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騎士は魔法で夢を見る  作者: ラグメラ


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5-4話

「さっさと死ねば楽なものを。諦めの悪い奴はこれだから困る」


 生み出した腕が消えていく。のしかかっていた重量が消え、軽やかに立ち上がる。


「ふぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜」


 そりかえるほど大きな伸びをした。そこには勝利の余韻もなく、代わりにただ時間を浪費したことへの苛立ちが含まれていた。


「面倒だ、、、後の役割は他のやつに任せるとしよう、、、」


 だるそうに腕をぶらぶらさせながら土煙の中へ向かう。


「あとは聖女を殺すだけ、、、。ついでに巻き込んだ連中も縊っておくか」


 一歩一歩、気だるげに歩を進める。そして土煙を払い除けようと巨大な手を生み出したその瞬間だった。

 彼の耳が異音を捉えた。


(!?)


 彼の本能が咄嗟に選んだ行動は自己防衛だった。生み出して手を持って、自信を掴むように壁を作る。城壁のような分厚い壁。その向こう側で土煙を払いのけ、巨大な火球が姿を現した。


「なにっ!」


 一瞬の眩い光。その後に起こる爆発音と焼けこげる匂い。男の身を守っていたはずの手は意味を持たぬ肉塊と化した。

 そして次の瞬間、人影が飛び出す。それはこじ開けた炎の中を駆け抜け、彼の眼前へと迫っていく。


「逃がさない!」


 それはラトリックだった。頭部から血を垂れ流しながらも、一直線に距離を詰める。


(動けっ動けっ!痛みなんか気にするな!もう一度距離を離されたらもうアレを耐えられない!絶対に!ここで倒せ!)


 止まらない血を拭くこともせず、一直線に駆け抜ける。この瞬間に必死の形相で挑むラトリック。だが、対面する相手の胸中も穏やかではない。


(どういうことだ、、、?最大生成のヘパトレイルだぞ!あの協会でも粉々にできる威力だ、肉片が残るかどうかという話の筈!それを、、、耐えられた!?魔力操作だけで?)


 自分が出せる最大火力の攻撃を、防御魔法なども使わず、ただ基礎的な魔力操作だけで耐えられた。その事実が、彼の中に先ほどまでなかったものを生み出した。


「おいおい、、、!ふざけるなよ!『ヘパトレイル』!」


 腹部から高速で腕を生やし、彼女へ突きを喰らわす。それは確かに彼女の腹部へと吸い込まれていった。


「随分、、!優しいパンチね!焦ってるんじゃない!?」


 だが、彼女は止まらない。放った腕を枯木を飛ばすかのように払いのけ、男の肩に掴み掛かる。


「放せっ!」


 力ずくで引き離そうと暴れるが、ラトリックは決して引き離されない。背中からさらに腕が生え、彼女に掴み掛かるがそれでも均衡は崩れない。


「あんたのその魔法っ!どうやらっ、即席で作る程っ、!力が弱いみたいねっ!」


 彼女は確信めいた笑みを浮かべる。めり込むほどの力でその肉体を掴み、魔法陣を展開する。


「っ!こいつっ!」


「これなら止められないでしょ!『炎球(フレア)』!」


 再び発生する巨大な火球。それが二人の中心で爆ぜる。その炎は見境なくそこにあるものを焼いていく。


(こいつっ!イカれてんのかっ!?自分ごと魔法で攻撃しやがった!)


 その衝撃で体が吹き飛んでいく。ボールのようにバウンドしながら数メートルも転がっていった。


「死に、、、損ないがぁっ!!」


 崩れた姿勢を整えるよりも先に顔面だけを前に向け、彼女の姿を探す。だが、その作業は一瞬で終わった。


炎球(フレア)!』


 ラトリックは再び目の前にまで迫っていたからだ。再び巻き起こる轟音。その体は重力を失ったかのように吹き飛んでいく。


(な、、、なんなんだこいつはっ!あれだけ血を流して!あれだけ自爆して!なぜ動ける!戦える!)


 ガクガクと震える四肢で体を持ち上げようとする。しかし、その這いつくばった肉体は立ち上がることのないまま敵を迎えることになった。


「ようやく、、、追い詰めた」


 ラトリックは流れる血も気にせず、狩人のような眼差しで近づいていく。衣服は破け、火傷の跡が見えるが、それすら意にも返さない。


「何者だ、、、お前、、!?なんだその魔力量は!なぜ尽く耐えられる!あり得ない、、!ありえないありえないありえない!」


 男が慟哭する。伏せたまま腕を生み出し、彼女に抵抗しようとする。だが、最早その緩慢な動きでは彼女を止めることはできない。その腕を叩き落とし、踏みつけた。


「ハァ、、、!?」


 彼が最後に注目したのは、その右腕。露出した二の腕からは、火傷というには広く、黒すぎるような文様が浮かび上がっていた。


()()()、、、まさか、、、!」


「見たわね、、、。まぁだから何だって話だけど」


 そういうと手のひらを掲げ、魔力を集める。その先には最早、指一本すら動かせない的があった。


「私たちに手を出したこと!一生悔やんで逝け!」


 三度目の轟音。それはただ敵を焼き尽くすだけでなく、この世界自体への攻撃となった。その空を包んでいたベールが君の悪い音を立てながらひび割れていく。


「、、、」


 それと同時に、ここまで立ち続けていた彼女の体が揺れる。どさりと、力無く倒れ込む。緩く閉じていく瞼が最後に捉えたのは、お守りとして借りている魔封石。


「勝てたよ、、、私、、、」


 彼女は笑顔のまま気絶した。その表情を差し込んだ日差しが照らしている。

5-4話です。ラグメラです。

敵キャラの名前、出すタイミングを完全に失ってしまった。まぁ、5話にしか出てこないからいいか。必要になるまで考えるの後回しにしてたからまだ作ってないし。

面白かったら感想や評価の程よろしくお願いします。

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