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第10話 新たな始まり:名前と混乱

こんにちは、セバスーS.Pです。

遅れてしまい、本当に申し訳ありません。実は、これを2日前に公開したかったのですが、携帯電話が壊れてしまい、修理のためにお金を集めるのに時間がかかりました。昨日も公開しようと思っていたのですが、残念ながら画面が反応しなくなってしまいました。しかし、今は修理が終わり、ここに新しい章をお届けします。再度、遅れてしまったことをお詫び申し上げます。


今日の章を楽しんでいただけると嬉しいです(最低でも2日ごとに更新されます)。


 彼の姿が見えなくなると、彼女はゆっくりと私の腕を離し、しかめっ面をしながら私の顔を見つめた。


「くそっ、一緒に行けばよかったのに。」


 それは正論だった。否定することはできない。でも、彼女の反応には驚かされた。もしかして、俺のことが好きなのか?いや、それはわからない。でも、そういう可能性もあるかもしれない。ただ単に俺をあの状況から助けたかっただけなのか?

 どちらにせよ、助けてくれたことには感謝しないといけないな。


 彼女は頼まれていたジュースを運ぶのを手伝ってくれたが、一つだけ手に取ると、それを「これは私の」と言わんばかりに持ち、そのまま何事もなかったかのように嬉しそうに歩いて行った。


 そして、俺たちは部室へと戻った。そこではみんなが俺たちを待っていた。


 光さんの姿を見て、俺は少し安心した。


 さっきまで緊張していた彼女の様子はもうなく、今はどこか落ち着いた表情をしていた。

 そんな彼女を見ていると、不意に目が合った。

 そのまま数秒間、お互いに見つめ合う。まるで永遠のように感じられる時間だった。


 一方、香織も俺のことを見ていたが、まるで存在しないかのように完全に無視された。

 まるで俺がこの部活にとってどうでもいい存在であるかのように。

 それが妙に引っかかったが、俺は気にしないふりをして笑みを浮かべた。


「ジュース、持ってきたよ!」


 白鳥が突然、予想外の笑顔で明るく声を上げた。


 その言葉に、みんなの視線が一斉に彼女に向けられる。

 だが、当の本人はまるで気にしていない様子だった。


 結局、その後は何事もなく平穏に時間が過ぎていった。

 ただ、俺の頭の中では、御里さんとジュースを買いに行ったときの出来事が何度も繰り返されていた。


 今はただ静寂が広がるだけ。

 手に持った本のページをめくる音だけが、静かに響いていた。


 白鳥は何か甘いものを食べながら座っていた。

 彼女の口から「もぐもぐ」という小さな音が繰り返し漏れていた。


 しばらくすると、部屋の中に魔法少女の声が響き始めた。

 それは鷹虎のゲームから流れてくる音で、そのせいで、本を顔に乗せて寝ていた香織が目を覚ました。


「ねえ、先輩……ゲームの音、もう少し下げてくれない?」


「悪いけど、無理だ。我慢してくれ。」


 彼女は小さく舌打ちをして、再び眠ろうとした。

 その間も、鷹虎はスマホの画面に集中し続けていた。


 俺にとっても、その音は正直疲れるものだった。

 光さんがここにいない今、俺も少し外に出たほうがいいかもしれない。


 本を閉じ、閉まっていた扉を開ける。

 そして、そのまま外へ出た。


「どこ行くの?」


 白鳥がそう聞いてきたが、口の中に何か入っていたのか、言葉が少し聞き取りづらかった。


「ちょっと、外の空気を吸いに。」


 彼女がついてくるのかと思ったが、ただ机に体を預け、柔らかそうな甘いお菓子をもぐもぐと食べ続けるだけだった。


 外に出ると、遠くから光さんの姿が見えた。

 彼女はゆっくりとこちらへ向かって歩いてきていた。

 疲れているのか、何か飲みたそうな雰囲気だった。


 そして、俺に気づくと、少し驚いたように顔を上げた。

 まるで、俺がここにいることが思わぬチャンスだったかのように。


 光さんは軽く手を挙げ、まるで「こっちに来て」と言うように俺を呼んだ。


 少し不思議に思いながらも、俺は彼女のほうへ歩いて行く。


 彼女は穏やかに微笑んでいた。

 その表情を見て、俺の頭にはいくつもの疑問が浮かんだ。


「少し歩かない?」


 俺は軽く頷き、彼女と並んで歩き始めた。

 何か話したいことがあるのだろうか?

 まだわからないが、きっとここで話すつもりなのだろう。


「圭くん……私も、名前で呼んでもいい?」


 その言葉に、俺は驚いた。


 今思えば、もしかするとそれを言うために俺を呼んだのかもしれない。

 でも、彼女にとって俺の名前で呼ぶことはそんなに大事なことなのだろうか?


