第12章―4
そんな動きが、英仏両国政府の背後からの後押しを受け、日本政府及び陸海軍内部で色々とあった末に起きることになったが。
欧州に派遣されている海兵隊を中心とする面々は、色々と困惑する事態が起きることになっていた。
「オランダ、具体的にはアムステルダム周辺に(日本)海兵隊を派遣して欲しいか」
米内洋六少佐は、急な指示に驚くことになった。
更にその内容に、自ら頭を抱えることになった。
「取り敢えずは1個海兵大隊を派遣することにする、その海兵大隊長は自分が務めろだと」
米内少佐は、内心では途方に暮れるような想いしかしなかった。
だが、この辺りについては、更なる事情が日本本国等から届き、又、自分自身も様々な伝手、例えば、カテリーナ・メンデスとの伝手から、半分裏混じりと言って良い事情を知るにつれて、米内少佐は、徐々に覚悟を固めて動くしかない状況に追い込まれていくことになった。
この辺りについて当初の時点では、米内少佐が知らなかった裏事情まで含めて描くならば。
オランダというより、アムステルダムは、(史実でもそうだったが、この世界でも)世界中のユダヤ人社会の間では極めて高い声望を誇る街だった。
(更に細かいことを言いだせば、既述のようにセファルディム系とアシュケナージ系の問題まで絡んでくることでアリ、更にはユダヤ教の宗派問題まで絡んでくることにはなる。
だから、あくまでも一般論に近いことではあった)
その一方で、(この世界では、史実と異なり)英本国軍の外人部隊として、世界中から集められたと言って良いユダヤ人部隊が、日本政府の裏からの働きかけもあって編制されつつある現実があった。
又、第二次上海事変の際に起きた上海ゲットーからのユダヤ人脱出を支援した事態から、日本軍、特に海兵隊は親ユダヤである、と世界中から考えられているのが現実と言っても過言では無かった。
そんなこんなのことが相まったことから、実際には日本もオランダも、更に各国政府、軍も共に意図していなかった、と言っても全く過言では無かったのだが。
日本政府は、オランダ政府をドイツ軍からの侵略に備えて、海兵隊等の支援を予めオランダ本国に送ること等で支援しようとしている。
更に言えば、こういった動きについて、日本政府は暗に否定しており、オランダやその周辺諸国と言える英仏両国も否定していると言って良いが。
第二次上海事変でユダヤ人保護の声を挙げた米内洋六少佐が、1個海兵大隊を率いて、オランダに赴かれるとのことだ。
更に言えば、米内洋六少佐は、日本の米内光政首相の親戚であることから、その内命を受けて、オランダに赴くことになったらしい。
との米内少佐にしてみれば、根も葉もない噂が垂れ流される事態が、当時は起きることになった。
更に厄介と言えたのが、それこそナチスによるドイツ国内のユダヤ人迫害が激化するにつれて、オランダを始めとするドイツ周辺国へのユダヤ人の亡命が、既に相次いでいたことである。
そうしたことから、本来的には英本国軍の外人部隊に過ぎない筈のユダヤ人部隊の間では、
「欧州本土の同胞であるユダヤ人を何としても救うべきだ」
との声が既に高まっている現実があった。
その為に米内少佐が率いる1個海兵大隊が、オランダ本土に派遣されるだけの筈が、英軍のユダヤ人部隊までが、それに協力してできる限りの将兵を、オランダに派遣しようとする事態が起きることになった。
更にここまでの事態が起きれば、欧州内のユダヤ人に様々な影響を与えて、又、米本国のユダヤ人社会等にも多大な影響を与えるのは、当然としか言いようが無かった。
この為に後述する多大な影響が、引き起こされることになったのだ。
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