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第13章―14

 そんな想い、米内洋六少佐と似たような想いを、日本海兵隊の多くの面々がしながら、ノルマンディー、ブルターニュ半島へと向かいつつあった頃、オランダ戦線は一応、終局を迎えつつあった。

 

 当初の予定では、第18軍を投入するだけでオランダをドイツは降伏に追い込める筈だったのだが、結果的に第6軍の多くもベルギーからオランダに転用されることで、オランダはドイツの前に降伏のやむなきに至ることになった。


 最終的に(この世界の)オランダ本土に展開していたオランダ軍全軍が、ドイツ軍への抗戦を断念して降伏を申し出たのは、5月25日のことだった。

 そう半月余りも、オランダ軍は抗戦を展開することが出来たのだが、所詮は蟷螂之斧と言われても仕方のない結末だったという人が出ても当然の終わりだった。

 

 何しろ結果だけ見れば、オランダ軍は半月程しかドイツ軍に抗戦できなかったのだから。


 だが、その結果は様々な意味で、ドイツ軍にしてみれば苦い勝利になった。


 例えば、ドイツ空挺部隊の損耗は甚大な事態が起きた。

 ドイツ軍の降下猟兵の父といえるシュトゥデント将軍は、このオランダ戦線が終結した後、

「オランダはドイツ軍降下猟兵の墓場と化したのだ。もう2度とドイツ軍が師団規模の空挺作戦を断行することは無いだろう」

と述懐せざるを得なかった。


 実際、ドイツ軍降下猟兵の多くの将兵にとって、文字通りに最期の地にオランダはなった。

 オランダの大地に降下した降下猟兵の中で約4割が、ヴァルハラに赴いたとされている。

 そして、生き残った降下猟兵にしても、過半数が戦線に復帰することが出来ない身となり、傷痍軍人として退役せざるを得なかった。


 これは文字通りに待ち構えていた(通称)イスラエル師団の銃砲火の中に、ドイツ降下猟兵の多くが飛び込んでいったことからして、当然としか言いようが無い結末だった。


 勿論、戦線に復帰可能だった降下猟兵を中心にして、この後に降下猟兵部隊の再建が行われてはおり、第7降下猟兵師団や第22空輸師団は再編制が行われた。

 だが、これだけの損害を被った現実があっては、ここで得られた戦訓から師団規模の降下作戦を、ドイツ軍は2度と行うことは無く、この後、第7降下猟兵師団等は事実上は精鋭の歩兵師団として扱われて、戦場に赴く事態が起きたのだ。


 シュトゥデント将軍は、次のようにも第二次世界大戦終結後に述べている。

「最終的にオランダ全土を占領することに成功した以上、ドイツ軍は対オランダ戦争で勝利したと言えるのは間違いない。

 だが、ハーグ等は降下猟兵にとって、目指すべきでは無かった、余りにも遠すぎた街だったのだ」

 

 そして、それ以外の部隊の損害も軽視できるモノではなかった。


 例えば、輸送機部隊は、この対オランダ戦争の結果として、開戦時に準備された輸送機の約3割が空中戦で失われることになり、残りの約7割にしても半数近くが何とか飛行場に帰還したものの、2度と出撃できない状態になったとされている。

 それが正しければ、対オランダ戦が終結した時点で、出撃可能だった機体は開戦時の4割を切る事態が起きたことになる。


 更にこの数字が正しければ、ドイツ空軍全体の輸送機の2割近くが、半月で失われたことにもなる。

 当然のことながら、輸送機の搭乗員の損害も多大な事態が生じてもいる。

 そして、ドイツ空軍にとって痛かったのは、輸送機の搭乗員の多くが教官であり、搭乗員育成に多大な困難を後々に引き起こすことになったことだった。

 

 ドイツ空軍の輸送機部隊が、この後、大規模な空輸作戦を第二次世界大戦終結まで行うことが無かったのも当然としか言いようが無い事態を、この対オランダ戦争は引き起こしたのだ。

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