 そんなことを考えているうちに、頭が真っ白になってしまった。

 そのせいで、すぐに返事をすることさえできなかった。


「高宮くん、やっぱり言うべきじゃなかったかな。」


 その言葉で、俺はふわふわとした思考から現実に引き戻された。

 彼女を見ると、少し残念そうな表情を浮かべていた。


「いや、むしろ名前で呼んでもいいと思うよ。もしそうしたいなら、仕方ないよな。結局、俺たちは友達なんだし。」


 彼女は微笑んだが、その直後に少し俯いた。まるで「やっぱり」と思ったかのように。


「じゃあ、今日から名前で呼ぶね。」


「そういえば、なんで急にそうしようと思ったんだ?」


 俺の質問に、彼女は少し答えをためらった。

 別に説明する義務なんてないし、この話題を流して歩き続けることもできる。

 それも一つの可能性だった。


「えっと……ただ、そうしたかっただけ。ダメ?」


 彼女の純粋な瞳が、まっすぐこちらを見つめる。

 この手の状況では、深く追求せず、素直に受け入れるのが一番だろう。


 彼女の視線に少し緊張しつつも、俺は静かに頷くしかなかった。


 ただ、もし彼女が俺のことを名前で呼ぶのなら、白鳥のときみたいに気まずくならないよう、俺も彼女の名前で呼ぶべきだろう。


「それなら、俺も名前で呼ぶよ。

 それに……たまに名字で呼ぶと、香織が反応しちゃって、ちょっと気まずいんだよな。」


 俺がそう言った後、しばらく無言のまま歩き続けた。

 目的もなく、ただ進むだけ。

 気づけば校舎の一階にいて、小さな道を通り抜けるところだった。

 この道を行けば、庭へも行ける。


 やがて、日陰にあるベンチが目に入った。

 その前には大きな木があって、風に吹かれた葉が静かに舞っている。


 彼女の後ろを歩きながら、俺は考える。

 一体、何を考えているんだろう?

 ……本当に、女の子の考えることは難しい。


「ここで、少し話してもいい?」


 俺は、少し緊張しながらゴクリと唾を飲み込み、頷いた。

 何を話されるのか、全く予想がつかなかった。


 二人でベンチに座る。

 彼女はどこか落ち着かない様子で、それが逆に俺の不安を和らげた。

 少なくとも、悪い話ではなさそうだ。


 彼女はまず、深く息を吸った。


「高宮くん、今日、ジュースを買いに行った時、何かあったの?」


 その言葉に、俺は一瞬ビクッとした。

 彼女の真剣な眼差しに驚きつつ、思わず息を呑む。


 だが、すぐに安心したように小さく笑い、静かに息を吐いた。


「ええと……」

 俺は思い出しながら、できるだけ変な誤解を招かないように簡潔に説明しようとした。

「美慧さんと会ったんだけど、その後、白鳥が……? いや、実際どう説明すればいいのか……。」


 うーん、やっぱり俺ってこういう話を詳しく伝えるのが苦手だな……。

 でも、なるべく気まずくならないように話さなきゃ。


 俺が説明の仕方を考えていると、彼女は少し困ったように微笑んだ。


「ちゃんと説明してくれる? なんかよくわからなかったけど……何かあったの?」


 確かに、その通りだ。もう少しわかりやすく伝えたほうがいいだろう……。


 ◇◆◇◆


 結局、ありのままを全部話した。

 彼女はしばらく考え込むように沈黙し、俺の言葉を一つ一つ整理しているようだった。


 問題は、この後に何を言われるかだ……。

 正直、彼女がどう反応するのか予想がつかない。

 もしかすると、何か指摘されるかもしれないし……。


「……私も一緒に行けばよかったな。そしたら、それをしたのは白鳥さんじゃなくて、私だったかも。」


「え? どういう意味?」


 俺が聞き返すと、彼女の顔が一瞬で真っ赤になった。


「あっ、ち、違う! 何でもない! 忘れて!」


 慌てて手を振りながら、視線をあちこちにさまよわせる。


 どんどん赤くなっていく彼女を見て、俺はこれ以上突っ込まないほうがいいと判断した。


 そっと微笑みながら、ゆっくりと頷く。

 それが彼女を少し落ち着かせたようだった。


「それより、名前のことだけど……。」


「それは……やっぱり忘れて! なんか、急にそうするのも変だし……。」


 そう言いながら、彼女は指をいじり始めた。

 その仕草が、どこか恥ずかしそうに見えた。


「まあ、確かに少し気まずいかもな……。でも、君が俺の名前で呼ぶなら、俺もそうするよ。」


 俺の言葉に、彼女は驚いた表情を見せたあと、ゆっくりと俯き、小さな声で呟いた。


「……じゃあ、いいの? …圭くん。」


 彼女のか細くて照れた声が、なんとも愛らしく感じられた。

 そして、頬がうっすらと赤く染まる姿に、俺の心臓は一気に跳ね上がった。


 緊張しすぎて、喉が渇くのを感じながら、なんとか答えようとする。


「そ、そうだな……ま、舞さん。」


 くそっ、なんかすごく恥ずかしい!

 でも、彼女も同じ気持ちみたいだから、それがちょっと嬉しくもある。


「じゃあ、これからはこう呼び合おうね?」


 彼女は、まるで太陽のような明るい笑顔を見せた。


「……ああ、そうだな。」


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