが、情報交換は…無駄に終わった。


- デニサルは氷のように冷たいが、このアイコは… - リネアは拳を握りしめた。- 彼(彼女)は二人の間に何かあるかのように振る舞う。しかし、デニサルは明らかに機嫌が悪そうだった。


「ダレクの合言葉は傭兵たちの暗号だってことが分かったの」とヴィタリーは言った。「彼らは何か危険なことを準備しているのよ。」


「それにダレクは…酒を飲まないの」シオリは唇を歪めた。「全然。一滴も。それが一番怪しいのよ。」


沈黙。


- つまり、次のようになります。


1. ダレクとデニサルは、ある危険なことで合意しました。


2. アイコはデニサルのところへ行きますが、断られます。


3. ダレクは急に酔いが覚めます。これは世界の終わりか、それとも彼が本当に事件に加担しているかのどちらかです。


- 事件の真相について、手がかりは全くありません。- リネアはため息をつきました。


- キャラバンを強盗するつもりかもしれませんね?- シオリが提案しました。


- いや、警備員が多すぎる。それにダレクは馬鹿ではありません。私たちが彼に何を与えるか分かっています。


- それからどうする?


ヴィタリアは拳を握りしめました。


- 一つの選択肢は、監視を続けることです。ただし、注意深く。もしダレクが私たちが知っていると疑ったら…


「彼は逃げるか、嘘をつきすぎて真実にたどり着けなくなるでしょう」とリネアは締めくくりました。


「彼は…以前とは違う」詩織は拳を握りしめた。「酒も飲まないし、浮気もしない。それに、誰も見ていないと思うと…目つきが全然違うの。


「どんな目?」


まるで、すでに決断を下し、それを恐れている男のように。


ヴィタリアは憂鬱そうに鼻梁をこすった。


「つまり、深刻なのね。」


「彼は私たちを裏切っているとは思わないわ。」とシオリは鋭く言った。「でも、彼は間違いなく危険なことに巻き込まれてしまった。もしかしたら、私たちを巻き込まないようにしているのかもしれない。」


「あるいは、私たちに邪魔されたくないの。」とリネアが付け加えた。


沈黙。


シオリは目を閉じ、昨日寝ている時にダレクが抱きしめてくれたことを思い出した。まるで連れ去られるのではないかと恐れているかのように、強く。


「彼には何も聞かないわ。何も言わないなら、何か理由があるってことね。」


「でも、ただ待っているわけにはいかないわ!」とリネアは息を呑んだ。


「私たちは待ってはいけない。」とヴィタリアは彼女の肩に手を置いた。 ―でも、プレッシャーをかけ始めると、彼は心を閉ざすか逃げ出すでしょう。だから、彼に*信頼*してもらう必要があるんです。そうすれば、事態が本当に悪化した時に、彼が私たちのところに来てくれるでしょう。


シオリは頷いた。


―つまり、計画はこうです。


―私は近くにいます。彼を監視しますが、プレッシャーはかけません。


―リネア、アイコに話をさせてください。彼は明らかにおしゃべりです。


―ヴィタリア、傭兵たちの間で何か「大きな出来事」の噂がないか調べてください。


―もし彼がもう大変な状況に陥っているなら?―リネアはささやいた。


シオリは牙をむいた。


―それなら、関係者全員を殺してやる。それから、私が直接行って、彼を始末してやる。


しかし、彼女の声には怒りはなかった。ただ恐怖だけがあった。


彼女が火のそばに戻ってきたとき、ダレクはすでにもう一回火を燃やし終えていた。彼女を見ると、彼は大きく微笑み、手を差し出した。


「会いたかった?」


「ああ、そうだな」彼女は彼に寄り添い、顔を彼の首筋に隠した。「ただ…消えないでくれよな?」


彼は一瞬凍りついたが、それからいつもより強く彼女を抱きしめた。


「消えないよ」


「嘘、嘘、愛しい人」


シオリは心臓の鼓動が速くなるのを感じながら思った。


「それでも、君を離さない」


ヴィタリアとリネアは、ダレクへの不安な思いをしばらく振り払い、馬車の中に二人きりになった。会話は深刻な話題から、もっと…個人的な話題へとスムーズに移っていった。


「ずっと疑問に思っていたんだ…エルフの耳はすごく敏感だって本当なの?」ヴィタリアが突然尋ねた。彼の指は、思わず彼女の優雅で尖った耳に伸びた。


リネアはたちまち顔を赤らめ、耳をぴくぴくさせ、視線を横に向けた。


— え、それは…ええ… — 彼女は恥ずかしそうに手で口を覆いながら、ささやいた。


エルフにとって耳は最も性感帯の一つであり、通常は極端に近づけなければ触れられない。しかし今、薄暗い馬車の中で、彼女のツンデレな仮面は崩れた。


ヴィタリアは、自分がどれほど彼に信頼を置いているかを悟り、優しく指で彼女の耳先を撫で始めた。リネアは身震いし、呼吸が速くなり、唇が静かに開いた。


— そんなに…敏感なの? — 彼はニヤリと笑い、さらに身を乗り出した。


— 馬鹿… — 彼女は身を引こうとしたが、体は言うことを聞かないようだった。


それから彼は優しく彼女の耳を噛んだ。リネアは息を呑み、彼のシャツにしがみついた。


— ヴィタリア…


しかし、彼女はもう抵抗することができなかった。彼女は震える指で彼のベルトに手を伸ばし、唇は彼の首筋を撫で、軽く熱いキスを交わした。


ダレクとシオリは馬車に近づき、くぐもったうめき声と奇妙な平手打ちの音を聞いた。二人は顔を見合わせ、ダレクはニヤリと笑うと、シオリの手を引いて川へと導いた。


「楽しませておけ」と彼は囁いた。


二人は大きな木の下に腰を下ろし、ダレクにしがみついていたシオリは急に真剣な表情になった。


「何か考えているんだろう?」彼女の赤い瞳が彼をじっと見つめた。


ダレクはすぐには答えなかった。代わりに、マントを脱ぎ、毛布のように彼女を覆い、強く抱きしめた。


「いろいろ考えているんだ。でも、全部は言えない。」


「なぜ?」


「だって…大切な人には、言わない方がいいこともあるから。」シオリは彼の上に乗り、二人の顔は数センチしか離れなかった。


「もう二度と私を一人にしないの?」彼女の声は震えた。


ダレクは彼女を見つめた。いつものニヤニヤした笑みではなく、どこか新しく奇妙な優しさを帯びていた。


「絶対にない」


「絶対にない?」


「絶対にない、絶対にない」


二人の唇は、情熱、恐怖、そして希望――すべてを包み込む、長く燃えるようなキスで重なった。


月は明るく輝き、星は瞬き、辺りは静まり返っていた――聞こえるのは風のささやきと二人の荒い息遣いだけだった。


*「ダリウス、何を企んでいようとも…二度とあなたを失わせはしない」*


しかし、シオリは何も口に出さなかった。まるで彼が夜の闇に消えてしまうのではないかと恐れるかのように、彼女はただ彼にさらに強く抱きついた。

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