第13章―15
戦争でそんな残虐行為がある筈がない。
小説と言えど、そんな描写をするのは捏造にも程があって許されない、とかつて言われましたが。
本当にそうなのでしょうか。
私としては、報復の一環として、あり得る話として、描かせて貰いました。
こうした苛烈な結果となったドイツ対オランダ戦争だが、1940年5月中に終結した筈の戦争が、この後も様々な戦禍を引き起こしたと言えるのは、何とも言い難いことである。
更に言えば、それこそドイツの歴史学会とオランダの歴史学会の間で、それこそ内部対立まで生じた上で21世紀にまで続く大論争が、この戦禍については引き起こされる事態にもなった。
さて、何故にこのような事態が引き起こされたのか。
外部と言える米内洋六少佐が、この頃といえる1940年6月頃に聞いた事情を述べるならば。
「オランダに降下したドイツの降下猟兵に対して、残虐行為をユダヤ人部隊は行っただと」
「ええ。上海の恨みを晴らせ、を合言葉にして、様々な残虐行為が行われたという噂が」
「確かに上海市街でユダヤ人の民間人が虐殺されたのは事実だが、だからといって、私的な報復が許される筈がないだろうに」
「そうは言っても、オランダに侵攻したドイツ軍部隊が、
『オランダのユダヤ人は皆殺しだ』
と叫んでいると伝え聞いては、ユダヤ人部隊が激怒するのは当然では。
更に上海事件を主導したライヘナウ将軍が、オランダ侵攻作戦に従事していては、尚更にユダヤ人部隊が怒って当然では」
「確かにそうだが」
米内少佐と佐藤准尉は、そんな会話を交わすことになった。
実際、オランダに侵攻して来たドイツ軍部隊に所属する軍人の多くがそう叫んでいた、と米内少佐は様々な人から伝え聞いている。
その一方、実際にオランダの主要都市に対して、ドイツ空軍は無差別大量恐怖爆撃を行っており、大量のオランダの民間人が死傷する事態が起きている。
そうしたことを合わせ考えれば、ユダヤ人部隊が、オランダのユダヤ人全てが虐殺されると言う危惧を抱いて、更にそれに対する報復を考えて、ドイツ軍部隊に情け容赦のない態度を執るのも、本来的には許されないことだが、いわゆる気持ちはわかる、と言わざるを得ない気が、自分はしてならない。
更に言えば、それによるユダヤ人とドイツ軍の報復の連鎖は、凄まじい事態をオランダにおいて引き起こす気が、自分はしてならない。
佐藤准尉は声を潜めながら、米内少佐にささやいた。
「せめて殺すな、という制止する声が、ユダヤ人部隊内でも無いことは無いようですが、それはそれで、ドイツ兵の眼球を摘出して、一生暗闇の中で暮らせ、という行動を引き起こしているとか。本当に何とも言えない事態が起きているようです」
「そうだな」
米内少佐は、返事をするのも億劫な程に気が沈まざるを得ず、何とかそれだけ答えた後、この後でオランダの大地で、どれだけの死傷者が出るのか、と物思いに耽らざるを得なかった。
実際に米内少佐の物思いは、それなりに当たる事態が起きた。
オランダ国内で、ユダヤ人と密接な関係にあった等の難癖が付けられた末に、第二次世界大戦終結までに、ユダヤ人以外のオランダ人までも約10万人が虐殺された、と伝わる事態が起きた。
更に言えば、オランダ国内に留まったユダヤ人は全て殺戮された、とされる事態が起きた。
(実際、第二次世界大戦終結後にオランダに帰国したユダヤ人しか、現在のオランダ国内にはユダヤ人はいない事態が起きている)
ユダヤ人虐殺は許されない、という批判の声がオランダ国内外で高い現実がある一方、それならドイツ兵に対するユダヤ人部隊の仕打ちは何なのだ、という反論もあるのが現実だ。
ユダヤ人部隊の捕虜になっていたドイツ兵の多くが眼球を摘出される事態が起きている。
世界大戦終結後にユダヤ人部隊は彼らは戦傷から眼球を失った、と言い張ったが。
眼球を失ったドイツ兵の殆どが、ユダヤ人部隊にやられたと証言する事態が起きたのだ。
これで、第13章を終えて、次話から第14章になります。
独仏戦の始まりが終わり、第14章では、この世界の独仏戦の中盤(?)が描かれる予定です。
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