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第2章―8

 そういった状況下にスペインはあり、その状況を欧州を中心とする世界各国政府は注視しているのが現実だが、その一方で、日本政府と中国国民党政府の関係は、1936年後半というより、1936年末になるにつれて、徐々に悪化する一方になっていた。


 それこそ(度々描いているが)中国本土内では、中国国民党政府が公認している、暴力を伴う反日活動が絶えないどころか、徐々に増える一方という現実があった。


 そして、中国国民党政府を公然とドイツ政府が支援しているという現実があり、更にはドイツ政府は中国国民党政府に肩入れする余り、

「日本は中国本土だけではなく、中国固有の領土である満蒙や台湾、琉球や朝鮮から、中国国民党政府が主張するように、領有権主張を放棄して完全撤退し、それらを中国国民党政府の領土にするのを、速やかに全面的に認めるべきだ」

と繰り返し訴えている現実があっては。


 幾ら日本国内の陸軍を中心とする親ドイツ派の面々が、ドイツとの友好関係樹立を訴えようとも、

「それならば、不当な中国国民党政府の主張に加担しているドイツ政府の主張を、まずは撤回させるべきではないか」

という反ドイツ派の日本国内の主張が強まるのは当然極まりなかった。


 何しろ、この1936年当時の日本では、故内田康哉外相の国会答弁における主張、超要約すれば、

「満蒙は日本の生命線であり、日本全土が焦土と化そうとも満蒙は放棄しない」

という主張が、日本の国民の輿論になっていたというのが現実だったのだ。


 こうした中で、ドイツ政府の強力な支援を受けた中国国民党政府の主張(更に言えば、ドイツ政府がそれを全面的に支持している)、

「満蒙や台湾、琉球、朝鮮を日本領から完全に放棄し、中国領と認めてまずは割譲せよ」

という主張を受け入れるしか、日本とドイツの親善は無い、というヒトラー総統率いるドイツ政府の主張を受け入れる余地等、日本政府というか、日本の輿論にある訳はなかった。


 実際、この当時に日本とドイツの親善に奔走していた大島浩陸軍少将をして、

「このような要求を受け入れるのが、日本とドイツの親善の第一条件等と言われては、私は絶望するしかなかった。ここまでの要求をドイツからされる位ならば、日本外交の将来は英米との関係改善しかない、と私は考えざるを得なかった」

と回想録に書かせるのが現実というものだった。


 だから、明治時代のメッケル少佐による指導等からくる歴史的経緯から、親ドイツ派が多数を占めていた陸軍内部でさえ、

「最早、ドイツとの連携は不可能だ。ドイツは我が日本の宿敵だ」

という主張が、徐々に強まっていくのが当然だった。


 だが、現実問題として、満州事変や(第一次)上海事変によって、米英仏との関係さえも冷却化しているのが日本の現実で、「世界の孤児」に日本はなっていた。


 そうしたことから、日本政府や軍部の上層部では、

「本格的な日中戦争が勃発した場合、万里の長城以南から日本人を全て避退させる等の手段を講じざるを得ない。そして、満蒙を確保した上で長期不敗体制を確立することで、中国国民党政府(とドイツ政府)の攻勢を耐えて凌ぐのだ。更には、米英仏との関係改善も図ろう」

という主張が、1936年末では圧倒的多数を占めるようになっている。


 更には、そうした情報が、内々ではあるが、上海特別陸戦隊上層部内では流れるようになっており、米内大尉に至っては、米内光政中将から、その情報はあながち間違っていない、という手紙を受け取るような状況にまで至っていた。


 更には、それを後押ししかねない事件が、つい最近になって起きていた。

(史実で言えば)西安事件が起きて、中国国民党政府は混乱していた。

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― 新着の感想 ―
「満蒙は日本の生命線」これは正しい。 出来れば日英同盟の復活の為の「引き出物」として、満蒙への英米の進出の権益を差し出す。治安は日本軍(及びその指導下の満州国軍)が守るので、英米に取っては理想的な市場…
 カナリス提督の暗躍が史実では「一歩も引かぬ」とやる気満々だった日本を「長城以南は放棄し満蒙を最終防衛線として耐え忍ぶ、思うところはあるが米英仏の助力を願うしか無い」とまで追い詰める、まさに転生者無双…
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