2-1話
夢は無限の希望をもたらしてくる。
「ここがあの、、若馬の厩舎、、。」
あの時の彼女もそうだった。不確定な未来はきっといい方向にすすむはずだと。
「これより適性試験を始める!」
若馬の厩舎では入学時、どれほどの魔法が使えるのかという検査がある。
他の入学者は次々と魔法を披露していく。
(よし、、ここで力を見せられれば、、。)
「73番!前へっ!」
彼女は試験官の前へ立つ。
(落ち着いて、、これはそんなに難しい魔法じゃない、、)
相手の方へ手を向け、魔力を集中させる。
「炎球!!」
魔法の行使。しかしそれで起こった現象はガラスが割れるような雑音と砕け散る魔法陣だけだった。
「くっ、、もう1回!!」
彼女は何度も魔法を使おうとする。しかし結果は変わらなかった。
「、、、そこまでっ!次!74番!」
「、、、ありがとうございました、。」
(何を落ち込んでいるの、、。こうなることは予想できていたでしょう、、。これから使えるようになればそれでいいんだから、、。)
彼女は無理矢理にでも前を向いた。
*
若馬の厩舎に在籍するようになってそこそこの時間が過ぎた。
しかし彼女の魔法は一向に成長する気配が無かった。
(はぁ、、、今日も駄目、、特訓が足りないのかな、、、)
彼女は日々を魔法の習練に費やした。しかしその歩みは牛の一歩にすら及ばない。
(私じゃ、、駄目なのかな、、いや、弱気になるな!他の人には出来てるんだ!私だって、、!)
彼女はまた魔力を練り始めようとした時、、、
「よ〜〜〜す。今日も頑張ってるな〜〜。」
後ろから友人が声をかけてきた。相変わらず眠そうな声をしている。
「どうしたの?」
「もうすぐ課題の期限だろ〜。どんなものか気になってな〜。」
「そっか、、もうそんな時期なんだ、、。」
「ちゃんとパスしないと退学だぞ〜。」
「、、そうだね。」
とはいえ内容自体は大した問題ではない。入学して最初の課題ということもあり、内容は指定された薬草の採取。それだけである。
、、、魔法が使える者ならば。
(薬草の採取、、そのためには城壁の外に出なければならない、、。魔法もまともに使えないまま外にでるのは危険すぎる、、。)
堅牢な城壁に守られている王国と違い、一歩外に出れば魔獣が当たり前のようにに生息している。魔法もなしに挑むのは自殺とさほど変わらない。
「どうだ〜〜?一緒に行かないか〜〜?そっちの方が楽できるし〜。」
とても魅力的な提案だ。一緒に行ってくれるなら問題のほとんどは解決する。しかし、、
「、、いいえ。一人でなんとかするわ。これくらいも出来ないようじゃ騎士になんてなれないもの。」
「そっか〜。それもいいと思うぜ〜。、、、無茶だけはするんじゃないぞ〜。」
「えぇ。わかってる。」
こんな魔法もろくに使えないやつの身を案じてくれる、なんて良いやつなんだろう。
でも。だからこそ。
(こんなやつの尻拭いなんて、、させるわけにはいかないわ。)
*
さらに数週間。結局なにも変わらないまま課題の期限が近づいてきてしまった。
指定された薬草は少し歩いた場所にある森のなかに生えている。
(やるしかない、、か)
採取と探索に必要な道具を持ち、彼女は出発する。
(私には魔獣と遭遇しても戦う術がない、、。急いで採取して素早く撤退。これしかないわね、、。)
魔法が使えればこんなことで悩む必要はないのに。そう思っても現実は変わらない。
こうして彼女は森に入って行った。
そうして進むこと十数分。彼女が森に入って感じたこと。それは拍子抜けという言葉が相応しいだろう。
(なんだ。魔獣も特に見当たらないし、これならあっさり持ち帰れそうね。)
『指定した森には低危険度だが魔獣が生息している。十分注意するように』
という文が記載されていたが、魔獣がいた痕跡こそあれどその本体や気配にすら遭遇することなく、彼女は目的地にたどり着くことができた。
(着いちゃった。まぁ何事もなければそれに越したことはないか。)
彼女は薬草の採取に取り掛かる。生えているものを摘み取るだけで難しいことは何もない。
(これでよし。あとは帰るだけ、、、っ!?)
それは突然だった。バキバキと木を折り、押しのけながら何かがこっちへやってくる音がする。
咄嗟に近くの木の影に隠れる。
(なにっ?なんなのあいつ!ここら辺に生息してる魔獣じゃないはず!)
その音の主が現れた。
木々を薙ぎ倒し、地面に大きな足跡を生み出しながらその姿を覗かせる。
異常なほどに肥大した肉体は大岩の如く、発達した牙は大木よりも太い。
(あれは、、猪魔獣!?でもあんなに巨大なのは見たことがない、、!あれはかなり小柄で臆病な性格な魔獣だった、、!!)
猪魔獣は薬草の上に粗雑に座り込む。どうやら見つかっては居ないようだ。
(落ち着け、、、音を立てるな、、、慎重に、、焦るな、、、目を逸らすな、、、)
木の影で息を潜め続ける。見つかったら終わり。その事を一番理解しているのは間違いなく彼女だった。
2話目です。ラグメラです。
唐突に始まる過去回想。
本当はもうちょっと先まで書きたかったのですがインターンで体力使い果たしてしまったので一旦ここまで。
流れは大体作れたので次は早めに投稿出来ると思います。
1話が結構見られててびっくりしました。ありがとうございます。これからも頑張ります。




