第11話 新たにお願いしたいことがあります。
その会話の後、舞さんと一緒に再び部室へ向かったが、すぐに下校時間になったため、そのまま帰ることにした。
白鳥は特に気にしている様子もなく、まるで舞さんと一緒にいると何も心配しないかのようだった。それはとても不思議だったが、もしかすると単純にお互いの信頼が厚いのかもしれない。
今、俺は自分の部屋のベッドに横になりながら、今日起こったことを振り返っていた。すべてがあまりにも急で、じっくり考える余裕すらなかった。でも、あまり考えすぎるのもよくない。他にもやるべきことがあるんだから。
白鳥は自分のベッドで宿題をしていた。……俺もやるべきか?このままだと、彼女にすぐ追い抜かれてしまいそうだ。
そう思いながら、俺はベッドから起き上がり、机へ向かった。そろそろ宿題を片付ける時間だ。
ちょうどその時、母さんの声が聞こえた。
「白鳥、圭、ご飯できたわよ」
「はーい、すぐ行く」
何も考えずにそう返事をして、部屋を出た。その瞬間、ふと階段の向こうを見ると、食卓には天ぷらと寿司が並べられていた。
階段を降りようとした時、ちょうど白鳥が部屋から出てきて、俺と同じように階段を降りるところだった。
彼女は俺を見るなり、にこっと笑い、まるで階段の前で俺を待っているかのように立っていた。
しかし、その笑顔はだんだんとからかうような表情に変わっていった。何か言いたいことがあるけど、言わない――そんな感じだった。
俺はそれを無視し、疑問を抱きながらも彼女の隣へと歩いていった。すると、白鳥は再びこちらを見たが、今度は何事もなかったかのような顔をしていた。
「圭くん、夕食が終わったら、私の部屋に来てくれない?」と、突然恥ずかしそうに言われた。
その言葉に驚いたものの、俺は頷いた。彼女は微笑み、そして二人で階段を降り切り、夕食をとることにした。
夕食後、下書きや宿題をしようと考えていたが、あんな突然の出来事のせいで、やりたかったことが少し後回しになってしまった。
食事中、彼女はまるで天にも昇るような美味しい料理を味わっているかのように満足げに食べ、テーブルに並ぶ各料理を元気に褒めていた。一方で、俺は彼女の頼みが何を意味するのか、あまりに考えすぎているのではないかと思い悩んでいた。
また、母は彼女の料理への賞賛にとても満足しているようで、その様子はまるで少女たちが互いに褒め合っているかのようだった。
料理を試すのは今回が初めてではなかったが、なぜか以前よりも多く褒める様子だった。
結局、食事が終わり、皿が片付けられる間、俺はしばらくテーブルに座っていた。そして、彼女はウインクして「さあ、さあ、もう時間よ」と言わんばかりだった。
俺は立ち上がり、彼女の後ろをついて階段を上り、約束通り彼女の部屋へ向かった。シャワーを浴びたばかりで、まだ少し湿った甘い香りの彼女の髪も感じた。
彼女が部屋の扉を開け、二人で中に入る。ここには何度も来たことがあるので、ただ彼女の話を聞こうと思った。結局、どれくらい時間がかかるのかはわからないが。
彼女はベッドに腰を下ろし、ため息交じりに話し始めた。俺は、前回のようにならないようにと、ベッド以外の座る場所を探しに回った。
すると、俺が彼女の机の椅子に座ると、彼女は真剣な表情で俺を見つめた。
「さて、今度は言って。何を伝えたかったの?」
「明日…明日投票があるでしょ?だから、圭くんがどっちに投票するのか知りたいの。」
「うん、知ってるよ。でも、それがどうかしたの?」
彼女は何かを言うべきかどうか迷っている様子だった。緊張しながらベッドの上で動き、より良い姿勢を探しているようだった。
そんな彼女の姿を見て微笑んでしまったが、同時にあることを思いついた。これは彼女が今まで俺をからかってきたことへのちょっとした仕返しになるかもしれない。
俺はニヤリと笑い、わざとからかうように言った。
「さあ、どうしようかな。もしかしたら、あの子に投票するかも。だって、すごく魅力的だったし。」
