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第02話 美少女来襲!学園大混乱

 

 その日が来た。もう起きる時間だったが、どうしても起きたくなかった。たぶん、これが俺にとって一番の難題だった。自分自身と向き合うこと。それは簡単なことではなかった。


 まだ朝早く、鳥たちはようやくさえずり始め、太陽はまだ顔を出し始めたばかりだった。幸いなことに、今は夏ではなく、春が始まったばかりだった。しかし、そうは言っても、俺は起きようと努力し……そして、すぐに諦めた。


 突然、白鳥が現れた。彼女は勢いよくドアを開け、その衝撃で俺は即座に飛び起きることになった。


「カワキさん、何してるの!?心臓が止まるかと思った!」


 ドアの音があまりに大きかったせいで、俺の心臓はまだドキドキしていた。


「ごめんね。あなたのママに起こしてって頼まれたから、こうするしかなかったの。」


 彼女は俺をじっと見つめながら、不安そうな顔をしていた。そして、ニヤリと笑いながら、俺の方へとゆっくり近づいてきた。


「起きられないの?このままだと遅刻しちゃうよ?」


 その言葉に俺は観念し、ようやく布団から抜け出した。彼女も一緒に部屋を出た。俺はまだ眠気が残っていたが、彼女は朝から驚くほど元気いっぱいだった。


 朝からそんなに元気なの、すごいな……。


 下へ降りると、彼女がどれだけ朝食の準備を手伝ってくれたのかがわかった。その後、彼女はシャワーを浴びに行き、俺は朝食を食べることにした。まだ時間はたっぷりあった。


 ゆっくり朝食を取り終えたとき、弁当箱が青い風呂敷で包まれているのに気づいた。しかし、それとは別に、母がもう一つのお弁当を準備していた。今度はピンクの風呂敷だった。それを見た瞬間、俺は驚き、じっとその弁当箱を見つめてしまった。


 これはつまり……白鳥と俺が一緒に学校へ行くということだ。


 それはちょっとワクワクする展開だった。


 でも、一つ疑問があった。彼女はどんな制服を着るんだ?


 気になった俺は、母に尋ねた。


「言い忘れてごめんね。今朝、白鳥ちゃんと話していてね。彼女のご両親が、あなたと同じ学校に通うようにってお願いしてきたのよ。それで、私が学校の校長先生と話して、書類さえ出せば、今日から登校できることになったの。」


「そうなんだ……。でも、制服は?」


「大丈夫。こういう時のために、一着用意しておいたの。」


 母は得意げな顔をしていた。まるで、すべて計画通りだったかのように。


「先に言ってくれよ……。」


 食事を終えた俺は、白鳥が降りてくるのを待った。春服の制服姿の彼女を見るのが楽しみだった。


 そして、ついに彼女が現れた。


 白く美しい足が映える、セーラー襟のブラウスにグレーのプリーツスカート。それに赤いリボンがアクセントになっていた。長い金髪が腰まで流れ、彼女の魅力をさらに引き立てていた。


 これは……誰だって見惚れる。


「どう?似合ってる?」


 彼女は愛らしい笑顔を見せながら尋ねた。


「えっと……かわいいよ。」


 恥ずかしさに声が震えたが、それが本音だった。


「じゃあ、学校へ行こう。」


 彼女は朝食を食べ終え、お弁当を手に持ち、俺たちは一緒に家を出た。


「行ってきます!」


「いってらっしゃい!」


 学校へ向かう道すがら、期待と同時に少しの不安もあった。


 学校での俺たちの関係を、周りがどう思うのか……。


 そして、学校に着くと、案の定、白鳥に向けられる視線が多かった。


 だが、彼女はそんなことを気にする様子もなく、軽く手を挙げながら「やっほー」と無邪気に挨拶していた。


 視線の数は驚くほど多く、女子生徒たちも彼女を感嘆の眼差しで見つめ、男子生徒たちはまるで恋に落ちたかのようだった。


 それほどまでに、彼女の存在感は強烈だった。


 白鳥は相変わらず優しく微笑んでいたが、周りを見渡すと、俺に向けられた視線も多かった。それは羨望と嫉妬に満ちたものだった。当然の反応かもしれないが、大勢に見られるのは居心地が悪かった。


 そもそも、俺には友達がいなかった。だからこそ、これほどの注目を浴びるのは正直うんざりだった。


 そして、校内に進むにつれ、その視線はさらに増していった。しかし、白鳥は途中から挨拶をやめ、ただ静かに微笑みながら、両手でカバンを抱えるように持っていた。


 俺たちは、彼女が入学手続きをするために別れた。俺は一人で教室へ向かったが、まだ多くの視線を感じていた。


 白鳥を見た生徒たちは、まるで「一目惚れ」したかのようだった。本気を出せば、彼女は世界を征服できるかもしれない。しかし、それが彼女の目的ではなかった。


 …いや、俺の理解が足りないだけなのか? 彼女はまず「転生てんせいした神々《かみがみ》を探している」と言っていた。それなのに「普通の生活を送りたい」とも話していた。どっちが本当なんだ? それとも、どちらも本心なのか?


