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第17章―1 バトルオブブリテン

 新章の始まりで、表題通りに主に英本土の航空撃滅戦がメインの話になります。

 1940年6月末、西部戦線における地上戦は、完全に一段落と言うか、かつての第一次世界大戦の西部戦線を思わせる状況になっていた。


 勿論、第一次世界大戦時と異なり、ベネルクス三国の本国は完全に征服され、フランス本土も大半がドイツの制圧下にある。

 だが、ノルマンディー、ブルターニュ半島を橋頭堡として、日英等の支援を受けて、フランス軍は固守しており、ドイツ軍も様々な事情、英本土を主な拠点とする空襲等の妨害により、この橋頭堡を容易には攻め落とせない、と考えるようになっていたのだ。


 そして、この地上戦の膠着状態を打破しようと、ドイツ軍、政府が立案したのが、英本土に対する大規模な空襲だった。

 英本土に展開する英空軍を主力とする航空隊に対する航空撃滅戦を展開して成功することで、英本土南部からノルマンディー、ブルターニュ半島橋頭堡までの制空権を、ドイツ空軍が掌握する。


 その制空権の傘の下、ノルマンディー、ブルターニュ半島橋頭堡に対する大攻勢を再開して、フランス本土を完全制圧し、その上で英仏日に講和を呼び掛けよう、というのが、ドイツ軍、政府の目論見だった。


 更に、その作戦を後押しする情報が、カナリス提督率いるアプヴェーアから発せられてもおり、ゲーリング以下のドイツ空軍首脳部に衝撃を与えていた。


「何、日本海軍航空隊の新型艦上戦闘機は、約1000海里、1800キロ余りの航続距離を誇るだと」

「つまり、ロンドン近郊を発進して、ベルリンまで爆撃機を護衛できるだと」

「艦上戦闘機で、それだけの航続距離を実現しているならば、新型陸上戦闘機ならば、もっと長い航続距離を持っているのではないか」

 そんな会話をドイツ空軍首脳部の面々は交わすことになった。


 更に、このことはヒトラー総統の激怒を招き、ゲーリングを詰問することになった。

「我がドイツ空軍の戦闘機で、日本海軍の艦上戦闘機並みの航続距離を持つ戦闘機はあるのか」

「ありません」

「ということは、劣等民族の日本人が開発した戦闘機の方が、我がドイツの戦闘機より優秀ということになるのではないか」

「そうとは言えません。余りに長い航続距離を持っていても、所詮は単座戦闘機。操縦士はそれだけの長時間の飛行に一人で耐えざるを得ず、必然的に疲労してしまいます。従って、そんな長い航続距離は、単座戦闘機には無用の長物で、それ以外の性能、速度や格闘性能等に、戦闘機は注力すべきなのです」

 ゲーリングは、懸命にヒトラー総統を言いくるめることになった。


(尚、余談に近いが、このゲーリングの考え、主張は必ずしも間違っているとは言い難い。

 単座戦闘機に自動操縦機能等が無い時代でもあるのだ。

 実際に、史実を絡めて説明すれば、ガダルカナル島上空の空戦でラバウル航空隊が苦戦を強いられ、又、マリアナ沖海戦で日本艦隊がアウトレンジ戦法に失敗したのが好例である。

 こうしたことからすれば、余りに長大な航続距離を単座戦闘機が誇っていても、全く意味が無い、と言う主張にも一理あるのだ)


 だが、その一方、ヒトラーの下には、ヒムラーを介してハイドリヒやシェレンベルクによって、日本の戦闘機の航続距離は正しい、という情報が届いていたことから。


「そうは言っても、ベルリン上空をロンドンから発進した日本海軍の艦上戦闘機が飛び回りかねない、というのは大問題だ。ドイツ空軍はそれを阻止せよ」

というヒトラー総統の命令を、ゲーリングは最終的には拒み切れない事態が起きた。


 そうした背景から、バトルオブブリテンは(この世界でも)起きることになり、大激戦が独英空軍を中心として、更に仏日等も加担する形で展開されると言う事態が起きることになったのだ。

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 ドイツ陸軍が平押しでノルマンブルターニュ橋頭堡に攻め寄せる──謂わゆる朝鮮戦争の釜山橋頭堡をめぐる攻防──の形になるかと思われたら1940年にはオーパーツじみた航続力を誇るゼロ戦の性能を未来知識で知…
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