俺の言葉を聞いた瞬間、彼女の表情が険しくなった。
「私はあなたの彼女なのよ!私に投票するべきでしょ!」
そう叫びながら、彼女は突然ベッドから飛び上がった。頬を真っ赤に染め、まるで今の発言が自分への侮辱だったかのように見えた。
いや、でも…よく考えてみると、彼女は本気で『俺の彼女』という設定に入り込んでいるようだ。もちろん、それ自体は悪いことではない。むしろ、このままいくと俺の心臓がもたないかもしれない。
それに、彼女の純粋な仕草や可愛らしい反応は、どうしても俺の目を引いてしまう。
とはいえ、「役になりきりすぎだよ」なんて言って傷つけたくはない。だから、話を続けることにした。
「彼女だからって理由だけじゃダメだよ。何か俺のためにしてくれないと。」
彼女はうつむき、俺の目線から表情が見えなくなった。そして静かに部屋のドアを閉めると、再びこちらを向いた。
次の瞬間、彼女はゆっくりと肩からブラウスを滑らせ始めた。白くて柔らかそうな肌がちらりと見えた瞬間、俺は息をのんだ。
……いやいや、明らかにこれはマズい。まさか、本気にしてるのか!?止めなければ。
「……いいよ。これで満足でしょ?私の…体を。」
彼女の言葉は恥ずかしそうに、まるで恋愛小説のヒロインのような弱々しい眼差しと共に紡がれた。
「おいおいおい!ちょっと待て!そういう意味じゃないって!」
俺は動揺しながら、慌てて視線を逸らした。軽くどもりながら、必死に頭を下げる。
しかし、そんな俺に向かって、彼女はゆっくりと歩み寄ってきた。俺が視線を逸らしている間にも、彼女の声が近づいてくる。
「……圭くん、私に投票してくれるよね?」
その場の空気が一気に重くなった。俺にとっては耐えがたいほどの圧力だったが、彼女にとってはどうやら満足のいく展開らしい。顔を赤らめ、足元もおぼつかないのに、確実に俺へと迫ってくる。
「だって……私の体なんだから。これでいいでしょ?」
彼女はその言葉を何度も繰り返しながら、ついに俺の目の前までやってきた。
「…わ、わかった!投票するから!だから、それ以上やめてくれ!」
結局、俺の負けだった。俺は彼女を少しからかうつもりだったのに、逆に完全にやられてしまった。緊張しすぎて顔をまともに上げることすらできなかった。
すると、どこかぎこちない笑い声が聞こえてきた。
「……え?」
そっと顔を上げると、彼女が必死に笑いをこらえているのが見えた。指先で軽く口元を押さえながら、まるで「勝った」とでも言いたげな表情を浮かべていた。
――まるで、最初から勝利が決まっていたかのように。
じゃあ、一体何のために俺を部屋に呼んだんだ? 俺の反応なんて、最初から読まれていたってことか?
そんなことを考えている間に、彼女はそっと肩からずり落ちたブラウスを元に戻した。
……くそっ、何だかまた負けた気がする。
彼女は俺の前で数回クスクスと笑った後、再びベッドに腰を下ろし、真剣な表情で俺を見つめた。
「……実は、お願いがあるの。」
「お願い?」
「投票の確認をしてほしいの。彼女が票を操作する可能性がある。そうすれば、彼女は自分を勝者にできる。」
彼女の言葉に驚いたが、それでもすぐには答えず、彼女を見上げながら考え込んだ。
「どうしてそんなに確信が持てるんだ? 可能性がないとは言わないけど、ただの疑問だよ。」
彼女は自分の言葉の重みをまるで理解していないかのように、無邪気に微笑んだ。
「さあ? なんとなく、そんな気がするの。ふふっ。」
正直、少し拍子抜けしたが、深く考えるのはやめた。もしかしたら本当にそうなのかもしれない。何が起こるかなんて分からないのだから。
小さく息をついて答えた。
「まあ、いいだろう。やるよ。ただし、君にひとつ貸しができるけどな。」
彼女は満足そうに微笑みながら頷いた。
「その『貸し』って何?」
「それは必要になったときに言うよ。今はこの話はここまでにしよう。」
「うん。」




