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第13章―10

 米内洋六少佐は、ユダヤ人等のオランダ本国からの難民脱出について、そんな想いをしつつ、難民を守る為の後衛戦闘を繰り広げながら、オランダを去っていくことになった。

 更に言えば、米内少佐と同じような想いをしながら、日本海兵隊やユダヤ人部隊、仏の第一軽機甲師団の面々は、オランダからベルギーを経て、フランス本国へと取り敢えずは向かおうとすることになった。


 その一方で、こういったオランダ本国から避難しようとする難民の群れを、ドイツ軍が見逃す筈がないのも現実だった。

 ドイツ軍は、陸空軍が協力して、こういった難民の群れを何としてもオランダから脱出させまい、と努める事態が起きた。


 アンネ・フランクは、その日記の中で、オランダからベルギーへ、更に仏本国へとひたすら歩いた、この時のある日のことを、次のように描いている。

「体中が疲れ、痛くて堪らない。でも、歩くしかない。私は両親や姉と共に朝から懸命に歩き、何とか夕暮れまでに30キロ余りを歩くことが出来た。父や母が荷物を背負ってくれたお陰で、自分や姉は荷物無しで歩けたけど、それでも、まだ満9歳の私にとってみれば、余りにも辛い日だった。本当に何時になれば、歩かずに済むのだろう。そんな想いさえ、浮かんでしまう。


 両親や周囲の大人の人達の話によれば、ドイツ軍は私達を何としてもオランダから脱出させまい、と色々なことをしているらしい。

 実際にドイツ軍の爆撃機が爆弾を投下するのを私達は遠くから見て、慌てて地面に伏せることで、私や両親、姉は無傷だったが、爆弾で死傷する人が今日も出たとのことだ。


 日本海兵隊やイスラエル師団が、懸命に後方から追撃して来るドイツ軍の前に立ち塞がって、自分達を守ってくれていると聞いている。

 更には英仏日の海空軍も、懸命に自分達を守ろうとしているとのことで、日本海軍の戦艦が主砲を撃ってまで、自分達を守ろうとしてくれていると聞いている。


 本当に何とか私や両親、姉、全員が揃って生き延びたい。

 そう念じながら、今日の私は今から眠る」


 実際問題として、難民の多くが歩いての避難を選択せざるを得ないのが現実だった。

 自動車や自転車等が、オランダから仏本国へ脱出を図ろうとする難民の間で全く利用されなかった訳ではない。

(難民の避難に際して鉄道を使えばよいではないか、と言われそうだが、それこそ戦時中であり、軍用物資や兵員等の輸送で手一杯で、難民輸送にまではとても手が回らないのが、この当時のこの辺りの鉄道の現実だったのだ)

 だが、そういったモノを利用して最後まで脱出できた難民は、余程の幸運と言うのが現実だった。


 何しろ自動車や自転車等を活用して、オランダから仏本国等へ避難しようとすると、どうしても目立つ事態が引き起こされてしまう。

 更には、それこそ燃料や故障等の問題も考えあわせていくならば。

 最終的にはだが、殆どの難民が、着の身着のままでの徒歩による脱出行になるのは、止むを得ないで済ませる訳には行かないが、余りにも重い現実と言うしかなかったのだ。


 そして、徒歩での避難行の中で、どうしても脱落者が出るのは仕方ないでは済まないが、どうにも避けられないことになるのも、哀しい現実だった。

 後衛戦闘を行ったイスラエル師団や日本海兵隊の一部は、何とかこうした脱落者を救って、共に脱出しようとしたが。

 

 殆どの脱落者が自分達を見捨てていくように、イスラエル師団等に頼む事態が起きることになった。

 彼らにしても、このまま放置されては、色々な意味で死ぬ運命が待っているのは分かっていた。

 だが、それによって避難中の同胞を死なせるわけにはいかない、と哀しい決意で、自分達を捨てるように頼んだのだ。

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