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第2章―9

(少なからずメタい描写にならざるを得ないが)西安事件については、米内洋六大尉にしてみれば、本当によく分からない事件としか、言いようが無かった。

(更に言えば)米内大尉にしてみれば、生涯に亘って、詳細な真相は謎のままで終わることになった。


 こうなった背景だが、細かい事情については、蒋介石や毛沢東、張学良といった西安事件に関わった主な面々が生涯、沈黙を保ったまま、あの世に赴いたという現実がある。

 その為に、様々な二次史料に基づいて、細かい事情を推測せざるを得ず、更には二次史料の宿命に近いが、複数の二次史料の間では矛盾した証言等があり、そうしたことも真相を謎めかせている。


 取り敢えずと言っては、言葉が悪いが、1936年末に米内大尉が把握している西安事件の現状について、この際に描写するならば。


 1936年10月以来、中国共産党の現在の根拠地である延安に対して、ドイツ政府の大幅な支援を受けたことにより、強気になっている中国国民党政府軍は、大規模な攻撃を仕掛けようとしていたのだが。

 実際に最前線で中国共産党と対峙している張学良や楊虎城は、

「中国共産党に対する攻撃よりも、日本人を優先して攻撃すべきだ」

と内々に部下に対して言う有様で、中国共産党への攻撃を控えている現実があった。


 こうしたことから、1936年12月初めに、蒋介石は直々に張学良や楊虎城の下を訪問して、中国共産党を攻撃するように督戦することにしたのだ。

 だが、この蒋介石の行動が、更なる張学良らの行動を招くことになった。


 何と張学良と楊虎城は連携して、訪問して来た蒋介石を襲撃、監禁するという暴挙を起こしたのだ。

 そして、張学良らは中国国民党政府の改組等を訴えた。


 だが、このことは中国国民党政府内からの激しい反発を招いた。

 中国国民党政府の大勢は、張学良らの行動は、クーデターであると断言し、速やかに武力鎮圧を図ろうとすることになったのだ。

 更にこの行動には、ドイツ政府から派遣された面々も賛同する事態が起きた。


 だから、このまま行けば、張学良らは武力によって鎮圧されてもおかしくなかったが。


 蒋介石の妻の宋美齢が介入し、義兄の孔祥熙らと共に蒋介石の解放を図ったことが転機となった。

 蒋介石の解放を最優先として、宋美齢らが行動したことから、中国国民党政府軍による張学良らの武力鎮圧は差し控えられることになった。


(更に、米内大尉らには後から推測されたことで、現実にもそうだったらしいが)ソ連政府も、この事件に介入し、中国共産党に対して、抗日という一点共闘を中国国民党政府と共に闘うように勧めたことから、千載一遇の好機であるとして、蒋介石を殺害しようという中国共産党の一部の行動も抑止される事態が起きることになった。


 ともかく、こういった複雑な裏の暗闘があった末に、1936年12月25日に、蒋介石は解放されることになった一方で、国共合作を再興するように努めることが、蒋介石解放の条件として、中国国民党と中国共産党の要人の間で合意されることになった。


 だが、こういった事態は、蒋介石ら中国国民党強硬派にとって屈辱に他ならず、先走った話になるが、1937年2月の中国国民党第五期第三次中央執行委員全体会議において、改めて中国共産党との絶縁が宣言される事態にまで行きつくことになる。


 ともかく、1936年末の時点に話を戻せば。

 米内大尉にしてみれば、国共合作は頭痛のタネとしか、言いようが無かった。

 中国国民党内では、中国共産党との連携を忌避する動きが強いらしいが、本当に国共合作が成れば、厄介極まりないことだ。

 日本の行く末は更に困難になった、と米内大尉は考えざるを得なかった。

 本当に私がネット情報に依存し過ぎなのかもしれませんが。

 西安事件から、盧溝橋事件等が勃発し、日中戦争(支那事変)が突入した経緯を調べる程、色々と相矛盾した情報が散見され、何処に真実があるのか、作者の私は悩むのが真実です。


(少なくとも、1937年当時の日本が、軍民一体となって日中戦争を望んでおり、そうしたことから、盧溝橋事件を引き起こして、積極的に日本から日中戦争に突入した、という主張には、私はどうにも反対せざるを得ませんが。

 では、何処に真実があるのか、と問い詰められると、本当に作者の私が悩む現実が。

 この後の描写も、そういった私の悩みを踏まえた描写に基本的になります)


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