第10章―3
そうした中、英海軍は英海軍なりに、独海軍の行動予測をしていたが、その予測を誤る事態が起きた。
政府がノルウェーに謀略を仕掛けようとしているのを、それなりに察してはいたが、そうは言っても、それに対応して、劣勢な海軍力のドイツがノルウェー全土への侵攻を行うとは、というのが英海軍の多くの予測だった。
何しろメタい話になるが、この世界では日本海軍まで主力を割いて、北海に展開しているのだ。
そうしたことからすれば、ノルウェー南部(具体的にはベルゲン以南)への侵攻作戦を、ドイツが空軍の援護の下で、断行することはあるかもしれないが、ノルウェーの中北部(ベルゲンより北のトロンハイムやナルヴィク)に行うことはアリエナイことだ。
そういう先入観が、英海軍上層部にはあった。
こうしたことから、独海軍の主力艦艇、巡洋戦艦や装甲艦が北海へ出航しつつある模様、という情報が入ってきても、英海軍上層部は、そういった行動は北海から北大西洋へと出撃することで、独水上艦が通商破壊戦を展開する準備だ、という先入観から行動を推測する、という事態が起きることになった。
仮に、その推測が誤っていたとしても、独水上艦の戦力と、英仏日の海軍戦力の圧倒的な差から、独空軍の支援、傘の下で無いと、どうにも勝算が立たないと独海軍上層部は考える筈で、独海軍の水上艦が艦隊を編制した上での積極的な攻勢を採る筈が無い。
そこまで考えあわせれば、ノルウェー全土の占領を、独政府や軍上層部が考えるにしても、まずはノルウェー南部を制圧した上で、そこに空軍を展開して、その傘の下で、ノルウェー中部から更に北部へと侵攻作戦を展開し、ノルウェー全土の占領を図るだろう。
それが英海軍上層部の考えの大前提だった。
実際、普通に考えれば、独海軍の戦力と、英仏日海軍の戦力差から考えて、ノルウェーに対して独が侵攻作戦を展開するにしても、そういった考えに成るのが当然としか言いようが無かった。
だが、ヒトラー総統からのノルウェー侵攻(保障占領)作戦を命ぜられた独三軍(特に海軍)上層部は真逆の発想をすることになった。
北海を経由して、北大西洋で独水上艦が積極的に通商破壊作戦を展開するように装うことで、英海軍の艦隊主力をノルウェー沿岸から引き離して、北海全体での哨戒任務に傾注させることにし、その間隙を衝いて、ノルウェー全土を速やかに制圧しよう。
それこそ速やかにノルウェー陸軍の動員が完結する前に、ドイツ軍の侵攻部隊がノルウェーに展開することに成功すれば、後は増援として駆けつけた独空軍の支援によって、英仏日軍の逆襲は極めて困難な事態が生じるだろう。
そのように、独三軍上層部は考えて、ノルウェー侵攻作戦を計画することになったのだ。
更に言えば、ドイツ海軍上層部は甘い考えを持っていた。
それこそ日中戦争の経験から言って、日本海軍は質的には独海軍より遥かに劣るのだ。
更に言えば、黄色人種の日本人は夜目が効かない筈だ。
日本海海戦で日本海軍は戦果を挙げたというが、それは黄色人種の血が混じったロシア海軍だから勝てたのであり、我が優秀なゲルマン民族のドイツ海軍に、自分達の地元の北海で勝てる筈が無い。
そういった人種的偏見(最もヒトラー総統以下のナチスの主張からすれば当然としか、言いようが無かった)も相まって、英海軍がノルウェー沿岸から離れて、ノルウェー沿岸方面に赴くのは、日本海軍のみになった模様という情報が、自分達の手元に入ったことから、独三軍はノルウェー侵攻作戦を発動することを最終決断することになった。
だが、そのことは後々で偏見塗れから都合の良い考えをしていたのが、あからさまになった。
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