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騎士は魔法で夢を見る  作者: ラグメラ


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4-2話

「教会がボランティア募集なんてな〜。珍しいこともあるもんだぜ〜」


「そうなのかい?街中でよく見かけるんだけど」


 不思議そうにノウンは首を傾げた。


「そういうのは行事のお手伝いだろ〜。違うのは若馬の厩舎(ノートンクラン)を経由してるってとこだ〜」


 読み終えた紙に軽く魔力を流す。するとそれは、淡い光を放ちながらぼやけていく。その揺れは少しずつ大きくなり、次第に形を失っていった。


「今回は教会の警備がその内容だぜ〜。な?おかしいだろ〜?騎士団を差し置いて騎士見習いのところに募集が来るなんて」


 紙を消失させたエトワーは、少しの警戒心を露わにしながら同意を求めてきた。


「なるほど。そういえばあの教会は騎士団が常駐してるんだっけ。確か、、、守護馬の厩舎(ヴァルティアクラン)。そう思うとあの教会ってしっかり守られてるんだね」


「そりゃそうだろ〜。王宮の次に重要な場所だぜ〜あそこは〜」


 ラートヌスには三つの騎士団が結成されている。守護馬の厩舎(ヴァルティアクラン)は国の治安維持と防衛の役割を担っているのだ。言わば国の守りの要。そんな騎士達が、見習いという立場に応援を要請している。

 そんな事態に二人の目が少し細まっていった気がする。


「それもそうか。それで?行くのかい?」


 エトワーは少し悩むように顎に手を置いた。


「う〜ん、、、。正直行く気はあんまりないぜ〜。もっと高ランクの生徒が行くような奴だろうしな〜。これに参加しないと単位足りなくて退学〜とかでもない限り行く奴いないと思うぜ〜」


「そんな奴そうそういないか。ラトリックも、、、ラトリック?」


 言葉を詰まらせたノウンの視線の先。そこには忌避すべきものを見つけてしまったかのような顔で硬直しているラトリックの姿があった。


「ラトリック、、?お前さんまさか、、、」


 汗をだらだらと流している彼女を横目に、その赤い紙を覗き込む。書いてある内容は概ね同じ。しかし、その左端に見たことのない文章が記載してある。


「え〜と〜、、『警告』『単位不足のため絶対参加』『欠席した場合強制退学』」


「まじか、、。そんな奴がここにいるとは、、、」


 自らに毒を持つことをアピールする虫のように、その文字列は明らかな危険信号を発していた。


「ど、、、どーしよう、、、。とりあえず連絡しなきゃ!『交信(コンタクト)!』」


 そう唱えると目の前にモニター画面のようなものが映し出された。その画面には人影が生まれ、だんだんと鮮明になっていく。


「失礼します!カルトス学長!」


 紙に記載されていた連絡先へ繋げ、早送りのような敬礼を行った。その先には綺麗に整頓された机と、ぎっしり詰められた大きな本棚を背景に、彼の姿が映っていた。


「シュナイダーか。その様子を見るに、あれはきちんと届いたようだな」


「見ました!どういうことですかあれは!」


「どうもこうもない!今まで実技試験の不合格がどれくらい溜まっていると思っている!むしろ参加だけ済んでいることに感謝するべきなのだ!」


「うっ、、、」


 ぐうの音もでない。


「うー、、あっ!そうだ、学長!この前の鳥魔獣(ギシシア)討伐の件は確認していただけましたか!?その功績でなんとか、、、」


「加味した上でこの処遇じゃ馬鹿者!」


「ぐあっ、、、」


 小さな呻き声が漏れる。そのままガミガミと叱責を受けるラトリック。心なしかドンドンと肩幅が小さくなってしまっている。


(学長の説教が始まっちまったな〜。こうなると長いぞ〜)


(ラトリック側に非しかないから余計タチが悪いなぁ)


 二人一瞬目線を合わせる。どうやら意見は一致したようだ。席に座りカウンターの方へ体を向けた。


店長(マスター)。コーヒーおかわり頼むぜ〜」


「俺カフェオレで」


「まいど。ミルクは自分で用意しなさい」


「へーい」


 *


 それから数時間が経過した。いつの間にか画面の前で正座をさせられていた。よく見ると足が震えている。痺れが限界なのだろう。


「さて、シュナイダーよ。これからどうするつもりだ」


「え、、?教会で、、護衛にあたれば、、」


「何を言っておる。E、Dランクの生徒は三人チームが参加の条件だぞ」


「え!?ア”ッ、、!」


 勢いよく立ち上がったが、足にが爆発してしまったようだ。前のめりに倒れ込む。エトワーは流れてきた赤い紙を取ってもう一度眺めてみた。


「あ、本当だな〜。Dランク以下は参加制限かかってるぜ〜」


「そういうことだ」


「、、、エトワー〜〜、、、」


「はいはい。心優しいエトワーさんが付き合ってやるよ〜」


「ありがとう〜〜〜、、、」


 今にも泣きそうな声でエトワーの足にしがみつくラトリック。しかし、規定にはまだ足りない。助けを求めるようにノウンへ話を振る。


「それはいいとして、、後一人どうするかだな〜。ノウンは来れないのか〜?」


「無理じゃない?俺は若馬の厩舎(ノートンクラン)に所属してないし」

(正直めんどくさいし)


