第17章―12
感想を読んだことから、念のために追記します。
あくまでも、ドイツ空軍機の搭乗員が北フランスで、ほぼ皆殺しになっているというのは、カテリーナ等が聞いている噂です。
この世界では、後世でそういったことがあったか否か、大論争が引き起こされることになります。
ドイツ側は蛮行だ、と非難する一方で、英仏等側は事実無根、あっても極少数だ、と反論することに。
この頃、バトルオブブリテンがたけなわの頃に、カテリーナ・メンデスが聞いていた、北フランスのドイツ空軍搭乗員に対する、英軍コマンド部隊、特にユダヤ人部隊の襲撃という噂だが、全くの噂とは断じにくい、様々な状況証拠が後世に残っているのが、現実だった。
実際に北フランス上空で撃墜された、とされるドイツ空軍の搭乗員の9割が戦死、又は行方不明になっているというドイツ空軍の公式資料が残っている。
正直に述べれば、北フランス上空で撃墜されるよりも、英本土上空で撃墜された方が英軍の捕虜として生き延びられる公算が遥かに高いのが、この当時のドイツ空軍の搭乗員の現実だった。
そして、その原因について、ドイツ空軍としては、北フランスで落下傘降下した搭乗員の多くが、密やかに北フランスの住民や潜入している英軍のコマンド部隊に密殺されているのでは、と推測している。
更にドイツ空軍の搭乗員、特に戦闘機乗りが嫌がることがあった。
こういった状況にある以上、爆撃機乗りならば、複数人で落下傘降下することになり、協力することで生き延びられる公算が高いが、戦闘機乗りならば、単独で落下傘降下することになり、それだけ危険性が高い事態が引き起こされるのだ。
こうしたことから、ドイツ空軍の戦闘機乗りは、何としても自らの出撃基地に生きて着陸しよう、と懸命に努力する事態が引き起こされていた。
生きて着陸出来ねば、そして、北フランスで撃墜されては、ほぼ確実に戦死が待っているのだ。
そうしたことから、燃料を少しでも温存して生還しよう、と増槽を捨てるのを躊躇う戦闘機乗りが続出することになった。
英本土で攻撃を受け、落下傘降下した方が、生き延びられる公算が高いのだ。
それなのに、自分から増槽を捨てて、燃料の心配をしつつ、北フランスで戦おうとする戦闘機乗りが少なくなるのも当然のことではないだろうか。
又、実際にこの当時の北フランスの現地では、様々な噂、ドイツ空軍の搭乗員が、どこそこで密かに殺されて、埋められてしまった、という噂等が乱れ飛んでいた。
例えば、アンネ・フランクは自らの日記の中で、その噂話の一つを記している。
「ル・アーブルからカレーまでの北フランスの沿岸地域一帯では、ドイツ空軍の搭乗員が落下傘降下したら、速やかにドイツ陸軍の将兵の庇護下に入らないと、北フランスの住民によって皆殺しの目に遭っている、という噂を私は聞いた。
更に聞けば、そう言った状況から、北フランス地域一帯で、ドイツ軍は強圧的な捜査等を断行して、現地の住民に対する迫害を強めており、それが更に北フランスの住民の間で、ドイツ軍への敵意を強める悪循環を引き起こしている、ともその噂話ではなっていた。
実際に、あながち嘘でも無いのだろう。
この(ブルターニュ半島)橋頭堡から、それなりの数の英軍のコマンド部隊が北フランス地域への潜入破壊工作を行っているとのことで、その中には私達の同胞、ユダヤ人部隊もいるとのことだ。
そして、そういったことをやってもおかしくない気が、それこそこれまでに積もり積もった恨み等からして私はならない。
でも、この噂が本当ならば、お互いに恨みを募らせ合った末に酷い戦争になる気がする。
本当にそんな戦争をして良いのだろうか。
これまでの(ドイツ政府の)仕打ちからして当然の報い、と姉は言うが、私は良くない気がする」
そんな感じで、様々な状況証拠が積み上がってはいるのだが、明確な証拠は残ってはいない。
だが、こういったドイツ空軍の搭乗員に対する攻撃の噂が公然と流れて、更にそのことがドイツ軍の報復を招いて、北フランスの住民の敵意を煽っていたのは、間違いないことだったのだ。
ご感想等をお待ちしています。