 授業が始まる前に、自分の席についた。


 ちょうど先生が入ろうとしたとき、何かに気を取られたようだった。


 一瞬、時間が止まったような感覚があり、少し間を置いてから、聞き覚えのある声が廊下から響いた。


 そして先生が再び教室へ戻り、黒板の前に立った。


「今日は新しい生徒が転入する。入っていいぞ。」


 その言葉とともに、新入生が教室へ入ってきた。


 ……驚いたことに、それは白鳥だった。


 俺は教室の後ろの席に座っていたため、その光景をはっきりと目にすることができた。


 他の男子たちも同じように驚いていたが、彼らの目は純粋な憧れに満ちており、まるで教室に春が訪れたかのような雰囲気になった。


 白鳥はチョークを手に取り、黒板に名前を書いた。そして、振り返って微笑みながら自己紹介をした。


「川城白鳥です。みなさん、よろしくお願いします!」


 その瞬間、クラスの男子たちは彼女をまるで「天から舞い降りた女神」のように見ていた。


 近くで、誰かが小さくつぶやくのが聞こえた。


「……神様、ありがとう……。」


 さすがに、それを聞いたときは少し引いた。


「では、席についてくれ。」


 先生の指示に従い、白鳥は空いている席を探し始めた。


 男子たちは彼女を熱心に見つめていた。おそらく、あとで必ず話しかけに行くだろう。


 しかし——


 白鳥は俺の姿を見つけると、一瞬驚いた表情を浮かべ、次の瞬間——


 まるで子供のように無邪気に、俺に抱きついてきた。


「わぁ!ケイくん!同じクラスなんて嬉しい!」


 彼女は俺にしがみつき、思い切り抱きしめてきた。その感触は心地よかったが、この状況はあまりにまずい。


 案の定、教室中の男子たちの視線が俺に突き刺さった。再び、嫉妬と怒りに満ちた眼差しを向けられる羽目に。


 ……正直、地獄だった。


 しかし、その中に一つだけ異なる視線があった。


 それは、(ひかる)(まい)さんだった。


 彼女は昨日、俺のことを心配してくれた唯一の存在で、普段からよく話している相手だった。


 彼女は窓際の二番目の席に座っていて、俺たちの様子をはっきりと見ていた。


 俺が彼女の方を見ると、彼女は一瞬、何かを考えたような表情をし、それからすぐに目をそらした。


 怒っているのか? それとも別の感情なのか?


 よく分からなかったが、その反応はどこか妙だった。


 一方で、白鳥はさらに強く俺に抱きついたまま、楽しそうに微笑んでいた。


 ついに先生が口を開いた。


「……へぇ、お前たち、随分と親しいんだな。」


 彼は特に驚いた様子もなく、淡々とした口調だった。


 この先生はまだ若いが、やる気があるわけでもなく、時折妙に率直なことを言うタイプだった。まるで漫画に登場する脇役教師のようだったが……彼がそんなに重要な役割を担うとは思えなかった。


 とはいえ、この誤解は早めに解いておくべきだと思った。


「ただの友達です。」


「ううん、付き合ってるよ。」


 ——俺たちの言葉が同時に重なった。


 だが、白鳥の発言の方が圧倒的にクラス全体に響き渡った。


 一瞬、教室内の空気が凍りつく。


 そして、ある男子生徒が立ち上がり、叫んだ。


「そんなの信じるわけないだろ!!」


 白鳥は俺からゆっくりと身を離し、挑発的な笑みを浮かべながら言った。


「信じてくれないの? じゃあ、証明してみせようか。」


 彼女は俺の方を見つめながら、まるで何も考えていないような無邪気な声で続けた。


「キスすれば信じてくれる?」


 ——瞬間、俺は真っ赤になった。


 まともに言葉を発することさえできなかった。


 一方、さっきの男子生徒は無言で席に戻ってしまった。


 なんとも言えない微妙な空気が教室中に漂う。


 白鳥はそのまま教室の後方へと歩き、右側の列の席に腰を下ろした。


 ……俺の人生、終わったかもしれない。


 いや、それよりも——


 唯一の友人だった(ひかる)さんも、今の件で俺のことを嫌いになったかもしれない。


 俺の心には、深い絶望が広がった。


 だが、それでも、周りの視線は変わらず俺に注がれていた。


 ふと川城さんを見ると、彼女は満足そうな笑みを浮かべていた。


 まるで「正しいことをした」と言わんばかりに——

 その表情を見て、なんとも言えない気持ちになったが……今はそれどころじゃない。

 授業が、もうすぐ始まるのだから。

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