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第15章―12

 この後の10話近くを掛けて、この世界の1940年7月末頃を基準とする欧州を中心とする世界各国の動きを描きます。


 この辺り、意外と知らない方が多いようですし、更に作者の私自身が、この世界の情勢を整理したいと考えて描くことにしました。

(尚、大国以外の欧州諸国については、ほぼ史実準拠になります。

 実際問題として、そう大きく変わるとは、私には考えにくかったのです)

 ともかく、そういった事態が、ユダヤ人について、1940年以降の世界的には、引き起こされることになったのだが。


 余りにも先走ることになったので、欧州諸国を中心に1940年7月末頃を基準にしての世界情勢を述べるならば。


 まずはイタリア政府は、ドイツ政府に対する好意的中立と言う態度を崩そうとはしていないのが現実だった。

 これは、イタリアが資源に乏しい小国と言う現実を、それこそ様々なイタリア国内勢力が、ムッソリーニ統領に認識させた結果としか言いようが無かった。


 ムッソリーニ統領自身は、

「バスに乗り遅れてはならない。ベネルクス三国を征服して、更にフランスを事実上は崩壊状態に陥らせたドイツに積極的に加担すべきだ。具体的にはドイツと同盟して参戦すべきだ」

と政府内で公言していたらしい。


 だが、様々なイタリア国内勢力、特に陸海空軍部が強力に反対する事態が起きた。

 更に言えば、軍部が参戦反対、と一致団結して公言しているのに、参戦することは無理があった。

 さて、何故に陸海空軍部が、イタリアの参戦に協力に反対したのかと言うと。


 まずは、陸軍の内情から述べれば。

「様々な装備の更新、特に小銃の更新は、まだまだ途中なのが現実です。更に言えば、新型小銃と旧型小銃では口径が全く違う以上、銃弾に互換性が皆無です。こんな違う口径の小銃が最前線で肩を並べて戦うような状態で、こちらから開戦する等、無謀にも程があります」

 そう陸軍が公言しているのが、現実だった。

 更に言えば、これは(史実でもそうだったが)全くの事実だった。


(度々の説明になるが、史実でも)イタリア陸軍は、第一次世界大戦の際のカポレットの大敗以降、弱い陸軍として世界に名を轟かせている情けない現実があった。


 実際にリビアにおける第二次イタリア・サヌーシー戦争、更には第二次エチオピア戦争でも、悪戦苦闘の末にイタリア陸軍は勝利を収める有様だった。

 それこそ、両方の戦争共に毒ガス等の投入が無ければ、イタリア陸軍は敗北していた、という陰口が世界の陸軍内で叩かれるのが現実と言っても、過言では無かった。


 こういった現実の前に、イタリア陸軍が甘んじていたわけでは決して無く、懸命に装備の改善等に努めていたのが(この世界でも)現実だった。

 この当時のイタリア陸軍は、日本と同様といえる6.5ミリ口径の小銃弾を19世紀末に採用していたのだが、(実際にはそんなことは無かったが)弱威力の小銃弾であるとの批判から、1938年に7.35ミリに口径を拡大した新小銃を採用したばかりだった。


 勿論、こういった小銃弾が19世紀末に採用されて、そのまま1930年代にまで使用され続けたのには、それなり以上のイタリアの事情がある。

 イタリアの工業基盤は、それこそ米英仏独と比べれば、日本と同様に弱体と言わざるを得ず、総力戦の際に大量の銃砲弾を生産する必要等からすれば、小口径で忍ぶべきという判断があったのだ。


(そして、そんなに威力は違わないという判断も併せてあったのだ。

 更に言えば、実際にその通りだったのだが、そうは言っても、表面上の印象等は拭い難い代物で、結果的に口径を拡大した新型小銃を、日本も同様だが、イタリアも採用することになったのだ)


 ともかく1938年に新小銃を採用したばかり、ということから、イタリア陸軍は新小銃への更新に大童としか、言いようが無い状況だった。

 更に言えば、陸軍の機械化を周辺諸国は懸命に図っているのが現実だが、イタリアの工業基盤の問題から、イタリア陸軍の機械化は遅々として進まない現実が突き付けられてもいる。


 そうした事情から、イタリア陸軍は参戦に絶対反対の立場を取らざるを得なかった。

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