80勤目
ミスリルトイレの壁の隙間を守るクッサイと兵士達の前に黒い巨体…魔族達の姿がハッキリと見えた。
全身から煤の様な黒い粒子を落としながら歩み寄る人の形をした化け物…その目は真っ赤に充血しながらも真っ直ぐにクッサイ達を見ていた。
そして、魔族の一体が雄叫びを挙げて突進して来た。
「スギィ…カフンスギィイ!!」
迫り来る魔族の恐怖に耐えられず1人の兵士が逃げ出した。
「ひ、ひぃ!」
クッサイは慌てて兵士を引き留めた。
「ま、待て!」
しかし、魔族はその隙を見逃さなかった。
「スギィイ!」
魔族は雄叫びと共に大きな爪を振り下ろした。
ガキッ…
その刹那、爪をか細い剣が受け止めた。
「問題ないっス…じ、自分が替わるっス!」
兵士が抜けた隙間を咄嗟に後方からギャルルが埋めたのだった。
しかし、ギャルルが若干力負けした事を目にした魔族達は目標をギャルルへと集中した。
「スギィスギィ!」
「キャッ…」
ギャルルは爪を剣で受けたが力負けして後方へと倒れた。
魔族は躊躇う事なくギャルルへと鋭い爪を向けた。
「スギィイ!!」
ギャルルは目を瞑り覚悟を決めたその瞬間…
ガバッ!
クッサイがギャルルを庇い爪を背で受けた。
「クッ……セェ!」
クッサイは一瞬、体勢を崩したが自らの足で踏み止まり振り向きざまに魔族達を切り飛ばした。
「ッ…ギャルル大丈夫か?」
「よ、余裕っス」
ギャルルが返事をして立ち上がるとクッサイの背中が目に入った。
クッサイの背は魔族の爪で抉られおびただしい量の血液が流れていた。
「クッサイ!もう戦っちゃダメっス!死んじゃうっス!」
「大丈夫だ…まだやれる」
そう口にしたクッサイは冷や汗を流していた。
カッ…
ギャルルは剣の鞘でクッサイの背を打った。
ドサッ…
クッサイは白目を剥き倒れた。
モーモは突然のギャルルの行動にパニックになった。
「お前!何やってんだ!?」
「もう良いっス…アンタらは後下がってクッサイの手当てするっス」
サクッ…
ギャルルは徐に剣を地面に突き刺すと腹に手を当て魔族に背を見せた。