「そういえばそうだったな〜。ちなみに学長。実際のところどうなんですか?」


 聞くだけ聞いてみようと、彼女は学長に尋ねた。


「これは若馬の厩舎(ノートンクラン)に向けて送られた依頼だ。従って、外部の人間を参加させることはできない」


 予想はしていたものの実際にできないと言われると心に来るものがある。はぁ、とため息をついた。


「ど〜するかな〜。ラトリックも誰か頼めそうな奴いないのか〜?」


「、、、いない。というか、私と普通に接してくれる人がそもそも」


「すまん。私が悪かった。これ以上傷口を開くんじゃない」


 これ以上はいけないとばかりに、彼女の発言を遮る。ラトリックは悪い意味で有名人なことを失念してしまっていた。急いでこの空気を変えようと、誰か頼めそうな奴がいないか頭の中で人物を検索し始めるエトワー。

 すると、カウンターの方から声がかかった。


「失礼。少し交信(コンタクト)に出させてもらっても?」


「え?いいですけど、、、」


 店長(マスター)に言われるがまま、ラトリックは生み出したモニター画面を彼の方へスライドさせる。


「なんだ?いった、、、き、貴様は!」


「お久しぶりですね。ちょっと相談事がありまして」


「な、何をする気だ!」


 何やら不穏な気配を漂わせながら、店長(マスター)が画面を持って二階へ上がっていった。


「え?店長(マスター)と学長って知り合いなの?」


「いや、、俺にもわかんない、、」


 そのまま数分が経過しただろうか。彼が二階から降りてきた。なにやら不的な笑みを浮かべている。ちゃんと聞けと言わんばかりに画面をこちらに向けてきた。そこには頭を抱えたカルトス学長の姿があった。


「ノウン=シャダルと言ったな、、、君は、、、」


「え?はい」


 自分の名前を呼ばれるとは思っていなかったのか、肩をびくんと震わせた。学長は何かを躊躇っているようだが、意を決したのかいつもの口調に戻して言った。


「私の権限で君の参加を許可する。日時と場所は二人から聞いてくれたまえ」


「はぁ?」


「そういうことだノウン、行ってやりなさい。どうせ暇だろう」


「ちょっと待て!何があった!?」


 勢いよく立ち上がり、威嚇するかのようなポーズを取る。なんてことをしてくれたんだ!という言外の抗議がその動作に詰まっていた。


「いいかいノウン。これがコネというものだよ」


「堂々と公言するな!駄目に決まってんだろ!」


「何を言う。許可は取ったぞ」


「非合法にな!大丈夫なのか!?この人顔真っ青だぞ!?」


 ビシッと指を刺す。その先の学長は強がっているが、今にも倒れそうな顔色をしている。


「、、、そんなことはない」


(えぇ、、、。一体何を唆したらこんな従順になるんだよ、、、)


 たじろぐような姿勢で店長(マスター)から距離を取る。その視線には明らかに非干渉の立場を取りたいと言う気持ちが乗っかっている。


「ノウン!」


 机の下から顔を覗かせながら、ラトリックが呼んでくる。彼はなんだ?という表情をしてその方向を向いた。


「面倒な事頼んでるって事はわかってる、だけど他に頼れる人がいないの!お願い!」


「、、、えー。いや、でもなぁ」


「お願い!なんでもするから!」


「うぅぅぅぅ、、、、」


 小さな呻き声が響く。彼女の目力の強い視線から必死に逃げる。おそらく彼の中では、この頼みは断るべきだ!と、警鐘を鳴らしているのだろう。しかしその目に追い詰められ続け、、、


「あーもう!わかった!行く!行くから!」


「ほんと!?ありがとうノウン!」


 その目をぱぁっと輝かせるラトリック。太陽のような笑顔で喜びを表現していた。対照的に彼はずるずると腰を落とし、再び座り込む。


「お前さん、さては頼まれたら断れないタイプだな〜?」


「言わないでくれ、、、」

4-2話です。ラグメラです。

次回から教会に行きます。前置き長すぎるかな?

それとせっかくなのでタイアップ企画に応募してみました。なんかもらえたらいいな〜。でも流石に高望みかな?

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