第2章―3
仏軍上層部の多くが、このような態度を執っては、仏政府上層部も、ドイツ軍のラインラント進駐に対して、単独で積極的な対応、要するに対ドイツ戦に踏み切ることを躊躇わざるを得なかった。
そうしたことから、仏政府は対ドイツ戦に踏み切るにしても、英政府の協力を得た上で行動しようと考えることになり、英政府に協力を求めたのだが。
この時の英政府の対応は、仏政府の期待を完全に裏切るモノだった。
これは既述のように、ヒトラー率いるドイツ政府の主張、仏ソ相互援助条約締結はロカルノ条約に違反しており、ドイツ政府は自国防衛の為にラインラントに軍隊を進駐させる、という主張を、英政府上層部の一部は、それなりに受け入れた事態から起きたことだった。
更に言えば、英政府の主流派にしても、第一次世界大戦で疲弊、衰えた英の国力は回復したとはいえず、更に世界大恐慌という事態に見舞われて、その回復にも努めねばならない現在、欧州大陸で戦争が起こって、それに英が巻き込まれるのは真っ平御免、というのが偽りのない本音だった。
だから、ドイツ軍が国境を越えて、他国への侵略を開始した訳では無く、単に自国内の非武装地帯に進駐しただけだ、更に仏にも仏ソ相互援助条約を締結するというロカルノ条約に違反した行為があるではないか、という英政府上層部の一部の主張を、英政府の主流派は自らの本音もあって迎えかねることになってしまった。
そして、こういった背景から、仏政府からのドイツ政府のラインラントへのドイツ軍進駐に対して共に協力して武力行使を行うべき、要するに対ドイツ戦を共に戦おうではないか、という主張を英政府は拒む事態が起きたのだ。
英政府としては、この問題は国際連盟に提起し、それによって解決すべき、と仏政府に勧告したのだ。
そして、こうなっては仏軍上層部の多くの態度もあって、仏政府としては、ドイツ政府のラインラント進駐に対して、仏単独での武力行使、要するに対独戦発動を諦めざるを得なかった。
もし、英の協力無くして、仏が対独戦を発動するとなると、ドイツの国力を考えるならば、軍の総動員を発動せざるを得ない。
そして、対独戦を速やかに終結させることが出来ればよいが、速やかに終結させられなかったら。
更に、仏国内も英同様に第一次世界大戦で国力を疲弊させ、世界大恐慌で国内が混乱しているのだ。
そうした状況から、国民の多くが内向きになって、反戦を叫ぶ現実があり、軍の総動員を発動した場合に、それこそ国民が戦争反対を叫んで暴動等を起こし、政府が倒れるのでは、と仏政府上層部の多くが危惧せざるを得なかったのだ。
そうしたことから、仏政府は、英政府の勧告を受け入れて、国際連盟にこの問題を提起することになった。
そして、国際連盟で、ドイツ政府によるドイツ軍のラインラント進駐に対して討議が為されたが。
ドイツ軍のラインラント進駐が、ヴェルサイユ条約及びロカルノ条約に違反することは、多くの国の賛同を得られたが、具体的な対ドイツ制裁発動までの賛同は得られなかった。
多くの国、政府にしてみれば、確かにドイツ政府、軍の行動は条約に違反しているが、他国を侵略した訳では無く、非武装地帯とされていた自国の領土内に軍隊を進駐させただけではないか、そんなことの為にドイツに制裁を行うまでのことはあるまい、非難声明を出せば十分では、と考えることだったのだ。
ともかく大山鳴動して鼠一匹ではないが、ドイツ政府によるラインラントへのドイツ軍進駐は、結果的に欧州に戦争を引き起こすことはなく、この時点では平和裏に終わることになった。
そして、このことは後々で大きな禍根を世界に引き起こすことになった。
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