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騎士は魔法で夢を見る  作者: ラグメラ


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5-5話

 木々の生い茂る森の中。一人の男が這いずっていた。


「ハァ、、、ハァ、、、クソッ、、、!」


 黒く焼けこげた跡を引きずりながら、腕の力で這いずっていく。


(クソッ!クソッ!あの聖女さえ殺せれば終わりだった筈なのに!俺の作戦は完璧だった筈だ!なのに何故、、、!こんな不便な肉で這いつくばっている!)


 瞳が不規則に揺れる。指が土にめり込むほどの焦燥が彼を襲っている。


(それもこれも!あの視線のせいだ!あれがなければ解析も終わらず!自分の身を晒す必要もなかった!俺の箱庭に正確に照準を付けていた!陽動役は何をしている!?そんな高位の魔法使いは出払うように暴れておけといった筈だ!役立たずどもめ!)


 近くの木にしがみ付き、上体を起こす。恨めしそうに落ちていく日を見上げた。


(早くしろ愚図ども、、、!俺を回収しに来い!次だ、、、!次は必ず、、、!)


 怒りで高速化していく思考。そんな中、砂を蹴るような音を耳が拾った。


(来たか、、、!)


 遅いと怒鳴りたくなる心境を、火傷の痛みが抑えた。やってきた者を鋭い目つきで睨みつける。そして、そこから現れた者は、深くフードを被っている。その隙間からは灰色の髪が見えていた。


「やっと来たか、、、!早くしろ!」


「はーい」


 適当そうな声を出し、指から魔法陣を生み出す。


「なっ!?」


 その一瞬後、何かが煌めいたと同時に、男の両腕がすとんとずり落ちた。


「貴様ァ!何をする!」


「いやぁ。逃げられたらちょーっと不味いなぁって思ってね」


 激昂する男の前にも、変わらない抑揚でフードを取り始める。


「悪いけど俺、君を回収しにきたわけじゃないんだ。そもそもそっちの味方じゃないし」


「は、、、?、、!?」


 男は彼の目を見た。そしてその瞬間、それが誰なのかを把握した。つい先ほどまで、自分が生み出した世界を眺めていた者の視線。


「お前か、、、!俺の箱庭を見ていた人間は!」


「まぁね。俺はノウンって言うんだけど、、、君はなんて呼べばいい?()()()


「!?」


 魔術師。その単語を聞いた瞬間、その男の全身がビクリと跳ねた。


「な、、何を言っている!」


「魔力の還元。あんなことが出来る魔法は存在しない。それをするにはお前らの特性が前提条件になるからね。だったらあれは魔法じゃなくて、そう見えるようにした魔術。そう考えるのが自然だろう?」


「そ、そんなバカなことがあるか!」


 口では否定するが、そこから滲み出る動揺は隠せていない。様々な表情を見せる魔術師に対し、ノウンはただ、うっすらと笑みを浮かべ続けている


「まぁ、君がなんて言おうとこっちは答え合わせが済んでいるからあんまり関係ないんだけどね」


 無造作に空中に魔法陣を描き、そこからノウンは小さなナイフを取り出した。


「ひっ!」


 恐れが口から溢れでる。そんな彼から目を逸らさず、一歩一歩距離を縮めていく。


「君が持ってる情報、全部出して。魔法に見せかけた方法とか、仲間の事とか、目的とか」


 彼は魔術師と同じ高さになるようにしゃがみ込み、諭すような優しい声で囁きかけた。


「楽に死ぬか、苦しんで死ぬか。それくらいは選ばせてあげるよ」


 *


「うぅ、、、、うん?」


「よかった、、、。目が覚めたか」


 目覚めたラトリックはを待っていたのはエトワーだった。寝ぼけていた頭だが、目を覚ましたということを認識した瞬間、跳ねるように飛び起きた。


「みんなは!?」


「落ち着け!全員無事だ!というかお前が一番重症なんだから大人しくしてろ!」


 起きあがろうとする彼女を押さえつけるエトワー。ラトリックはしぶしぶと横に戻る。


「はぁ、、。全く、無茶ばっかりするやつだぜ〜。自分の魔法を自分で食らってる奴なんて初めて見たぞ〜」


「えへへ、、、。まぁ何とかなったからセーフってことで、、、」


「まぁそうだけどよ〜」


 複雑そうな表情を見せるエトワー。そんな二人の後ろから、扉が開く音がした。


「良かった。目が覚めたんですね」


「シスター。無事みたいでよかったです」


 そこからはカルネアが入ってきた。彼女の肌には包帯が巻かれているものの、元気そうなことを確認するとラトリックは安堵の息をこぼした。


「少しよろしいでしょうか?」


「?何かありました?」


 不思議そうな声を出すラトリック。そんな彼女を見て、どうやって次の話に繋げるのか考えてなかったのか、きょろきょろと辺りを見回した。


「あー、えっと、その、、、ラトリックさんの処置をしたのは、私なんですが、、、」


「??ありがとうござ、、、あっ」


 何かに気づくように彼女の声が軽く裏返る。


「、、、これ、ですか?」


 そう言うと彼女は軽く右の二の腕を指差す。その動作を見て、カルネアはこくこくと頭を縦に振った。


「あー、、、」


「なんかあるのか〜?」


「うん、、、まぁちょっとね、、、」


 彼女は目を瞑りながら包帯まみれの腕で髪を掻き上げた。


「あまり聞かれたくない話かもしれません。日を改めても構わないのですが、、、」


 カルネアが申し訳なさそうにそう答える。


「、、、いや」


 しかし、ラトリックは意を決したかのようにそれを受け入れた。


「ここで話して大丈夫ですよ。、、、ごめんエトワー。一緒に聞いてくれる?」


「私は別に構わないぜ〜」


 そんな彼女たちを見て、カルネアは一呼吸おいて、


「そうですか、、、。では単刀直入に聞きます。ラトリックさん。あなたの姉はレトベル=シュナイダー。かつてこの国にいた聖女ではありませんか?」


 そう、切り出した。

5-5話です。ラグメラです。


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