1話
9/28 エトワーの口調を少し修正しました。
敬意とは偉大なものである。
行動の1つ1つに他者が価値を見い出し、人間の価値を上げていく。
その者の一挙手一投足に視線が集められ、目を離すことを許さない。
「、、、ダー」
ただそこにいる。それだけで皆の敬意を集める。
この場所でどれ程の研鑽を積めばたどり着けるのだろうか。
「、、、シュナイダー」
いずれ私はそこに辿り着きたいと思う。
いや、たどり着かなくてはならない。
なぜなら私は、、、
「ラトリック=シュナイダー!!!!!!!」
「はぃぃぃい!!!!!」
――教室に甲高い声が響いた。
*
若馬の厩舎
この国ラートヌスには騎士という国に使える魔法使いがいる。
その騎士を育成する機関が 若馬の厩舎なのだ。
「うぅぅぅ、、、、。」
そのような場で長い赤髪を広げ机に突っ伏す。頭には大きなたんこぶが出来ており、今にも煙が見えてきそうだ。
「災難だったな~~~。」
先程の公開説教をネタに間延びした声で友人が話しかけてくる。
「あんながっつりそっぽ向いてたらそりゃバレちゃうだろ~~。お前さんは何を眺めていたんだ~~。」
華奢な体躯と細い目をした金髪の女性。眠そうな目をしながらラトリックに近づいてくる。彼女はエトワー=ルート。 若馬の厩舎の同い年であり、同期である。
「別に、、、。」
「どーせAクラスの生徒達が居たとかじゃないのか~~。」
「うぅぅぅ、、、。」
「まぁ憧れちゃうよな~~。わかるよ~~。私もDランクの弱小な騎士志望だからな~~~。」
若馬の厩舎ではその者の実力によってクラスがE~Aに割り振られる。
Aクラスともなると 若馬の厩舎屈指の精鋭たちだ。実力だけなら本職の騎士となんら遜色ない。
「私だって、、いずれは、、行くし、、。」
「いずれねぇ」
エトワーは首を傾げる。
「DどころかEランクなのに?」
「ぐっ、、、!!」
「魔法だってまともに使えないのに?」
「うっ、、、!」
「Aランクなんて夢見る前にまずは、、、」
「もうやめろぉ!!さっきの共感はどこへ行ったぁ!!」
言葉のナイフは容易に人を殺すことが出来る。ラトリックは胸をズタズタにされ動けなくなってしまった。突っ伏した隙間から啜り泣く声が聞こえてくる。
「泣かないの〜。ほらそのために 若馬の厩舎にいるんだろ〜〜。」
「急に優しくしないでよ、、、。私だってちょっとは使えるようになったし、、、。」
エトワーはぽんぽんわしゃわしゃと頭を撫でる。ラトリックはされるがままにわしゃつかれている。
「それじゃあラトリックの今の魔法を見てあげよう〜〜〜〜。」
「、、いいだろう!」
ラトリックは頭に置かれた手を押し除け勢いよく立ち上がり、エトワーへ向けて手のひらを向ける。
魔法陣を展開し、魔力を収束させ、魔法を行使する準備を整える。
そしてそれが光り輝き、、宣言する!
「炎球!!」
魔法陣から小火が生まれ、、、、その瞬間!
「あああああああああ!!!!」
魔法陣ごと爆発した。本来炎球は生み出した火の球を飛ばす魔法であり、自爆する魔法ではない。
焦げ臭い煙がラトリックを包み込んでいく。
「、、、先は長そうだな~。」
「、、、がんばる、、。」
*
エトワーと別れた放課後。ラトリックは夕暮れの街を駆け抜けていく。
(えっとここを通って、ここの隙間を潜って、、、、ほんっとに迷路みたいだな〜もう)
ラートヌスは堅牢な城壁に守られた広大な国だ。
その中も外敵から国を守るために入り組んだ地形で町が形成されている。
しかしその広さと複雑な地形から意外と穴場が多く、多少騒いでも気づかれることがない秘密基地のような場所が存在する。
(あいつは多分今日も来てるよね)
壁沿いに大きく育った木を使ってよじ登るとそこには開けた場所がある。撤去された公園跡地のような場所で、ただ広いだけの地面と樹木に囲われた土地がそこにあった。
木から飛び降りるとそこに座り込む人影がある。
ラトリックはその微動だにしない人影の頬をひっぱる。
「うわっ」
「やっほ。あんたそろそろ私が来た時くらい気づけるようになりなさいよ。」
頬を引っ張られた少年はようやく本から目を逸らし、こちらに意識を向ける。うっすらやわらかい笑みを浮かべ、陽だまりのように安らぐ声を出す。
「ごめんごめん。どうしても何かに集中してると他に意識を割けなくてね。そっちは今日も特訓かい?」
「もちろん!魔法が使えないなんて話にならないからね!今日も付き合ってもらうわ!」
「はいはい。」
その少年は手に取っていた本を閉じ、立ち上がる。
「それで?俺は何をすればいいの?」
「とりあえずそこに立って。今から〜〜〜」
こうしてラトリックの特訓は夜が更けるまで続いていく。これが彼女の偶然得られた日常だった。
初めまして。ラグメラというものです。
頭の中の妄想を垂れ流したくなったので小説書いてみます。
楽しんでくれたら幸いです。