5-2話
『風刃!』
狩る。
『炎球!』
狩り続ける。
壁のように群がった人形達を次々と破壊していく。
「ハァ、、、ハァ、、、!底が見えないぜ!まだいるのか!?」
だが、それだけだ。何度倒してもゆらゆらとベールの向こうから現れ続ける。
「数が多すぎる!本当に減ってるの!?」
肩で息をする。すでに一時間は経過しただろうか。彼らの進軍は止む気配がない。魔力、体力、どちらも徐々に削れていっている。
「お二人とも!大丈夫ですか!」
座り込む二人へ、カルネアが駆け寄ってくる。
『神よ 肉体を癒す 息吹を与えん』
その背中に触れると木漏れ日のような暖かい光が彼女達を包み込む。肩で息をする程の疲労が嘘のように抜け落ちていった。
「助かったぜ!」
その勢いのまま結界に張り付いていたものを消しとばしていく。また少しだけ、結界と列の間に溝を生むことができた。
「しかし、この祈言で体力は戻せますが魔力までは戻りません!まだ余力はありますか!?」
「私はまだ行ける!エトワーは!?」
「まだ、、、行けるぜ!」
実際のところ、彼女達は長時間の先頭にしては魔力消費は激しくない。にも関わらず、その安息の先にあるものは焦りだった。
(今はまだ耐えられる、、、けど。もしこのまま終わりが訪れなかったら、、、)
そんな最悪のパターンが脳内を支配していく。先の見えない暗闇の中、一番多く削られていたのはその精神だった。
*
元の教会内。変わらずノウンは座りながら何かに集中していた。
(、、、読み終わっちゃった)
それは日誌だ。何か手掛かりはないかと礼拝堂を探索した唯一の成果。手持ち無沙汰になったノウンはそれをじっくりと読み始めていた。
(一日も抜けがない。よくこんなのマメにできるな)
パタンとそれを閉じ、元あった場所に戻す。することが無くなってしまった。
(さてと、、、どうしよう?面白い事は書いてたけど今は使えそうにないな)
はぁ、と一つため息をつく。外の市民が騒いでいる音は聞こえるが、事は何一つ進展していない。最もそれは彼らの視点からすれば、という意味だが。
(箱庭の生成)
ノウンは既に何が起こったのかを理解している。
(魔力で生成した箱庭に対象を拉致する。あとは煮るなり焼くなり好き放題って感じだね。外の残滓は箱庭の所在地がバレないようにするための撹乱装置ってとこかな?この手のやつは外部からの干渉に弱いし)
その事象。効果。そして浮かんだ対策と対処。どれをとっても間違いはない。つまり、彼が悩んでいる部分はそこではないのだ。
「どうやって知らせよーかなっ!」
不満を吐き出すように、投げやりに思考を口に出した。
(最悪俺が干渉すればなんとかはなるけど、、、そんなことしたら大騒ぎになる。ただでさえ目を付けられかけてるってのに。)
飛び乗るように椅子に座り、天を見上げる。髪が重力に従い。額があらわになる。
(箱庭の魔力が削れてるからラトリック達が抗ってはいるんだろうけど、、、。このペースじゃ一年はかかるよなぁ。こうなるなら俺も巻き込まれとけば良かったかなぁ)
そんなことを考えながら体を横に倒す。何かが思いつく訳でもなく、外の雑音が耳に響く。
「うるさいなぁ、、、」
ぼそりと文句を口にする。外では焦ったような喧騒と必死の解析が行われているが、彼は若干うんざりしたように耳を塞ぐ。
「早く終わらせてくれ、、、介入自体は楽だから、、、」
それは本当に何気なく放った一言だった。
「ん?」
閃きというものは、案外そんな意図しない一言から生まれるものだ。
*
さらに時間が経つ。その間も何も変わらず、魔力を消費しているだけかもしれないという猜疑心に争い続けていた。
(次こそ、、、これで!)
そんな希望は再び現れた人形達に砕かれた。
(まだっ!?)
何か解決方法はないか。限られた時間で脳内で思考を加速させるその瞬間、ラトリックの頭の中に大きな声が流れた。
「守護馬の厩舎だ!応答求む!」
「えっ!?」
その中に響き渡るように、早口な無線が轟く。
「守護馬の厩舎!?」
「これは、、、一体、、、?」
エトワーとカルネアも同じタイミングで反応をしている。その発信源は驚愕の声をあげた彼女達で生存確認をしたようだ。
「ここにいる全員に向けて交信を行使した!こちらで解析が出来ている!その結果を今から伝える!」
ドタドタと入れ替わるような音が聞こえる。それが止んだかと思うと、息切れをしながら違う人間の声が聞こえてきた。
「今皆さんがいる場所は魔法で生成された空間です!その中の物体は全て魔力で作られており、破壊しても循環し、再生する効果があります!」
「そんな!私たちはどうすれば!?」
ラトリックが問いかける。こうしてる間にも結界目掛けての攻撃は止んでいない。魔力が切れたらそこで終わりだ。
「今の状況は!?」
「人形の大群に押されてる!」
それを聞くと少し考え込むかのように黙った。だが、その沈黙は長くは続かない。
「その人形を破壊せず、固定してください!」
「固定!?」
「空間内で使える魔力は一定です!人形が生まれた状態で破壊せず、どこかに閉じ込めておくなどすれば魔力の還元は起こりません!それで人形の生成を止められるはずです!」
その言葉を聞いた瞬間、カルネアが前に飛び出た。
「あの人形達を一箇所に集められますか!?」
「私なら行けるが、、、何をするんだ!?」
その呼びかけに答えたのはエトワーだった。
「説明は後でします!急いで!」
「、、、わかった!ラトリック!」
「うん!」
「最大出力で行使する!周りの警戒頼んだ!」
「了解!」
それを聞いたエトワーは両手で巨大な魔法陣を描く。全ての魔力を込め、それが煌々と輝き出す。
『風送!』
その両手から放たれたものは、暴風と言って差し支えないようなものだった。群がっていた人形達が紙切れのように浮かび上がり、空中に集められる。
「行きます!」
そして、今まで彼女達を守っていた結界が解かれた。あらたな祈言の行使のため、準備が整えられる。
『神よ 魔を封じる 檻を授けよ』
その言葉が捧げられた瞬間、暴風により身動きが取れなくなった人形達を囲むように、球状の檻が生み出された。
「風の解除を!」
「わかったぜ!」
檻の中に封じ込められていた風が途切れ、檻の中に人形の層が出来る。もぞもぞと蠢いているが、立つことすらもままならない。
(門の方は、、、!)
ラトリックは人形が生み出され続けていた方を見る。今までは何度倒しても人形を生み出し続けていたベール。
しかし、どれだけ経ってもそこから何かが生み出される事はなかった。それはその動きを完全に停止させていた。
「止まった!」
ラトリックが大声で皆に知らせる。それを合図に二人は気力を使い果たしたようだ。その場に弱々しく座り込む。
「よし、、」
「間一髪、、、ですね」
5-2話です。ラグメラです。
もうちょっと進めたかったですが日曜になるので一旦投稿します。
面白かったら感想や評価の程よろしくお願いします。




