第12章―8
溢水地帯の説明に言葉不足があるのに気付いたので、冒頭部でメタいことになりますが、補足説明を入れました。
猶、話中で「ある程度にしか、冠水、溢水しないように」という表現がありますが、この辺りは、それこそ予めの計画によっても地形等の制約から様々になる現実から、ぼかした表現にしています。
あるところでは20センチ程、あるところでは70センチ程のように様々な冠水、溢水地帯が生じるのが、現実の洪水戦術のようだからです。
だからこそ、攻撃側が頭を痛める事態が起きるとか。
後、更に余談を付け加えれば、こういった冠水、溢水には数日掛かるのが、オランダの洪水戦術の現実なのです。
その為に史実でも行われましたが、効果が大きく上がる前に、オランダは降伏する事態が起きました。
尚、溢水地帯について、それこそ侵攻作戦に船舶を投入すれば良いではないか、と考えられそうだが、そう簡単には言えないのが現実だった。
オランダ軍の洪水作戦だが、予めある程度にしか、冠水、溢水しないように計画立てて準備された代物でアリ、それこそ河川用の平底船にしても、かなり喫水が浅い船でないと、こういった溢水地帯を進むのは困難な代物というか、その程度にしか多くの範囲では冠水、溢水しないのが基本的だった。
だから、大軍を船に載せて、溢水地帯に侵攻すればよい、とはとても言えないのが現実なのだ。
そんな河川用の平底船が、大量にある訳が無いのだから。
かといって、それを大量に予め建造するとしても、戦後までも考えるならば、本当に費用対効果的に極めて効率が悪いことになり、まだ、歩兵に侵攻させた方がマシということになるのだ。
そして、20世紀以降の戦車や装甲車、自動車等にとっても、溢水地帯への侵攻は悩むしかない。
それこそ21世紀の自動車でさえ、少しでも車内が浸水したら、電気系統等の故障が起きるリスクが極めて高いのが現実なのだ。
この当時ならば、尚更にそういった危険が高いことになるのは当然である。
完全防水した装甲車両等を開発、製造して、大量投入すれば良い、と言われるだろうが。
その為の様々な費用、資材を考える程、そんな特化した装甲車両の大量保有等、費用対効果的に極めて効率の悪い代物になってしまう。
そういった背景から、オランダ軍は軽武装でも、それなりにドイツ軍の侵攻に対して、洪水作戦を用いることで対処できると考えており、日本海兵隊やユダヤ人部隊は、その洪水作戦に唸ることになったが、その一方で、これが既に旧式の作戦、戦術と言えるのにも気づいた。
今では空挺部隊を使用したり、空軍による大規模爆撃を都市に行ったりする作戦、戦術が実行できるのだ。
そういった作戦、戦術に対して、洪水作戦は何処まで対処できるのか、というと、冷たいようだが、そう役立つ作戦といは言い難い。
ドイツ軍は、ノルウェー戦で空挺作戦を実行しており、都市への大規模空襲を行なったりもしている以上、オランダにもそういった作戦を行うのではないか。
実際、日本海兵隊やユダヤ人部隊の懸念は当たっていた。
ドイツ軍はオランダ侵攻について、発想を大きく変えて侵攻作戦を発動することになっていた。
地上部隊の進撃に加えて、大規模な空挺部隊の降下や都市に対する無差別爆撃を併用することで、オランダを屈服させようとしていたのだ。
だが、細かいことを言えば、これは窮余の作戦と言っても、過言では無かった。
ドイツ軍の主力、最大の矛先といえる装甲部隊の多くが、ベルギーからフランスへ、具体的にはアルデンヌ地方を抜けて、フランスへの大規模な侵攻を行うことになっていた。
(史実でも、ほぼ似たような形で行われた)マンシュタイン将軍が中心となって計画されたフランスへの一大侵攻作戦である。
それに合わせて、オランダ、ベルギーにも侵攻し、オランダ、ベルギーを早期に降伏させることで、フランス政府、国民の抗戦意識を挫いて、フランスを降伏させるのを最終目的としていた。
更に言えば、その大勝利によって、イタリアやバルカン半島諸国をドイツ寄りにして、あわよくば同盟国として、味方として参戦させようとも考えられていた。
何しろノルウェー戦は表面上は勝利しているが、スウェーデンが英仏日側に事実上は味方する等、ドイツにしてみれば、余りにも不本意な状況になっている。
こうした状況を打開するためにも、オランダ、ベルギー、フランスへの侵攻作戦において、一大勝利を収めようとドイツ政府、軍は考えることになっていた。
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