第15章―2
実際のところ、米内藤子の想いだが、それなりに当たっているとしか、言いようが無いのが現状だった。
まずは、米内仁だが。
「しっかり訓練に励め。そして、欧州で日本海軍の名を高めろ」
「はい」
そんな感じのやり取りを海軍兵学校内において、先輩の菅野直らに指導されて送る日々を送っていた。
米内仁は想った。
色々とキツイ訓練が続いている。
それこそ海軍軍人ならば不要だ、と自分としては喚きたい、陸戦教程の訓練すら、海軍兵学校生に対して行われている現実があるのだ。
だが、その一方で、こうした訓練が不要だ、と言えるのか、と反問されれば。
そんなことはありません、と言わざるを得ないのが、現実なのだ。
本当に自らの養父にして、実の叔父になる米内洋六少佐が良い例ではないか。
(第二次)上海事変で特別陸戦隊の一員として奮闘して戦功を挙げた結果、様々な事情から常設化されることになった海兵隊に転属することになって、今では欧州で海兵師団の海兵大隊長として戦功を挙げるまでに至っているという現実がある。
そして、様々な適性検査等を受けた結果、自分も養父にして叔父と同様に、自分としては海軍本体の軍人になりたかったのに、結果的にだが、海兵隊の一員にさせられるのではないか、という危惧を抱かざるを得なくなりつつある。
だが、その一方で、義妹にして許嫁の藤子に激怒されそうだが。
その方が良いのではないか、という想いが、自分の脳裏では掠めてならない。
藤子が悪い女性ということは、決してない。
ある意味では、共に幼い恋が続いているだけかもしれないが、藤子は自分と結婚したい、と考えているようだし、自分も藤子と結婚することについて、満更でもないのだ。
だが、その一方で結果的に自分は藤子に流されて、結婚したいと考えているのではないか、という想いが浮かんでならないのだ。
カテリーナ・メンデスと会って、その後、(彼女は嫌がっていたようだが)何度か会う内に、自分としては藤子よりも彼女と結婚したい、という想いが浮かびだしたのだ。
とはいえ、彼女は自分を明確に拒絶する態度を示した。
更にその後、養父にまで、彼女が拒絶している以上は諦めろ、と訓戒された。
(とはいえ、彼女は養父に惚れ込んでしまっているようで、自分としては、何とも言えない想いがしてならない)
そんなことから、彼女のことを諦めざるを得ない、と自分は決断したのだが。
彼女の今後を考えれば、自分は海兵隊に入った方が役立てる気がしてならない。
その一方、自分の実母が(本人は絶対に認めないが)嫉妬心をこじらせてしまい、自分の異父弟妹を全て捨てて、自分の養父にして夫の後を追って、欧州に赴こうとするとは。
その結果として、自分の義妹にして許嫁の藤子に、多大な迷惑が掛かることになった。
自分の異父弟妹全ての面倒を、(色々な人の協力もあるが)藤子が看ることになったからだ。
この状況について、藤子は、
「自分の血を分けた(異母)弟妹の面倒を看るのは当然ですから、気にしないで下さい」
と手紙を自分に寄こす有様だが。
これはこれで、物凄い圧力が、自分に対して掛かる事態を引き起こしてしまった。
(藤子が、意図してそこまでやっていたら、本当に怖ろしい女性の気がして、自分は成らない程だ)
「ここまでしてくれる以上、許嫁と結婚するのが、男として当然だろうが」
そんな感じで、自分は教官や先輩達から、しょっちゅう言われるようになっている。
それに対して、自分としても、
「仰られる通りです。許嫁と結婚します」
と言わざるを得なくなっている。
本当に、自分の実母は何ということをしてくれたのだろう。
結果的にだが、藤子と自分が結婚するのを推進してしまった。
この辺り、一部の読者から誤解を生みそうなので、敢えて補足説明をします。
この世界というか、史実でもそうでしたが、家内部の扶養は家が行うのが基本でした。
だから、米内仁の弟妹の扶養は、全面的に米内家が看るのが当然なのです。
ところが、米内家を頼りたくなかった米内久子が動いたことから、米内仁の弟妹の扶養は、藤子の実家といえる小林家が全面的に看る事態が起きているうのです。
(勿論、実際には養育費等を久子や洋六が払ってもいるのですが、外観上はそう見えて当然です)
そんなことから、仁は許嫁の藤子の実家に弟妹の扶養を看て貰っている、という事態が生じて。
「ここまでしてくれる許嫁と結婚しないとは、人の道に外れる」
等と言われる事態に陥っているのです。
(尚、久子にしても色々と考えるところはあるのですが、米内家との様々な行きがかりから、藤子、小林家を頼った方がマシという考えをしているのです)
旧民法の家制度を知らない方からすれば、何でこうなるの、と言われそうなので説明しました。
ご感想等をお待ちしています。




