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第13章―13

 そういった様々な苦難と努力の末に、5月中に仏本国内にユダヤ人が多数を占めるオランダからの難民はたどり着くことが出来ることになった。

 だが、その一方でベルギーからもユダヤ人の難民が加わる有様で、それこそ10万人以上の難民があてどもなく、何とかドイツ軍から逃れようとしているのが、この当時の現実だった。


 更に言えば、ドイツ軍の攻撃は急であり、ダンケルク近郊でベルギー方面にいる英仏軍主力と、仏本国との連携を完全に断ち切ろうとしている現実があった。

 こうしたことから、ベルギー方面に事前計画に基づいて侵入した英仏軍の主力は、ベルギー国内で徐々に孤立しつつあり、このまま行けば補給途絶によって無力化される危険が懸念されつつあった。


 こうした状況から逃れて、安住の地に何としてもたどり着こう、とユダヤ人が多数を占めるオランダ、ベルギーからの難民は考えて、様々な行動を起こしていたが、効果が中々挙がっていないのが現実だった。


 その一方で、英仏両国軍にしても、ドイツ軍の攻撃を完全に防いで、更に反攻に転じられる程の力が、自分達に徐々に失われつつある、ということを感じざるを得なかった。

 そうなると、仏本土全てをドイツ軍の攻勢から守り抜こう、というのは困難と言うより、不可能に近いことだと、英仏両国政府及び軍の最上層部は認識せざるを得なくなってくる。


 こうした現況に鑑み、それぞれの英仏両国政府及び軍は、激論を交わした末に、仏本国の一部を何としても保持すると共に、其処を拠点としての反攻作戦を立案することになった。


 具体的にはブルターニュ半島やノルマンディー半島を死守し、そこを何れは出撃拠点として、仏本土を奪還しようという方策が立てられることになった。


 そして、こういった戦略、作戦に基づいて、部隊の移動、集結が行われることになったのだ。

 更には、そう言った情報が日本海兵隊等にも届くことになった。


(本来ならば、計画段階から日本政府、軍も英仏両国政府、軍と協力して立案すべきなのだろうが。

 如何せん、この当時の欧州にいる陸戦力は、それこそ1個海兵師団しかない、と言っても過言では無く、こういった戦況に際して、発言権は皆無と言っても過言では無かったのだ。


 勿論、艦隊戦力は欧州においても端倪すべからざる程度に、日本は保有してはいたが、それが直接、陸上の戦線の推移に多大な影響を与えることは不可能に近いことだった。

 日本の航空戦力にしても、これについては、日本の艦隊戦力とほぼ同様だ、と自他共に認めざるを得ないのが現実だったのだ)


 そうしたことから、日本海兵隊やユダヤ人部隊は、ノルマンディー、ブルターニュ半島を更に目指して、オランダやベルギーからの難民等を庇護しながら移動しようと、仏本国にたどり着いてすぐに安心する暇もなく努めることになった。


 この頭越しに決められた状況に、不満を持たない海兵隊を始めとする日本軍上層部の面々は、それなりどころではなくいるのが現実だったが。

 そうは言っても、ドイツ軍の攻勢を凌がねばならない現実がある以上、不平を単に零して、英仏両国軍への協力を拒む訳には行かない。


 米内洋六少佐も、同じ日本海兵隊を始めとする他の面々と同様に不満をかなり抱え込むことにはなったが、ひたすらオランダやベルギーからの難民等を庇護し、ノルマンディー、ブルターニュへと日本海兵隊への一員として向かうしか無かったのだ。


「本当に遠すぎる街だな」

 そう米内少佐は、部下になる佐藤准尉らに半ばぼやかざるを得ない状況だった。

 部下達も米内少佐と同じ思いをしつつ、難民を庇護しながら、ひたすらノルマンディー、ブルターニュ半島を目指して進むことになった。

 えっ、とツッコミの嵐が起きそうですが。

 私が調べる限りですが、史実の独仏戦でも、ブルターニュ半島等を死守して、何れは反攻作戦を展開しよう、というのを仏政府、軍は具体的に検討した模様です。

 最も史実では結局、ヴィシー政府が樹立される事態に至るのですが。


 この世界では、ブルターニュ半島等を死守して、何れは反攻作戦を展開しようと言う流れになります。


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